賃貸住宅の入居では、家賃債務保証会社を利用できないとオーナー(大家)や管理会社から断られることがあります。住む場所が決まらなければ、職に就くことや公的生活支援を受けることも困難に。
リーマンショック以降、連帯保証人がいないために家を借りられない人が増加
部屋探しでは、家賃債務保証会社を利用するか、連帯保証人がいなければ、一般的には部屋を借りることは困難です。そして世の中の景気が傾くことがあれば、その影響は如実に表れます。家賃や住宅ローンを払えずに住まいを失ったり、失職によって寮を出なければならなかったり。
相談者の多くは、単に家が借りられないだけでなく、多重債務を抱えていたり、精神疾患を患っていたりするなど、複合的な問題を抱えて普段の生活にも支援を必要としています。
あまやどり高知の代表理事を務める岡村啓佐(おかむら・けいすけ)さんによると、特にリーマンショックから1~2年経ったころから高知でも影響が出始めたそうです。
「ちょうど私が無料低額医療事業を始めたころでした。想像以上に保険証のない人や、保険証があっても3割負担ができず病院に行けない人がいました」(岡村さん)
公的支援を受けようにも窓口が自治体ごとに異なっていて、住所が定まらなければ支援を受けられず、履歴書に住所を書くことができなければ、定職に就くのも難しいでしょう。賃貸住宅に入居するための連帯保証人がいないということは、さらなる生活困窮へとつながるのです。
あまやどり高知の立ち上げ時から参加している岡村さん。もともと無料低額医療事業の運営で法テラスに携わるように。医療機関退職後は別にホームレス支援の活動にも携わり「困窮者支援はライフワーク」だと言う(画像提供/あまやどり高知)
ホームレスや刑余者の連帯保証からスタート。支援者のための支援
現在、あまやどり高知の事務局を務める山崎剛裕(やまさき・たけひろ)さんは、最初の入り口が法テラスであるため、住まいを失いホームレス状態になっている人や刑罰を受けたことのある刑余者(過去に罪を犯して有罪判決を受け服役を終えた人や、執行猶予期間中の人など)からの相談が多いと言います。
「ホームレスや刑余者となると家賃債務保証会社を利用できず、さらに家は借りにくくなります。連帯保証人の候補者がいないとまず賃貸住宅を貸してはもらえません。定職に就くことができないために再び犯罪に走る人や、ホームレス状態から脱することができないといった問題がありました」(山崎さん)
中には支援団体の支援者個人が連帯保証人になっていたケースもあったとか。
そこで法テラスで相談を受けていた専門家たちは、このような事態をワンストップで解決・改善できないかと議論を進めました。そして法テラスの支援を受けながら立ち上げた組織が、現在の「あまやどり高知」です。2018年には、住まい確保に困っている人を支援する団体「居住支援法人」として高知県から指定を受けました。
その活動は、連帯保証人がいないために入居できる部屋が見つからない人の連帯保証人を引き受けることです。現在では、ホームレスや刑余者だけでなく、「住宅確保要配慮者」と言われる、住まいの確保に困っている高齢者や障がい者なども対象です。
あまやどり高知の属性別利用者数の推移
相談者は、初めはホームレスや刑余者が多かったが、よくよく話を聞いてみると、ほかにもさまざまな問題や事情を抱えた人がおり、支援対象も次第に広がっていった(画像提供/あまやどり高知)
「利用者が入居後に家賃を払っていくためには、当事者を見守り、必要があればサポートする福祉的支援が必要です。
しかし、もともと私たちの活動は、支援をする福祉関係者がスムーズにソーシャルワークを継続できることを目的としてスタートしているので、連帯保証人がいない人の連帯保証支援が本分。マンパワー的にも限界があり、入居後の支援までを当団体で担うのは難しい状況があります。
支援者のいない相談者には、専門相談を実施。どのような支援を必要としているかを見極め、必要な支援団体につなげ、連帯保証が必要となれば支援団体とともに利用審査会の審議に進むことに。
事務局への問い合わせは月に100件弱、年間にすると1000件ほどに上り、そのうち実際の保証まで至るのは年間50件~60件ほどです。
住まいが必要な場合は、活動に賛同し登録している不動産会社を通じて探すことも可能。不動産会社にとっては、あまやどり高知が連帯保証を引き受けることにより、これまで貸すことを躊躇(ちゅうちょ)していた人にも貸し出すことができ、空室を減らせる点がメリットです。
あまやどり高知で連帯保証を受けるには、本人だけでなく、支援団体などの支援者とともに申し込むことが必須。写真は申込相談時のイメージ(画像提供/あまやどり高知)
支援者がいない人に対しては福祉専門相談員が状況を確認し、必要な支援へとつないだ上で連帯保証の審査を行う(画像提供/あまやどり高知)
専門家たちがボランティアで活動、低予算でなんとかやりくりを
あまやどり高知の運営体制は現在、理事8名、司法書士の監事1名、非常勤の事務局員や支援部・保証部から組織されています(一部のメンバーは兼務)。専門相談に関しては気持ち程度の謝礼金(1回につき3000円)を出しているものの、全員がほかに本業を持っており、基本的に活動はボランティアです。
あまやどり高知の会員は全員がボランティアで、専門相談以外の報酬はない。役職を兼務している人もいるので組織内の人数は延数になる(画像提供/あまやどり高知)
主な収入は連帯保証を実施する際に利用者が払う1件あたり1万5000円の利用料(保証期間2年で更新)と、そのほか自殺対策強化事業の助成金(約90万円)などで、これらが活動費に充てられるそうです。
業務に携われる時間が限られているなか、2カ月に1回の理事会と毎月の事務局会の開催で運営をしています。
理事と相談員を兼務する徳平真紀(とくひら・まき)さんは「常にかかりっきりということはありませんが、いつでも電話には出られるように心がけている」そう。仕事中などで電話に出られないときは履歴を確認してかけ直すなどの対応をしています。
精神病院で福祉相談員として働いていた経歴を持つ徳平さん。支援者のいない相談者に専門相談を実施して、適切な支援者につなぐのも徳平さんの役目(画像提供/あまやどり高知)
それでも相談は時を選ばない、正月に電話がかかってくることも
ボランティアとはいえ、問い合わせや相談の連絡はいつ来るかわかりません。
ある年には、1月2日に事務局を務める山崎さんの電話が鳴りました。高知とはだいぶ距離のある大阪府内の警察署から「(あまやどり高知の連帯保証の)利用者が公園で一人困っている」とのことでした。なんとその人は高知から一人で来ていた上に持っていたのは賃貸借契約書だけ。そこに記載されていた連絡先を見て、あまやどり高知へ電話がかかってきたのです。山崎さんは利用者を支援する団体へ電話をかけましたが、正月休みなのでどこもつながりません。最終的に警察が切符代を立て替えてくれたおかげで、利用者は無事に高知へ帰ることができたそうです。
「時には想定していなかった対応を迫られることもありますが、それでも問題が解決すればそれがモチベーションアップになる」と山崎さんは前向きです。
また、高知セーフティネット連絡会というネットワークを通じて行政と連絡を取り合うこともあると言います。さらには登録している不動産会社やオーナーから逆に「保証をしてもらえないか」と問い合わせが来たり、公営住宅への入居に際してケアワーカーさんと連携したりすることも。
山崎さんは、このように連帯保証を行うことで「福祉支援団体や不動産関係者、行政ともつながりができ支援の輪が広がっていると感じている」と話します。
事務局を務め、専門相談員も兼務する山崎さん。
お金があっても連帯保証人がいない……活動を広げていくにはやはり資金とマンパワーが必要
一方で、長年の活動で課題も見えてきました。
家賃を連帯保証したことによる債務履行(支払い)は、毎年発生します。
「審査で審議するのは『私たちが保証支援をすることで、支援計画がうまくいくようになるか』という点であり、利用者本人の経済的信用ではありません。
そのため、保証する人の中には、ある日突然失踪したり、途中で亡くなったりする人もいます。また刑余者の場合、再犯になって刑務所に戻ることもあるので、解約の手続きができずに債務履行となる割合は、どうしても一般的な家賃債務の履行率よりも高くなるのです」(山崎さん)
件数や金額は年によってまちまちで読みにくく、予め団体として加入している保険で一部は返ってきますが、年によっては繰越金を充ててなんとかしのいでいるのが現状です。
山崎さんは「長期的には保証件数の増加を見込んでおり、事故率を下げることが一番の課題」と話します。
解決のためには「事故率の引き下げは支援の充実が一番の対策」として、ケースワーカーなどの支援者と充実した協議を行うことにも力を入れているそうです。
連帯保証を終了した理由とその推移
保証支援終了事由の内訳を見ると、逮捕・収監によるものや、連絡なく転居、行方不明、死亡によるケースの割合が多く、連帯保証の対象になってくる(画像提供/あまやどり高知)
また、岡村さんは「そもそも住宅確保要配慮者の連帯保証は本来、行政や国がやるべきこと」と見解を述べつつ、ボランティアであるために活動を広げていけない歯がゆさも訴えます。
「近ごろでは、たとえ貯蓄や資産が十分にあっても、連帯保証人がいないために入居できない高齢者が増えています。しかし、潤沢な貯蓄や資産がある人には民間の保証会社がありますが、社会に格差が広がっていく中で私たちが見えていない『困っている人』が増えているはずです。当団体では常勤の体制が取れず、活動を広げていくだけのパワーを備えていないところが辛いところです」(岡村さん)
あまやどり高知の2024年度保証債務履行費用は119万7304円、過去12年間の保証事故による債務履行は67件、約790万円に。審査をして借家契約保証をしても、家賃滞納などは発生する。
住まいがなければ行政の支援を受けられず、生活が成り立たなくなり貧困につながります。困窮する人たちへの支援の最初の入り口として、国や行政による連帯保証の組織や仕組みづくりが必要ではないでしょうか。志ある一部の人たちの活動に頼るだけでは継続が難しくなる危惧があります。
山崎さんは実感として「相談者の支援者による支援が充実しているほど、保証に関する事故は起きにくい」と言います。適切な支援をするための資金や体制を確保できれば保証事故は減り、家主の不安を軽減するような支援の制度が充実すれば「賃貸住宅に入居できない」問題は解決に向かうでしょう。
●取材協力
特定非営利活動法人あまやどり高知

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
