◆JERAセ・リーグ 中日4―5DeNA=延長12回=(17日・バンテリンドーム)

 背に腹は代えられない。来年1月に創立90年を迎える中日が、DeNA・藤浪対策として、球団史上初めてスタメンに左打者9人を並べた。

藤浪降板後の終盤に一時は逆転したものの、延長12回に勝ち越しを許して3連敗。井上監督は眉間にしわを寄せた。

 「けが人は出したくないし、ベストオーダーでは臨めない。そのピッチャーを立てられたら、控えメンバーを出しながら、左を並べる策しかない」

 オール左でスタメンを組まざるを得ない理由は明白だった。日本球界復帰後1軍初登板の藤浪は、渡米前から右打者の頭部付近への抜け球が目立った。直近でも6日のイースタン・巨人戦(横須賀)で、右打者に2死球を与えていた。右腕からの死球を回避するため、主砲の細川、長距離砲のチェイビス、堅守の田中ら、右の主力打者を外す苦肉の策。松中打撃統括コーチは「選手を守るのも僕らの仕事。本人が出たいと言っても、リスクがある以上、止めないといけない」と選手ファーストを強調した。

 5月以来、今季4度目のスタメンで起用された樋口がプロ初安打を放ち、この日に昇格した板山は猛打賞。一定の成果はあったが、藤浪には5回まで4安打1点に抑えられた。「(相手に)『よいしょ、よいしょ』と(テンポよく投げられると)思われても、しゃくに触るけど、細川や石伊に万が一のことがあったらと思うと、他の監督さんもそうするんじゃないかな」。

ベスト布陣で臨めなかったことに、指揮官の不満は募るばかりだった。

 藤浪の降板後、7回にブライト、山本、細川と右の代打をつぎ込み2点を勝ち越したが、延長戦の末に敗れ、借金は今季ワーストの12まで膨らんだ。今後も藤浪との対戦時は左打者を並べる可能性が高いが、松中コーチは「何か、手を打てるように考えておく」とも言った。同じ轍(てつ)は踏まない。次回は思わぬ秘策が見られるかもしれない。(森下 知玲)

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