3月に再選し、7期目を迎えた日本相撲協会の八角理事長(62)=元横綱・北勝海=が29日までにスポーツ報知の単独インタビューに応じた。2028年6月に65歳の誕生日を迎え、日本相撲協会を定年となるため、理事としては最後の任期(同年3月の春場所後まで)に、力士ら協会員の待遇改善に取り組むことを約束。

東京・両国国技館の“レジェンド化”、新弟子発掘や暴力根絶に向けた決意も語った。(取材・構成=林 直史、今関 達巳)

×    ×    ×    ×

 八角理事長は15年12月に就任し、7期目に入った。本場所が2年連続で90日間札止めとなるなど、相撲人気は年々高まっている。

 「順調だが、こういう時こそ引き締めていかなければならない。気掛かりなのは新弟子の確保。道筋をつけていきたい」

 直近4場所で番付表に載った力士数は600人を下回った。少子化もあり、他競技でも競技人口の減少が大きな課題となっている。

 「アマチュアと連携してやっているが、100人余りの親方衆の努力も必要。大相撲は未経験者でも横綱になれる。親方衆との食事会などで一番の仕事は弟子をスカウトする、育てることだと何度も伝えている」

 春場所前には伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士)が弟子に暴力を振るった事案が判明した。18年に「暴力決別宣言」を発表。コンプライアンス委員会の設立など防止策に力を入れてきたが、今後も地道に暴力根絶に取り組んでいく決意だ。

 「なかなかゼロにはできていないが、やってしまった時にコンプライアンス委員会が冷静な目で処分を判断して、理事会で決めるという流れは整備できた。今までは隠すことが一番ダメだというのを分かっていない人も多かったが、伊勢ケ浜親方は自分から言ってきた。意識も変わってきている。協会員の研修会も毎年やっている。同じことの繰り返しになるが、粘り強くやっていくことが大事」

 開館から40年を超え、建て替えも検討されてきた国技館の今後の在り方も課題となっている。

 「2か月に一度、国技館の将来を考える委員会で話し合っている。(英ロンドンの)ロイヤル・アルバート・ホール(RAH)は150年ほど続いている。個人的にはそれを目指して新しく作るのではなく、大切に維持しながら“レジェンド化”していくのがいいのではないかと考えている。改修の方がお金はかかるとは思うが、例えばロンドンの人たちが日本に来て、国技館を見てみたいというふうになれば一番いい。委員会でも建て替えをせず、持たせることができるかという調査をしている。この2年で結論を出したい」

 RAHでは昨年、34年ぶりの海外公演も開催した。

 「4月にロンドン市民栄誉賞の授与式でロンドンに行った。

私ではなく、全力士や先輩方がもらった賞だと思っているが、タクシーの運転手さんが私とは知らずに『日本から来たのか。相撲はすごかったな』と言ってくれた。それぐらい相撲は日本の文化だと認められてきたと感じた」

 6月にはパリ公演が控えている。八角理事長は86年の第1回パリ公演に大関として参加している。

 「サンドイッチを頼んで食パンだと思ったら、硬いフランスパンだった。当時は知識がなく驚いた。エッフェル塔や凱旋門にも上った。船で観光して自由の女神を見て、米国の自由の女神はフランスから贈られたものだと。国と国のつながりを知って勉強になった」

 日本の伝統文化としての相撲を世界に発信し、力士にとっても学びの場となる海外公演は今後も継続的に開催していきたい考えだ。

 「10か国ぐらいからオファーが来ている。力士の負担を考えながら、何年かに1回はやっていきたい」

 最後の任期で、力士らの待遇改善も目指していく。

 「協会としては売り上げも上がっているので、協会員の手当も増やしていきたいと思っている。

頑張ればお客さんが来てくれて、収入面も良くなる。そういう形で還元していきたい」

 ◆八角 信芳(はっかく・のぶよし)本名・保志信芳、第61代横綱・北勝海。1963年6月22日、北海道広尾町生まれ。62歳。79年春場所、初土俵。87年夏場所後に横綱へ昇進。優勝8回。92年夏場所前に引退。93年9月に年寄「八角」を襲名、九重部屋から独立し部屋創設。2012年、理事初当選。広報部長など経て14年から事業部長。15年九州場所中に北の湖前理事長の死去を受け代行、同年12月に第13代理事長に選出された。

【取材後記】穏やかな笑顔が印象に残った。理事長就任後、控えていた飲酒を3年ほど前に解禁した。「お酒自体が好きというより、楽しく飲むのが好きでね。楽しむ、笑うというのが一番いいこと」。ゴルフをたしなむ際も、以前のようにスコアを求めなくなったという。

 15年11月に急逝した北の湖前理事長の後を継いだ。コロナ禍など苦難は多かっただけに、心境の変化は協会運営が軌道に乗ってきたからこそだろう。「あれから10年か…。笑いがなかったから、今までは。酒飲んで、冗談言って、大笑いするのが一番楽しい。ようやく、そういうふうになってきたのかな」。満了すれば史上2番目に長い在任期間の最後の任期。

笑顔が絶えない2年間になることを期待したい。(大相撲担当キャップ・林 直史)

編集部おすすめ