◆新体操 世界選手権 第4日(23日、ブラジル・リオデジャネイロ)

 団体総合で日本(鈴木歩佳、稲木李菜子、田口久乃、西本愛実、花村夏実、三好初音)が、同種目初の金メダルを獲得した。リボン3位(27・200点)、ボール・フープ(28・350点)で1位となり合計55・550点で2位ブラジルを0・300点上回った。

過去2度(75、19年)の2位を上回り、4大会ぶりの表彰台。村田由香里強化本部長(43)の威圧的指導問題を乗り越え、歴史の扉を開いた。日本は両種目で8チームによる24日(日本時間25日)の種目別決勝に進んだ。

 フェアリージャパンが観客の心をわしづかみにした。繰り出す技が決まるたびに、会場がどっと沸く。会心の演技で2種目を終えた日本に、拍手と歓声が降り注ぐ。涙する選手もいれば、ガッツポーズで感情を爆発させる選手もいる。感極まってマットに口づけした鈴木主将は「やり切れてほっとした」と喜びと安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 最初のリボンから魅了した。沖縄からの移民が多いブラジルを意識し、選んだ勝負曲は「島唄」。6月の石垣島合宿では、伝統舞踊「エイサー」の手の動かし方、「カチャーシー」などの伝統的な踊りも教わり、「沖縄」を心身に落とし込み、思いを大一番で体現した。5人同時に高々と放り投げたリボンを、回転した後に両脚でつかんでフィニッシュ。

勢いに乗って迎えたボール・フープで得点を伸ばし、未到の地に立った。

 止まった時間が再び動き出した。日本は23年の前回大会で13位と惨敗し、昨夏のパリ五輪で出場権を取れず5大会連続の五輪出場を逃した。再起を図っていた今年2月には村田強化本部長の威圧的指導問題が浮上。選手が強化合宿から「脱走」したり、新チームから離脱したりとチームは揺れに揺れたが、パリ後に引退から翻意した鈴木主将が中心となってチームの立て直しを図った。

 聞き取り調査などが行われ、異様な雰囲気に戸惑う若手にベテランが寄り添い、練習中でも声を掛け合いコミュニケーションを重視した。バーベキューやカラオケ大会を実施する伝統の「フェアリー会」も開催して結束を深め、快挙につなげた。大会前、鈴木主将は「練習中も普段の生活もお互いを高め合っているのでチームワークはすごく良くなった」と話したように、分解の危機を乗り越え一丸となった。

 24日には種目別決勝に出場する。「いろいろな方々のおかげで取れた金メダルでうれしい。踊れる喜び、感謝の気持ちを込めて種目別決勝もしっかりやりたい」と鈴木。低迷と混乱を乗り越えてつかんだ金メダルを旗印に、3年後のロサンゼルス五輪まで、妖精たちは美しく舞い続ける。

 ◆新体操の団体総合 1チーム5人。年度ごとに指定された2種目で争う。今大会の1種目は5人がリボンを使って演技を行い、もう一つの種目はボールとフープの2種類の手具を組み合わせて行う。演技時間は、各種目2分15秒~2分30秒。長すぎても短すぎても1秒につき0・05点減点される。

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