日本ハム・古川裕大捕手(27)が現役引退を決断した。29日、球団が来季の契約を結ばないことを通達したと発表。

その後、スポーツ報知の取材に応じ「野球を辞めて引退することを決めました。今後は未定ですが、広い視野を持って、いろいろな方のお話もうかがって、自分の人生をもう一度、考えていきたいと思います」と言葉を紡いだ。

 上武大時代に強打の捕手として注目を浴び、伊藤大海らと同期入団で20年ドラフト3位でプロの門を叩いた。2年目の22年8月27日・ソフトバンク戦(札幌D)ではポンセの女房役としてノーヒットノーランをアシスト。通算5年間で一番の記憶として、今もその光景は覚えている。「当時はもう、本当にホッとしたというか。『意識しないように、意識しないように』ってプレーしてましたけど、余計にそれで…。ずーっと張りつめてリードしていた分、達成した瞬間は緊張から一気に解き放たれて…。それをすごく覚えていますね」

 今季は1軍出場なし。覚悟はしていた。唯一の心残りは「自分を応援してくださるファンの方々の期待に応えられなかったことですかね」。グラウンドからよく見えた名前入りの応援タオル、左バッターボックスに向かう時の温かく大きな拍手。

「それが一番、何よりうれしかったです」

 福岡生まれの九州男児。いつも穏やかで、きょうだい喧嘩もしたことがない優しいハートを持つ。シャイで口数は決して多くないが、4歳下の妹に高級ブランド「ロエベ」の財布をプレゼントするなど、人を喜ばせることが好きな性格だ。幼少期は父・裕一郎さんとの猛練習が日課。「敷かれたレールというか、野球をやるってもう決まってて(笑)。厳しかった。打てた日も、打てなかった日も、ひたすらバットを振って。朝早く起きて、家の庭でずっと付き合ってもらってましたね」

 28日の2軍戦後、今季限りでユニホームを脱ぐことを両親に電話で報告した。ねぎらいの言葉と共に「あとは自分でちゃんと考えてやりなさい」と愛のこもったメッセージをもらった。

 日頃から食生活を丁寧に意識し、野球のために節制を続けるストイックマンでもあった。「まだやれるんじゃないか?」「やれるところまでやってみたらどうだ?」。戦力外通告を受けた後、多くの言葉をかけられた。

それでも、悩み、何度も考えて出した決断は揺らがなかった。「プロ野球という舞台は誰もが入れる世界じゃないなと改めて思いました。ファイターズには心から感謝しています。ただ、本当に色々なことを考え抜いた上で今後の人生において次の道に進むほうがいいんじゃないかなと。これから先の人生のほうが長い。悩んだ末に決めました」。27歳は静かにバットを置き、力強く前を見た。

 ◇古川裕大(ふるかわ・ゆうだい)1998年6月19日、福岡・八女市生まれ。27歳。小学3年から野球を始め、久留米商を経て上武大へ入学。19年に侍ジャパン大学日本代表に選出された。184センチ、91キロ。

趣味はサウナ。

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