◆第59回スプリンターズS・G1(9月28日、中山競馬場・芝1200メートル)
秋G1開幕戦、第59回スプリンターズS(28日、中山)の出走馬16頭が25日、確定した。田島俊明調教師(51)=美浦=は、前走の函館スプリントSを制したカピリナで参戦。
いつにもまして言葉に力がこもる。カピリナを送り出す開業17年目の田島調教師は、平地G1・8度目の挑戦で初めて厩舎所属の戸崎とタッグを組む。「圭太はG1(13勝)を何度も取っているけど、うちの厩舎は取れていない。そういう形で取れれば一番いいですね」とレースを心待ちにする。
これまでの競馬人生を「人や巡り合わせがあって、何かが違えばここにはいなかった」と振り返るトレーナー。馬との出合いは小学生時代、友人が通い始めた東京競馬場の乗馬苑だった。そこで働く元JRA厩務員の薦めもあり、「馬に乗る仕事に就きたい。できれば勝負の世界で」とトレセンで働くことを決めた。助手として働くうち「自分が思うようにやってみたい」と感じ、調教師試験を受験。受からなくても知識は役立つと考えて勉強を続けると、6度目の挑戦で吉報が届いた。
開業当初は馬房が埋まらず苦労した。初年度の09年はわずか105回の出走で2勝。2年目に出走回数を倍以上に伸ばして11勝を挙げ、軌道に乗り始めた13年に大きな転機が訪れた。JRAの通年免許試験に当時の地方競馬トップ騎手・戸崎が合格。厩舎所属の話がとんとん拍子で決まった。
「お互いの知人同士がたまたま知り合いでつないでくれた。断る理由がなかった」。プラスになったのはメディアに「戸崎騎手(田島厩舎)」などと表記される広告塔の役割だけではなかった。「調教に乗って、その馬について話す機会が増える。競馬に圭太が乗って、また次に迎える流れはいいですね」。経験と実績のある鞍上と密にコミュニケーションが取れることも、大きな財産となっている。
カピリナがコースレコードで駆けた前走の函館スプリントSは“師弟コンビ”での重賞初Vだった。
◆田島 俊明(たじま・としあき)1974年1月16日、東京都出身。51歳。競馬と無縁のサラリーマン家庭で育ち、小学生の頃に東京競馬場の乗馬苑で乗馬を始める。高校卒業後に美浦トレセン入り。高橋裕厩舎、畠山吉宏厩舎で助手を務め、2009年に調教師免許を取得し、同年開業した。JRA通算4340戦222勝。重賞は5勝。