開幕前の予想では優勝候補の一角に挙げられながら、ここまで苦難続き。16日(日本時間17日)時点で、15勝27敗でア・リーグ東地区最下位に沈むオリオールズ。

前日、菅野智之投手(35)のツインズ戦登板を取材した本拠地オリオールパークで、地元メディアの番記者たちに聞いた。もし、現時点で、チームからオールスター(7月15日、アトランタ)出場選手を選ぶとしたら? 全員から「菅野智之」の名前が上がった。

 まずは、記者席にいた3人。長いオ軍取材歴を誇る「BaltimoreBaseball.com」のリッチ・ドブロフ記者と、地元テレビMASN局のロッシュ・コバトコ記者は「トモ!」と2人同時に声を揃えた。MLB.comのジェイク・リル記者も「賛成だ。私もそう思う」と同意した。

 メディア食堂にいた「ボルティモア・サン」紙のジェイコブ・メイヤー記者は「ラッチマンやヘンダーソンは人気選手だから、ある程度のファン投票を集めると思う。だけど、僕が予想するオプションの中に間違いなく菅野は入る」と語った。同席のスポーツネット「ボルティモア・バナー」のアンディ・コストカ記者は「防御率、空振り率、登板回数、クオリティースタート数など彼はチームでベスト・スタッツを出している。低迷するチームの中で、一筋の光明だ」と力説した。

 オ軍は、エースのコービン・バーンズとの契約が昨年限りで終了。4年総額1億8000万ドルを提示し、再契約交渉したが、アリゾナ州スコッツデールに自宅を持つバーンズはダイヤモンドバックスと6年総額2億1000万ドルで契約。

失ったエースの穴をどう埋めるか―。球団は12月に35歳の菅野と単年1300万ドル(約19億円)で契約後、41歳の通算138勝右腕モートンと単年1500万ドル(22億円)、開幕目前に37歳の通算138勝、ギブソンを獲得。3人のベテランを全て単年契約で獲得したが、結果を出しているのは、菅野だけ。開幕から2か月足らずで4、5番手と見られた存在は、エース格となった。

 前日の試合後、米メディアからは「日本時代から強いチームに所属していたが」という前置きの後、低迷打破の鍵について質問が出た。個人ではなく、チーム全体に及ぶ質問が出るのは、ヤンキースのジャッジのようにキャプテンだったり、エースと呼ばれる選手に限られる。オールドルーキーの立ち位置は大きく変わった。

 野手はファン投票、投手はMLB機構の選出で決まる。各30球団から最低1人は選ぶのが基本だから、15日(日本時間16日)時点で打率2割のラッチマンや、開幕を負傷者リストで迎えたヘンダーソンの票が伸びなければ、菅野一択という事態も起こり得る。もちろん、チームが早々に”売り手球団”に転じ、7月中旬までに菅野をトレードで手放さなければ、という条件付き。球宴がオリオールズのユニホームを着る最後の機会となる可能性もあながちゼロではない。(一村 順子)

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