◆米大リーグ エンゼルス7x―6ドジャース=延長10回=(12日、米カリフォルニア州アナハイム=エンゼルスタジアム)

 ドジャース・大谷翔平投手(31)が12日(日本時間13日)の敵地・エンゼルス戦で「1番・DH」で先発出場し、“三重苦”を味わった。6回に放った遊直でメジャー初となる三重殺を食らうと、9回には4戦連発となる一時勝ち越しの43号ソロを放ちながら、その裏追いつかれ空砲に。

最後は延長10回にサヨナラ負けを喫して、宿敵パドレスに同率首位に並ばれた。チームは3連敗。首位陥落阻止へ13日(同14日)には自らマウンドに立つ。

 大谷もぼう然と立ち尽くすしかなかった。5―5で迎えた6回無死一、二塁。外角直球を捉えて、痛烈な当たりをセンター方向に返した。中前安打かと思いきや、“大谷シフト”で二塁ベース付近にいた遊撃ネトの正面を突いて遊直。そのまま二塁ベースを踏み、一塁に送球されると、一塁走者のラッシングが戻りきれず、一打勝ち越しの絶好機が一瞬で3アウトチェンジとなった。ネトが「今までYouTubeやTikTokでしか見たことがない。最高の打者を相手に決めたのは特別だよ」と大興奮の三重殺。大谷にとっては初めて味わう屈辱だった。

 “悲劇”はこれだけでは終わらなかった。

5―5の9回。守護神ジャンセンの甘く入ったカットボールを捉え、右翼ポール際に4戦連発となる勝ち越しの43号。値千金の一発に、普段はクールな大谷も両手をたたいてほえた。敵地に集結したド軍ファンも「MVP」コールで沸き、流れが一変。ロバーツ監督も「正直、勝てると思った。勢いが出ていい形で終われると…」と確信したほどだったが、救援陣がリードを守り切れず、延長10回に悪夢のサヨナラ負けを喫した。

 キング争いでは、シュワバー(フィリーズ)を抜いてリーグ単独トップに。MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、1試合で三重殺&9回または延長戦に勝ち越し弾は、62年のW・デービス(ドジャース)、00年のH・ロドリゲス(カブス)以来3人目の珍記録という。今月は全11試合で安打を記録し、5発6打点、打率4割3分9厘と絶好調な一方、チームは5勝6敗と苦戦を強いられている。

 同じロサンゼルスに本拠地を置くエ軍との「フリーウェーシリーズ」で今季5戦5敗。パドレスが勝ち、気がつけば7月3日(同4日)時点で最大9ゲームあった差もきれいになくなった。6月14日以降、固持していた単独首位の地位を失い、ロバーツ監督は「全員がフラストレーションを抱えていて、状況が自然に良くなることはない。

だから何とか明日は取り返すしかない」と険しい表情。今月はパドレスとの直接対決が6試合あり、15日(同16日)からは本拠で3連戦を迎える。大谷ドジャースにとって、試練の時が訪れた。(竹内 夏紀)

◆三重殺メモ

 ▽日本人3人目 日本人選手で三重殺を打った打者は、06年5月27日の城島(マリナーズ)、20年7月29日の秋山(レッズ)に続いて3人目。城島は満塁で二ゴロ。一塁走者にタッチ、一塁へ送球して2つのアウトを奪うと、三塁をオーバーランしていた二塁走者もタッチアウトになった。秋山は満塁から三直で走者が飛び出し、三塁手が三塁を踏み、一塁へ送球して完成。ワンバウンドしているようにも見えた“疑惑の判定だった”。満塁以外では大谷が日本人初となる。

 ▽ドジャースでは ド軍が食らうのは、昨年9月24日の本拠地・パドレス戦以来。同試合では9回に「5―4―3」で決められてゲームセットとなり、パ軍のポストシーズン進出が決定した。

 ▽エンゼルスでは エ軍が三重殺を奪ったのは23年8月18日の本拠地・レイズ戦以来8度目。

同試合では大谷が満塁本塁打を放つも敗戦。「満弾と三重殺が生まれながら延長で敗れたのは1857年のアルバカーキストリングビーンズ以来」と報じる現地メディアもあった。

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