◆JERA セ・リーグ 巨人5―0ヤクルト(23日・東京ドーム)

 巨人が赤星優志投手(25)のプロ初完投初完封でヤクルトに快勝した。7安打5奪三振、無四球で3勝目。

守護神のマルティネスが3連投を避けてベンチ入りメンバーを外れた一戦で、球団最遅となる46試合目のチーム初完投でブルペンを救った。4回には中前へ2点打を放つなどバットでも存在感を発揮。この回には甲斐、ヘルナンデスに適時打も飛び出し、一挙4点を奪った。チームは今季3度目の3連勝とした。

 最後の打者を打ち取った瞬間、球場は赤星への大歓声に包まれた。仲間から頭をたたかれると、ポーカーフェースが自然と崩れた。5―0の9回、簡単に打者2人を打ち取ると、東京Dに「赤星コール」が降り注いだ。力を振り絞り、最後は茂木を一ゴロ。フッと息を吐いた。

 116球を投げ7安打、無四球でプロ初完投初完封勝利。お立ち台で「勝ってホッとしましたし、本当にうれしかった。経験したこともないですし、すごい不思議な感覚です」と感慨に浸った。

 持ち前の制球力で攻めた。最速150キロを計測した直球は威力があり、丁寧かつ大胆に攻めて5K。前回登板後に杉内投手チーフコーチから「曲がり球を打たれることが多いのでカーブを速くして、スライダー代わりに使ってみよう」と助言を受け、データ班とも相談。球速を約10キロ上げた新カーブも効いた。バットでも2点リードの4回2死満塁で中前2点適時打を放ち、投打で魅せた。

 未知の領域であった9回の続投に「もう1回か…って思いました」と冗談を飛ばしたが「変化球も生きて、直球でも勝負できている。今までとは違って自分の投球が楽になった」と確かな成長を感じている。

 勝利への“縁”は自らの力でつかんだ。昨季、3男3女の6人きょうだいの長女・かおるさんは、登板前に埼玉県の箭弓(やきゅう)稲荷神社を参拝し、末っ子の弟の勝利を願っていた。名前の「やきゅう」にかけ、グラブ型のお守りがあるこの神社に赤星の顔のキーホルダーを持参してお清め。「おさい銭は背番号の31円にしようと思ったんですけど、もう少しご縁が欲しかったので310円に決めていました」。しかし、昨季は開幕から7連敗を喫するなど1勝のみ。

援護点(1試合平均)も1・90と苦しい中での登板が多く、勝利の縁は遠かった。

 今季はかおるさんの予定が合わず参拝には行けていないが、ようやく“願い”が通じたのか、これで3勝目、防御率も1・83だ。スタンドで観戦していた姉へ勝利をプレゼントし「(喜びは)お母さんに一番最初に伝えたい」。家族への感謝の思いも口にした。

 チームは移動試合で、連投していたマルティネスはベンチ外。中川や田中瑛が2連投中と中継ぎ陣も苦しい中で最後までマウンドに立ち続けた。この日、救援陣はほぼブルペンで肩を作らず休養。阿部監督は「(リリーフが)甲子園でみんな頑張ってくれたので。赤星がチームを助けてくれた」とたたえた。赤星は「いつも通り投げた結果。長いイニングを投げる意識はあんまりなかったけど、結果的によかった」。チームを明るく照らす星が輝いた。

(水上 智恵)

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