巨人・岸田行倫捕手(28)が18日、スポーツ報知のインタビューに応じ、不屈のメンタル面の原点を明かした。8年目の今季は開幕直後はスタメンの機会に恵まれなかったが、5月4日DeNA戦(横浜)の初先発出場から打率2割8分5厘、盗塁阻止率は5割2分6厘で球団47年ぶりの5割超えも視界に捉える活躍だ。
ペナントも佳境を迎える中、岸田の存在感が日増しに高まっている。8月は14試合中、10戦で先発出場。3、4月はスタメンマスクがないなど、開幕直後のバックアッパーという立場から、確かな居場所をつかみ取った。
「甲斐さんが入ってきて序盤は試合に出る機会が少なかったんですけど、そこで普通にしてたら出場機会が減っていくのは間違いなく分かっていた。毎年、競争の世界なので。自分が試合に出るという気持ちはなくさずに。今も毎試合、毎試合必死にやってます」
チャンスをつかんだのは5月4日のDeNA戦。初の先発マスクで1号2ランを含む2安打2打点、守備でもグリフィンを6回無失点の好投に導いた。
「特別すごいことしようとかはなかったですけどボロボロにやられたらもう、出場機会はないだろうなと。結果的に見れば、すごく良かったです」
昨季はチーム捕手最多の72試合に先発し、リーグ優勝に貢献。今でも「1軍にいさせていただけるだけでうれしい」というメンタルの原点を聞くと「極端な話ですけど…」と幼少期を回想した。
「少年野球チームに入ったのが幼稚園の時で。最初の2年間ぐらいは(制度上)試合に出られないじゃないですか? 試合の日はバット引き、ボール渡しですけどそれだけでうれしくて。野球が好きだからこそ、雑用も喜んでできた。野球をやらせてもらったのも親のおかげで。当たり前にできているわけじゃないと今でも思ってます」
現在は規定試合数(※)には達していないものの、盗塁阻止率は5割2分6厘。残り35試合のうち25戦に捕手として出場すれば規定に到達する。78年の福嶋知春以来、球団47年ぶりとなる阻止率5割超の目標も現実味を帯びてきた。
「内野手のカバーだったり僕一人の力じゃないんですけど去年ある程度、高い数字(4割7分5厘)が残ったのがすごく自信になった。緊迫した場面でも刺せたので、それが余裕につながっているのはありますね」
盗塁阻止と言えば肩の強さが連想されがちだが、岸田の武器は地道に磨き上げてきた「技」にある。
「肩はもっと強い選手がたくさんいる。2軍の時から捕ってからの速さや正確性をずっと突き詰めて、練習もたくさんしてきたので。それが今につながってきているのを実感しています」
3月の強化試合で侍ジャパントップチームに初選出。
「日の丸を背負ってプレーするのは想像もしてなくて。最初はびっくりしたんですけど野球選手をやってる以上、一度はプレーしたいって思いは絶対ある。そこに名前が挙がるように頑張らないといけない」
得点圏打率3割4分1厘の勝負強い打撃で打順は5番も任せられている。主力に成長したひたむきな男は、勝利への強い欲求を口にした。
「捕手は勝敗が一番、評価される。残り試合も少なくなってきましたし、1つでも勝ちを増やせるように頑張ります」
【※】公認野球規則の9条「記録に関する規則」の22項(C)に「守備の最優秀プレーヤーは、各ポジションにおける最高の守備率を得た野手に与える」とあるが、その(1)に「捕手は、少なくともそのリーグで1クラブ当たりに組まれている試合総数の半数以上の試合に、捕手として出場しなければいけない」とある。今季は143試合制なので72試合が捕手の“規定試合数”となる。
「甲斐キャノン」「コバズーカ」に続け 強肩愛称欲しい
取材後記 岸田本人も興味津々だった。「あれってどうやって生まれるんですか?」と逆質問が届いた。強肩で鳴らす捕手には、その迫力ある送球に愛称がつきものだが、12球団トップクラスの盗塁阻止率を誇る岸田には浸透しているものがないね。そう尋ねた時の答えだった。
甲斐の「甲斐キャノン」や小林の「コバズーカ」、日本ハム・田宮の「ゆあビーム」。メディアやファンがネーミングしていることを伝えると「自分が決めるのは違う気がします。周りの方に決めてもらう分にはいいですね」と笑っていた。
捕ってから速く、正確さが売りの岸田の送球を示す愛称はなんだろうか…。「キシスナイパー」、「キシレーザー」、「キシアロー」?。記者がない知恵を振り絞って考えたが、なかなかしっくりくるものは思い浮かばなかった。本人も気に入るような愛称が早く見つかることを期待したい。(巨人野手担当・内田 拓希)