テクニファイバーのストリングに通底する設計思想


テニスストリングは、ラケットやシューズに比べて語られる機会が多いとは言えない。しかし実際のプレーにおいて、最も長くボールと接し、打球感やパフォーマンスに直接影響を与えているのはストリングである。テクニファイバー(Tecnifibre)は、そのストリング開発において、長年一貫した考え方を貫いてきたメーカーだ。


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派手なマーケティングや、特定のイメージを強調する訴求に頼るのではなく、素材と構造に向き合い続ける。その姿勢が、世界中のプレーヤーやストリンガーから支持を集めてきた理由でもある。ここではテクニファイバーのストリングがどのような背景と思想のもとで設計されてきたのかを整理していく。

■素材メーカーとしての出発点

テクニファイバーは、もともと「テニスブランド」として生まれた企業ではない。フランスで創業し、工業用繊維や素材技術を基盤とするメーカーとしてスタートしている。この出自は、現在のストリング開発にも色濃く反映されている。

一貫して重視してきたのは、打球感を感覚的な評価で終わらせないことだ。繊維の構成や配置、含浸の度合い、表面処理の違いが、インパクト時の挙動にどのような影響を与えるのか。その因果関係を前提に、ストリングを設計してきた。

開発において中心に置かれているのは、「素材がどう変形し、どう戻るか」という視点だ。インパクトの瞬間、ストリングは一瞬で伸び、潰れ、そして元の形状へ戻る。その変形量、復元速度、残留する歪みの度合いが、打球感や反発力、コントロール性能として表れる。

テクニファイバーのストリングが「打感が似ている」ではなく、「挙動として説明できる」と言われるのは、こうした物理的な振る舞いを前提に設計されているからだ。
感覚を起点にするのではなく、挙動を起点に設計する。この姿勢が、モデルごとの明確な性格差を生み出している。

この考え方は、生産体制にも表れている。テクニファイバーは、コスト削減を目的とした海外生産に切り替えることなく、現在もフランス国内での一貫生産を続けている。

ストリング、とりわけマルチフィラメントや複合構造の製造は、非常に繊細な工程を伴う。繊維の間にポリウレタンを浸透させるタイミング、ポリエステルに熱を加えるサーモコア工程では、わずかな温度や湿度の変化が、仕上がりの挙動を左右する。

フランス北部の自社工場では、熟練のエンジニアが24時間体制で品質を管理する。素材の挙動を把握できる環境を維持することが、設計思想を製品として成立させるために欠かせない要素となっている。

■二つの軸「パワーとコントロール」「ハードとソフト」

テクニファイバーのストリングラインアップを俯瞰すると、共通した設計の軸が浮かび上がる。それが、「パワーとコントロール」「ハードとソフト」という二つの対立軸だ。

この二軸は、テニスにおいて常にトレードオフの要素でもある。その中でテクニファイバーはその両端から中間までを意識的に設計してきた。

・高い反発力と快適性を追求したマルチフィラメント
・競技性と再現性を重視したポリエステル
・両者の特性を組み合わせた複合構造

これらは個別の製品群でありながら、同じ思想の延長線上に位置づけられている。


テクニファイバーのストリングはどのように設計されてきたのか――歴史と思想から読み解く

■マルチ・ポリ・複合を「思想」で揃えるメーカー

テクニファイバーのストリングは、大きくマルチフィラメント、ポリエステル、マルチ×ポリの複合構造に分かれる。重要なのは、これらが単なるラインアップ拡張ではない点にある。

マルチフィラメントは、快適性や反発、衝撃吸収を突き詰めるための構造。
ポリエステルは、コントロール性や再現性、競技性を重視した構造。
複合構造は、現代テニスの要求に応えるためのバランス設計だ。

テクニファイバーは、「どれが正解か」を提示するのではなく、プレーヤーがどこに立っているのかを明確にするための選択肢を用意している。

■TRIAXというバランス設計

この思想を象徴するモデルが、TRIAX(トライアックス)である。TRIAXは、マルチでもポリでもない。複数素材を組み合わせることで、パワー、コントロール、打球感のバランスを意図的に中央に配置した設計が採られている。

ポジショニングマップで表した場合、TRIAXは自然と中心付近に位置づけられる。そこから右へ行けば快適性や反発が強まり、左へ行けば競技性が高まる。上へ行けばパワー寄り、下へ行けばコントロール寄り。TRIAXは、他のモデルを理解するための起点として設計されている。

テクニファイバーのストリングはどのように設計されてきたのか――歴史と思想から読み解く

(テニスクラシック調べ)

■ポジショニングマップで見える明確な設計思想


テクニファイバーのストリングをポジショニングマップで俯瞰すると、意図的に配置されたモデル群が見えてくる。
それは偶然の産物ではなく、設計思想の結果だ。

例えば、X-ONE バイフェイズは、マルチフィラメント技術を突き詰めたモデルとして位置づけられている。独自のバイフェイズ製法により、初期性能を安定させ、高い反発力と快適な打球感、優れた衝撃吸収性を両立している。

一方で、反対側には、あえて反発を抑え、コントロールや再現性を重視したモデルが存在する。中心付近には、現代テニスの要求に応えるための複合構造が配置されている。

これらすべては、プレーヤーのレベルやプレースタイル、成長段階の変化を想定した設計の結果だ。テクニファイバーのストリング開発は、単に「いま合う一本」を提供するだけでなく、その先の選択肢までを見据えて構築されている。

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