春先の求人広告は、例年よりも静かな動きを見せている。人手不足が続く中でも、時給の伸びは一休みの様相だ。

だが、その内側では職種や地域ごとの温度差が広がりつつある。

 株式会社マイナビが公表した2026年3月度のレポートによると、全国のアルバイト・パート平均時給は1,296円で、前月比2円減とほぼ横ばいだった。一方、前年同月比では29円増となり、水準自体は底上げされている。

 職種別に見ると、飲食分野の動きが際立つ。[飲食・フード]は1,210円で過去最高額を更新し、2025年8月から8カ月連続の上昇となった。慢性的な人手不足に加え、春の新規就業者の確保を見据えた採用競争が影響しているとみられる。

 全体では16職種中7職種が前月比で上昇、8職種が下落、1職種が横ばいとばらつきがある。短期的には調整局面に入りつつも、前年と比較すると13職種で上昇しており、賃金水準の引き上げ基調は続いている。

 地域別では関西の上昇が目立つ。平均時給は1,304円で前月より14円増加し、主要エリアで唯一の上昇となった。人口流入による需要拡大が、採用時給を押し上げた可能性があるとされる。

 三大都市圏の平均時給は1,334円で、5カ月ぶりに増加へ転じた。

歓送迎会や大型連休を控え、レジャー関連は1,297円で高水準を維持し、繁忙期に向けた人材確保の動きが反映されている。

 都道府県別では東京都が1,432円と唯一1,400円台に乗せた。内訳を見ると、23区は1,444円、23区外は1,394円で、その差は50円に開く。港区は1,489円、文京区1,484円、千代田区1,479円と都心部の高さが際立つ一方、多摩市1,436円など郊外でも一定の水準が維持されている。

 時給は上がり続けているように見えながら、その伸びは均一ではない。職種や地域によって需給の差が反映され、局所的な上昇が全体を押し上げている構図だ。数字の横ばいは停滞ではなく、次の変動に向けた調整の時間とも読み取れる。

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