フィギュアスケート女子で、2018年のGPファイナル女王・紀平梨花(23)=トヨタ自動車=が29日、アイスダンス挑戦を発表した。今年のアジア大会銅メダルの西山真瑚(しんご、23)=オリエンタルバイオ=と新カップルを結成し、シングルとの二刀流で活動する。
紀平のミラノ五輪出場の可能性が“復活”した。この日、アイスダンスへの挑戦と西山との新カップル結成を電撃発表。オンラインで会見し「ワクワクする大きなチャレンジ。全力で頑張っていきたい」と胸を躍らせた。西山は昨季まで田中梓沙と「あずしん」として活躍した実力者。「目標を一緒につかめるように努力したい」と言葉を並べた。
右足の距骨疲労骨折から復帰を目指していた紀平は、五輪選考会を兼ねる12月の全日本選手権につながる中部選手権の欠場を16日に発表。シングルでのミラノ五輪出場の可能性は消滅していた。カナダを拠点にする2人は一緒に滑る機会もあり「目指すところは同じということもあり、組んでみようとなった」と西山。関係者によれば、紀平は8月末からカナダで西山と練習を重ねていたという。
紀平にとっては悲願の五輪への挑戦だ。15歳ながら1試合でトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)3本を成功させるなど、実力は日本トップも年齢制限のため出場がかなわなかった18年平昌五輪。4回転を武器に挑戦した22年北京五輪は、右足首のケガで選考会を欠場。「やはり五輪は意識するもの」と紀平。「可能性がある限りは挑戦せずにいる選択は違う」と胸中を明かし「諦めず、どのチャンスもつかめるよう努力していきたい」とうなずいた。
「りかしん」は、全日本につながる西日本選手権(11月1日)でデビュー予定。演目はリズムダンスが「Mambo No.5」、フリーは「もののけ姫」となる。アイスダンスで日本勢は個人の五輪出場枠はなく、団体1組の座を他の組と争う。まずは国際大会に参加可能な最低技術点取得が目下の目標となるが、条件クリアは簡単ではなく、5年後の五輪も現実的に見据えている。それでも「急ピッチで仕上げていった先に結果がついてくる。(五輪を)意識しつつ、出来ることを尽くしたい」と紀平。夢舞台を最後まで諦めるつもりはない。
◆紀平 梨花(きひら・りか)2002年7月21日、兵庫・西宮市生まれ。23歳。5歳でフィギュアスケートを始める。14歳だった16年9月のジュニアGPシリーズ・スロベニア大会で、史上7人目の3回転半ジャンプ成功者。シニアに転向した18年には、05年浅田真央以来となるGPデビューシーズンでのファイナル制覇を達成。19、20年全日本選手権、四大陸選手権優勝。155センチ。
◆西山 真瑚(にしやま・しんご)2002年1月24日、東京都出身、23歳。6歳から競技を始め、中学3年でカナダ・トロントに渡り、クリケットクラブで羽生結弦さんらと練習。2019、20年全日本ジュニア優勝。23年からアイスダンスで田中梓沙とカップル(愛称・あずしん)を組み、同年と24年に全日本2位。25年アジア大会銅メダル。
◆「りかしん」の五輪代表を争うライバル
▽「うたまさ」 昨季全日本選手権覇者の吉田唄菜(うたな、22)、森田真沙也(21)=木下アカデミー=組。
▽「いくこう」 5月にカップルを結成した櫛田育良(いくら、17)=木下アカデミー=、島田高志郎(24)=木下グループ=組。
◇アイスダンス 「氷上の社交ダンス」と呼ばれ、音楽に合わせたターンやステップ、リフトで表現力や同調性などを競う。76年インスブルック五輪から正式種目になり、日本勢の最高位は06年トリノの渡辺心、木戸章之組と、18年平昌の村元、リード組の15位。欧米やロシアが表彰台の常連。シングルはショートプログラム(SP)とフリーで争うが、アイスダンスはリズムダンスとフリーダンス。