◆JERA セ・リーグ 広島5―1巨人(15日・マツダスタジアム)
巨人が敵地マツダで7年ぶりとなる開幕6連敗を喫し、4位に転落した。先発の山崎伊織投手(26)は広島打線を相手に5回まで無失点だったが、1点リードの6回1死から小園にプロ初の満塁被弾。
白球は真っ赤に染まるスタンドへ一直線に伸びた。巨人・山崎は膝に手をつき、しばらく動けなかった。1―0の6回。1死満塁のピンチ。小園を追い込んだが、4球目の135キロ、高めに抜けたカットボールを捉えられた。打球はグングンと伸び、右翼席へ飛び込む逆転のグランドスラム。ぼう然とした表情でうなだれた。
一発に泣いた。前回7日の阪神戦(東京D)で開幕から続いていた無失点記録が36イニングで止まった。それでも開幕から5連勝と好調の右腕は最速151キロを計測した直球が走り、フォークやカットなどで走者を背負っても冷静に抑えた。
「粘り強く投げたい」と語っていた通り、5回2死満塁のピンチでは中村奨を二ゴロに打ち取り、0を並べた。しかし、6回の攻撃で無死満塁からのチャンスを逃した直後、まさかの展開が待っていた。「結果的にあの(本塁打の)一球投げ切れなかったことが試合を決めてしまい、悔しいです」と唇をかんだ。
開幕からの連勝は5でストップしたものの、防御率は1・17と、ここまでエース級の活躍で「伊織」の名を知らしめている。「年々、人気になっているらしいで」と男の子の名前としても浸透しているという。「伊織はいいよ! 高校の監督とか、小学校から大学までみんな『伊織』と呼んでくれる」と語る。
もしかしたら、全く違う名前かもしれなかった。「字の画数で3つに絞って、伊織か太郎か、右京の3択やったんやで! お姉ちゃんが『伊織がいい!』って言ったから伊織になった」と意外な選択肢もあったことを明かす。この日は悔しい結果となったが、なかなか援護がない苦しい中、力投した右腕へマツダに集まったG党から「伊織~」と温かな声が飛び交った。
チームに右腕を責める人間はいないが、繰り返し「僕が打たれて負けた、それだけです」と語り、バスに乗り込んだ背番号19。苦しい状況だからこそ、なんとか勝ち切りたかった。その強い思いは、仲間、そして多くのファンの心に届いている。(水上 智恵)
援護なく重圧
◆高木豊氏Point 山崎は気合が乗ったいいピッチングだった。ただ、これだけ援護がない状態で投げていると、ゼロで抑えなくてはいけないという重圧もかかり、自然と窮屈になる。「同点でもいい」と開き直って小園を迎えられたら、満塁弾という結果は違ったものになっていたかもしれない。周りを信じて、余裕を持って投げられる状態で、次のマウンドに向かわせてあげたいよね。(スポーツ報知評論家)