メジャーリーグで、あの試合の裏側や日本人選手の頼れる同僚の秘話など、“サイドストーリー”に焦点を当てる「My Loving Baseball」。第4回はエンゼルスの菊池雄星投手(34)を“専属捕手”として支えるT・ダーノー捕手(36)に迫った。

4月は苦しんだが、ワールドシリーズを制した経験を持つベテランとコンビを組み始めた5月から復調。データにも表れるバッテリーの信頼とは―。

 勝ち星にこそ恵まれないものの、安定した投球内容でチームをけん引する菊池。3、4月は0勝4敗、防御率4.31と苦しんだが、5月は月間防御率1.89をたたき出すなど復調した。トピックとなったのは“相棒”の変更だ。5月1日(日本時間2日)以降は一貫して、正捕手のL・オハピーではなく、ベテランのダーノーとバッテリーを組んでいる。

 直球の球速アップに取り組む菊池が、今季最速97.1マイル(約156キロ)をマークした今月3日(日本時間4日)のレッドソックス戦では、走者を三塁に置いてワンバウンドするチェンジアップを何度も体でブロックする場面があり、両者の信頼感がうかがえた。同15日(同16日)のオリオールズ戦では6回途中5失点で敗戦投手となったものの、今季最多10奪三振をマーク。「ボールは今年一番良かった。本当に久しぶりにキターッという感じ。スピードも上がってきたし、精度も含めて、やっといい状態に来たかな」と手応えを明かした。

 ワシントン監督は休養前に「今後、オハピーと組まないとは言わないが、今は、トラビス(ダーノー)と組んでいい結果が出ている。

コンビは続くだろう」と相性抜群のバッテリーを見守っている。

 菊池は、ダーノーの“準備力”に安心感を得ているという。「僕も結構、準備をする方ですけど、彼は本当にしっかりデータを見てくれているので、安心して(配球を)任せられている。ワールドシリーズで勝ったりとか、そういう(大きな)舞台でも経験が多いキャッチャーなので、いろいろ引き出しを持っている」と信頼を寄せる。ダーノーはブレーブス時代の20年はシルバースラッガー賞を受賞。翌年はワールドシリーズ優勝に貢献。22年は球宴にも選出された経験が、基盤となっている。

 阿吽(あうん)の呼吸は、リズムにも好影響をもたらした。昨年、走者なしで16.5秒、走者ありで20.2秒だった菊池の投球間隔は、今季、走者なしで15.9秒、走者ありでも18.5秒と短くなった。「(サインに)首を振ることは多くない」と、スムーズな意思疎通でテンポのいい投球を続けられるようになった。

 今度は菊池が応える番だ。「4つの球種が決まってくれば、より彼のやりたいこともできるようになってくる」。

操るスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットの精度が上がってくれば、ダーノーのリードにもっと応えることができる。一枚岩のバッテリーで、“パワー・レフティー”がますます躍動する。(一村順子通信員)

 ◆トラビス・ダーノー(Travis d’Arnaud)1989年2月10日、米カリフォルニア州生まれ。36歳。レイクウッド高から07年ドラフト1巡目(全体37位)でフィリーズ入団。ブルージェイズを経て13年8月にメッツでメジャーデビュー。その後、ドジャース、レイズを経てブレーブス入りした20年(短縮シーズン)に打率3割2分1厘、9本塁打34打点でシルバースラッガー賞を受賞。25年からエンゼルスでプレー。メジャー通算919試合で打率2割4分7厘、126本塁打、446打点。183センチ、95キロ。右投右打。

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