◆日本生命セ・パ交流戦 2025 ロッテ6―4巨人(24日・ZOZO)
巨人がロッテに逆転負けを喫し、交流戦は17年に並ぶ球団ワースト6勝(11敗1分け)に終わった。悔しい敗戦の中で、坂本勇人内野手(36)が記録ずくめの活躍を見せた。
久しぶりの感触が全身を貫いた。坂本の力みのないスイングから放たれた白球が左中間席へ飛び込んだ。ようやく生まれた待望の今季初アーチ。喜びと手応えをかみしめるように悠然とダイヤモンドを一周した。
「一振りで仕留めることができて良かった。前の試合からいい感じで、練習も良かったので、いい感じで入れました」
両チーム無得点の初回1死。カウント1―1からサモンズの真ん中低め146キロ直球をとらえた。今季89打席目で飛び出した一発。
記録ずくめになった。5回1死で左翼線への二塁打を放って川上哲治に並ぶ歴代9位タイの通算671度目のマルチ。9回1死一塁でも右前安打して今季初の猛打賞で交流戦通算338安打に到達し、栗山巧(西武)を抜いて歴代最多となった。
「ずっと積み上げてきたものだったので、素直にうれしい。打てても打てなくてもどっちでもいいわとは思ってましたけど、打てたのは良かった」
苦しんできた。開幕スタメンを飾ったが、打撃不振にあえぎ、2度の登録抹消を経験。フリー打撃中、サク越えを確信した打球がフェンス手前で失速し、「これがいかないか」と首をひねることもあった。試行錯誤の日々。タイミングの取り方や打席の立ち位置を極端に変更することもあった。
6月18日の練習では約60センチの短いバットを導入した。バットのヘッドが遠回りせずに、体の内側から出すようにする狙いを持ってティー打撃を敢行。浮上の糸口を求めて、さまざまな策を講じ続けていた。直近2試合連続複数安打。「バッティングは継続するのが難しい」とした上で「イメージだったりを変えて良くなっているので、明らかにいい感覚が出てきている」。もがいた時間が実を結び始めている。
2軍で過ごす間も精神的支柱であり続けた。自らの復活に注力しながら、若手に惜しみなく助言を送った。1軍の試合もくまなくチェック。ファームから1軍に昇格する選手がいれば自分のことのように喜び、熱い言葉で送り出した。萩尾には「もうファームでは会わないように」と“約束”。今季、躍進する増田陸には「人生が懸かっているんだから、覚悟を決めてやってこい」と背中を押した。
2連敗を喫した交流戦最終戦で、光を差し込んだ背番号6。「貢献できていなかった分、できるようにやっていくだけ」。復活の今季1号から逆襲に転じる。(宮内 孝太)
◆坂本の記録ずくめの一日
▽通算マルチ安打回数
671(川上哲治=巨に並ぶ歴代9位)
▽シーズン連続本塁打
18年(巨人では王貞治=22、阿部慎之助、柴田勲=19に次ぎ、川上哲治=18と並ぶ)
▽交流戦安打数
338(栗山巧=西を超えて歴代1位)
▽通算安打数
2432安打(石井琢朗=広に並ぶ歴代11位タイ)