◆JERA セ・リーグ 巨人5―4広島(19日・東京ドーム)

 巨人は岡本和真内野手(29)が22戦ぶり12号ソロから2打席連発と奮起し、広島に逆転勝ち。2位のDeNAに1ゲーム差に迫り、1日で自力2位の可能性を復活させた。

2点を追う2回、自身最長ブランクとなる90打席ぶりの一発を放つと、4回に同点13号ソロ。山崎伊織投手(26)は4回の決勝二塁打、6回の2点二塁打で計3打点を挙げ、自己最多11勝目を挙げた。9回を締めたマルティネスは、2013年の西村健太朗を超える球団新の43セーブ目をマークした。

 崩されかけても関係ない。岡本は左手一本になりながら、久しぶりにかっ飛ばした。「しっかりとかんでいた(捉えた)ので、方向的にも行ったかなと思いました」。8月23日のDeNA戦(東京D)で2打席連発して以来22試合90打席ぶりの12号ソロ。大歓声が最高に気持ち良かった。ベンチに戻って、坂本や丸から祝福されると笑みがこぼれた。

 待望の一発が飛び出したのは2点を追う2回先頭。フルカウントからの6球目、大瀬良の外角低め138キロカットボールに反応した。すり足気味にタイミングの取り方を変えて、対応。

泳ぎながら高々と舞い上げて左翼席上段に運んだ。これまでの最長ブランクは22年7月7日ヤクルト戦(東京D)から8月6日ヤクルト戦(神宮)の18試合79打席ノーアーチ。最長のトンネルを抜けた。阿部監督は「チームの雰囲気を変えてくれた。それがあったからこそ勝てた」と称賛した。

 目覚めた男はもう止まらない。1点を追う4回先頭で迎えた場面だ。カウント2―2からフォークを逃さない。左中間席へ飛距離129メートルのソロ。8月23日のDeNA戦(東京D)以来今季3度目となる2打席連発の13号で追いついた。通算19度目のマルチ本塁打で勝利の立役者になった。

 ホームランの価値を再確認していた。

左肘じん帯損傷で離脱中は試合を自宅で観戦。7月19日の巨人対阪神戦だった。0―0の延長11回に佐藤輝と坂本にそれぞれ2ランを浴びて巨人は敗戦。翌朝、自らに言い聞かせるように言った。「ホームランがないとプロ野球はダメだよね。ジャイアンツもそうやって勝ってきた。やっぱりホームランを打たないとなかなか勝てないよね」。一振りで流れを変える放物線の魅力を客観的な視点で認識した。

 思いとは裏腹に復帰後はアーチの本数が伸びていなかった。9月は試合前時点で打率3割4分、出塁率4割5分9厘をマークしていたが、本塁打はなし。知らず知らずのうちに力みも出た。「ヒットは出てたので、自分の中で悪くはないな」と語りつつ、試行錯誤を続けた。

フリー打撃ではステップ幅を小さくするなどしてスイング。バットもこれまで黒と白の配色のものを使用していたが、「あの茶色がいいなって思って」と、9日の練習から初めてブラウンと白のバットを使い始めた。必死の取り組みが最高のかたちで報われた。

 連日、MLBスカウトが視察に訪れ、この日も来場する中、2発を含む猛打賞。大黒柱の活躍が光り、2位・DeNAとのゲーム差を1に縮め、早ければ20日もCS進出が決まる。負けられない戦いはまだまだ続く。「一試合一試合勝てるように」と決意を込める主砲が上昇気流に乗りだした。(宮内 孝太)

 【堀内恒夫Pointo】 岡本には、やっぱりホームランが似合うねぇ。1本目はカットボールを、2本目はフォークを運んだ。大瀬良という投手はストレートは見せ球にして、変化球で勝負してくるタイプ。岡本のような打者には決して内角に真っすぐは投げてこない。それを分かっているから、外の変化球を狙い打った。

 8月23日以来の本塁打で、その日以来の2打席連発。一発出れば、どんどん出るもの。ホームランは本当に試合の流れをガラリと変える。残り試合は、もう全打席、一発を狙えばいいと俺は思うよ。

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