◆第107回全国高校野球選手権大阪大会▽3回戦 天王寺4X―3佐野(19日・くら寿司スタジアム堺)

 大阪では、継続試合で2戦連続の劇的なドラマが起きた。18日に、9回表2死で降雨のため決着が持ち越された公立進学校の天王寺が、その裏の2死走者なしから佐野に逆転サヨナラ勝ち。

7回から再開した2試合目は、2点を追う浪速が9回2死一塁から5連打4得点で、明星に逆転勝利した。

 天王寺ナインが一斉にベンチを飛び出した。1点を追う9回2死一、二塁で土田悠介捕手(3年)が左前へ同点打。さらに一、二塁とチャンスを広げると、西俊毅(たかき)三塁手(2年)が「最後、自分にチャンスで回ってくることはイメージしていた」と左翼へサヨナラ打だ。2死走者なしからのサヨナラ劇をわずか15分間で完結。全員が最後まであきらめず「野球は2アウトから」を体現した。

 試合は5日前に始まっていた。9回表、降雨によって継続試合になった。17日には雨天で順延。難しい状況でも河島紘之監督(33)は「相手がノーサイン、ノー監督野球ということで、しっかり作戦を立ててやっていこうと準備してきた」と徹底していた。

 佐野対策として、相手の先発左腕・右田琳久投手(2年)とフォームの似た投手が中心となって打撃練習。ノーサイン野球に対抗するための守備も強化してきた。

9回2死一塁から再開した佐野の攻撃を封じ、逆転の流れをつくったのも、チームワークの証し。メンバー外の選手も協力を惜しむことはなかった。

 秋と春の大阪大会は初戦でコールド負け。退部者も出る中で、練習試合でも勝てなかった。「天王寺の生徒たちは勉強を通して、他校よりも集中力がある」と胸を張ったのは秋元瑛介主将(3年)だ。サッカー日本代表の元監督・岡田武史さんがOBで、昨年の京大合格者53人を誇る公立進学校だからこそ、ここぞの場面で集中力を発揮できた。

 夏の甲子園の出場歴は1948年の1度だけ。20日の4回戦は昨夏の優勝校・大阪桐蔭が相手だ。秀才軍団の進撃なるか―。不変のスタイルでぶつかる。(藤田 芽生)

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