◆JERA セ・リーグ 巨人11×―10阪神(13日・東京ドーム)

 見たかと言わんばかりに右手を高々突き上げた。巨人・中山礼都内野手(23)が豪快な一撃でムードを一変させた。

第1打席の初球。野球人生「初めて」の満塁弾をライトスタンドにたたき込んだ。「最高の結果になって良かった。すごくいい投手なので」と9試合ぶりの7号に胸を張った。

 重い空気を一掃し、11得点への突破口を開いた。0―3の初回2死満塁。高橋の外角148キロ直球を芯で仕留め、一時逆転のグランドスラムをかっ飛ばした。阿部監督も「高橋君、いいボール放ってるなというのはベンチから見てても分かっていた。それを打てたので自信になると思います」と称賛した一振りだった。

 伝統の一戦で打ち合いのゴングを鳴らした若武者は「こういう試合で打てて良かった。でも今日はもう皆、忘れてるんじゃないかと思います」と謙虚に笑った。1点を追う9回は先頭でサヨナラにつながる四球。

乱打戦に終止符を打った代打・坂本の劇打を見届け「やっぱり神様でした」と羨望のまなざしを向けた。

 進化を遂げている。初回の本塁打が高卒5年目にしてサウスポーから放った初アーチ。試合前まで対右投手は打率2割9分2厘、左は1割9分1厘だった。床田、高の両先発から適時打をマークした前カードの広島戦に続く左腕打ちに「課題だった左投手からヒットも徐々に出てきている。これは継続したい」。もともと初球から積極的に強振できるタイプ。そこに「ネクスト(サークル)から頭を整理して準備ができている」と経験がかみ合ってきた。

 8月31日からポイントゲッターの「6番」に座り、以降の11試合で12安打7打点。昨年も9、10月に打率4割5分8厘と暴れた“秋男”は「この試合を取れたのはすごくチームにとって大きい。今後CSでやる可能性もあるので」と鋭い目つきで語った。頭にあるのは2位死守からの下克上。

短期決戦で虎を狩るまで、牙を研ぎ続ける。(堀内 啓太)

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