大相撲の元横綱・白鵬の白鵬翔さん(40)がこのほど、スポーツ報知の取材に応じ、アンバサダーを務め、10月に日本初上演される舞台『The Mongol Khan(モンゴル・ハーン)』の見所を語った。また、9月に任命された国際相撲連盟顧問としての抱負も明かした。

(取材・構成=林 直史)

 「モンゴル・ハーン」では、3000年前のモンゴル帝国のフン族の王座を巡る歴史ドラマが描かれている。2022年にモンゴルで180回以上のロング公演を達成。その後、ロンドン、シンガポールでも上演され、日本公演後も世界各地で公演が予定されている。

 「映像で見ましたが、非常に分かりやすい舞台でした。(パフォーマーが舞台の)後ろで言葉をダンスで表現していて、すごく表現力豊か。『怒ってるだろうな』『ちょっと心配してるな』『ウソを言ってるな』というのが踊りで表されているので分かりやすい。(モンゴルの民族楽器)馬頭琴など昔の楽器の演奏もあって、ハイブリッドな舞台だと思いました」

 同作との不思議な縁も感じている。演出を担当したヒーロー・バートル氏、原作者バブー・ルハグヴァスレン氏、白鵬さんの父で68年メキシコ市五輪レスリング銀メダリストのムンフバト氏は友人関係にあり、3人で草原を走る車の中で同作の話題で盛り上がったことがあると伝え聞いた。

 「ルハグヴァスレンさんと父は地元が同じで本当に仲が良かった。バートルさんは、父と私が出演した『百人の英雄』というドキュメンタリー番組を製作された方。縁がつながったなと。アンバサダーとして選ばれたというのは、運命だったのかなと感じています」

 王族を巡る物語は、大相撲の最高位・横綱を経験した自身の記憶とも重なる部分があるという。

 「私も長年横綱を務めて、上に立った人間の孤独さはすごく感じた。何を捨てて、何を切り開いていくのか。その決断というのは、難しくてもやらないといけない時期が来る。勝って当たり前という世界で、特に引退する2、3年前からは睡眠薬を飲んで寝るようにもなっていた。勝たないといけないというプレッシャーが、どんどん押し寄せていた。引退してからは食事もおいしい。そう思うと、もっと早く引退しておけば良かったなと思うこともあります」

 今回の公演は日本モンゴル友好記念事業としても位置付けられ、東京と愛知(10月10日~20日に東京国際フォーラム、同24~26日に愛知県芸術劇場)で上演される。

 「私個人としても両国の小さい架け橋になっていきたいと思っている中で、モンゴルの伝統的なものが日本に来たというのはすごく感慨深いものがあります。ぜひ一人でも多くの皆さんに舞台を見に来てほしいなと思いますね。(東京公演初日の)10月10日は私も東京国際フォーラムに行きます。生で見るのを楽しみにしています」

 また、自身の近況についても語った。6月に日本相撲協会を退職後、国内外に競技の裾野の拡大を目指す「世界相撲グランドスラム構想」を掲げて活動を始めている。

9月中旬にはアマチュアの世界選手権(バンコク)を現地で視察した。

 「初仕事で大変勉強になったし、本当に感動しました。日本のアマチュアの最高の選手たちの活躍を間近見ることもできた。ウクライナのレベルの高さであったり、米国が日本の押し相撲をベースに相撲を取っていることにも驚きました。こういった選手たちが、グランドスラムで戦う姿を早く見たいなという気持ちになっています」

 世界選手権中に開催された国際相撲連盟の総会では、新設の顧問にも任命された。新たな使命として、同連盟の加盟国数を現在の84から100か国まで増やすことを目標に掲げた。未加盟国を訪問し、直接働きかけていく考えもあるという。

 「目指せ100か国ですね。そうなればグランドスラム、夢のオリンピックというものが近付いてくると思う。100の国から全員が参加できるような世界大会、国際相撲にしていきたいなというのが私の気持ちです」

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