◆JERA セ・リーグ 巨人5―0ヤクルト(23日・東京ドーム)
試合後のベンチ裏に異例の光景が広がった。定例の試合後の監督会見。
テレビカメラの前に現れた阿部監督は「素晴らしいピッチングをリードした甲斐君に話を聞いた方がいいんじゃないですか」とだけコメントして退出。攻守に貢献した甲斐拓也捕手(32)が、防具を着けたまま汗だくで登場した。アナウンサーから「史上初のことだと思います。監督代行にお聞きします」と振られ、前代未聞の会見が始まった。
勝利を決めた直後、ハイタッチの時だった。指揮官から「俺の代わりに今日は(会見に)行ってくれと。僕も何が何だか分からないです」と、舞台裏を明かした。代打指名された「甲斐監督代行」。困惑しながらも、完封した赤星について問われ「粘り強く、一人でよく投げてくれた。ただ、赤星の力を考えればもっと目指すべきところがある。今日の試合で満足せず、もっといいピッチャーになってほしい」とねぎらい、さらなる飛躍に期待した。
「代行」はバットでも貢献した。
0―0の4回1死一、三塁。「追い込まれていたので、セカンドゴロでも1点入ると思って。最低限それをやろうと思った」と10球粘り、中前に先制適時打。これが決勝打になった。守っても赤星を好リードし、初完投初完封を演出。「とにかくマウンドに上がっている以上、どれだけ強い気持ちを持ってやるかが大事だ。ジャイアンツのピッチャー陣にはそういった強いピッチャー陣になってほしい」。捕手はグラウンド内の指揮官。監督の思いを代弁した。
インタビューの大役を終えると選手に戻り、すぐに居残りで打撃練習に向かった。「まだまだシーズンは試合がある。一喜一憂せず準備したい。
プロとして、しっかりと毎日を迎えたい」。バットにリード、そして試合後も。大きな存在感を示した背番号10は自覚たっぷりだ。(加藤 翔平)