今日は、読者から質問の多い「積み立て投資の効果」について解説します。これから投資を始める初心者の方に、ぜひ、知っておいていただきたいことです。


今日のポイント

  • 積み立て投資には、高値で少なく、安値でたくさん投資する仕組みがビルトイン(自動設定)されている。そのため、値動きの激しいアセットほど、積み立ての効果が大きくなる。
  • 日経平均は、長期的な資産形成に寄与する投資対象と考える。値動きが荒いのが欠点だが、積み立て投資が威力を発揮しやすいアセットと言える。ノーロード(売買手数料なし)で信託報酬(ファンドから差し引かれる手数料)の低いインデックスファンドから始めることが望ましい。

(1)日経平均はNYダウより値動きが荒い

 日経平均の上昇が続いています。私は、PER(株価収益率)や配当利回りなどの株価指標でみて今でも割安で、中長期の資産形成に貢献する投資対象と考えています。ただ、非常に値動きが荒く、投資タイミングをはかるのが難しいアセット(投資対象)です。


 アベノミクスがスタートした2013年以降の日経平均とNYダウの値動きを比較したグラフをご覧ください。


日経平均とNYダウの値動き比較:2012年末~2019年末
積み立て投資:いま売りたい人に知ってほしい、荒れグセの日経平均に勝つ方法とは?
注:2012年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成

 日経平均がNYダウより値動きが荒いことが、わかります。日経平均は、2013年から上昇局面でNYダウを上回る上昇率となっていますが、下げ局面(上のグラフで青矢印をつけた所)だけ見ると、日経平均がNYダウより大きく下落していることがわかります。


 日経平均は、上げる時も下げる時も、NYダウより値動きが大きく、それだけに、いつ買ったら良いのか、判断がむずかしいと思います。


(2)値動きが荒いアセットへの投資では、積み立て投資が効力を発揮する

 これから資産形成を考えている個人投資家は、月々1万円とか2万円とか、金額を決めて、積み立てていくのが良いと思います。積み立て投資は、日経平均インデックスファンドなど、値動きの荒いアセットへの投資で効力を発揮します。


 積み立て投資の威力を理解いただくために、簡単な例を作りました。

まず、以下のクイズを解いてみてください。


【クイズ】

 以下のアセットA・アセットBに、1カ月後と2カ月後に1万円ずつ投資したとして、3カ月後の資産価値は、どちらが大きいでしょう?


◆値動きの乏しいアセットA
 1万円でスタート、1カ月後・2カ月後・3カ月後も1万円のまま。


◆値動きが激しいアセットB
 1万円でスタート、1カ月後に1万2,000円(スタート時より+20%)に上昇、2カ月後に8,000円(スタート時より▲20%)に下落、3カ月後にスタート時の1万円に戻る。 


 どちらも、1万円でスタートして、3カ月後に1万円です。ところが、アセットAとBに積み立て投資した場合で、3カ月後の資産価値に差が生じます。


【答え】

 アセットBに投資した方が得です。

アセットAでは、投資した2万円が、3カ月後に2万円のままですが、アセットBでは、投資した2万円が、3カ月後に2万800円に増加します。


【解説】

 アセットBに、1万円ずつ投資し続けると、価格が上がったときには少ない量しか買えませんが、価格が下がった時にたくさん買えます。高いときに少し買い、安いときにたくさん買う運用が、自然にできていることになります。


【さらに詳しい解説】

 アセットAは、1カ月後に1万円で1単位、2カ月後にも1万円で1単位、買えます。合わせて2単位、取得できます。その評価額は、3ヵ月後に2万円です。

値動きがないので、損も得もしません。
 アセットBは、どうでしょう? 1カ月後、1万2,000円に上昇したときは、1万円で0.83単位(10,000÷12,000)しか買えません。ところが、8,000円に下がった2カ月後には1万円で、1.25単位(10,000÷8,000)買うことができます。合わせて2.08単位、取得できます。3カ月後に価格が1万円に戻れば、評価額は、2万800円となります。800円だけ、資産価値が増えています。


(3)ファンドマネージャーにとっても嬉しかった「積み立て投資」

 私は、25年間、年金・投資信託などの日本株を運用するファンドマネージャーでした。ファンドマネージャー時代に、とても残念に思ったことと、嬉しかったことがあります。


 まず、残念なこと。私が運用していた公募投信(日本株のアクティブ運用ファンド)では、日経平均の高値圏で設定(買い付け)が増えるのに、日経平均の安値圏では、ほとんど設定がありませんでした。株は安い時に買って、高くなった時に売ると利益が得られるわけですが、公募投信では、残念ながら、その逆の動きが見られました。


 次に、とても嬉しかったこと。私が運用していたファンドが、DC(確定拠出年金)の運用対象となったことです。

多数の企業に採用していただけました。DCでは、毎月、一定額の設定が入り続けます。加入者の方に、定時定額で積み立てしていただいたことになります。そうすると、日経平均の高値でも、安値でも、淡々と設定が入ってきます。


 日経平均が大暴落して世の中が総悲観になっている時、往々にして、絶好の投資チャンスとなっています。ファンドマネージャーとしては、そんな時こそ、しっかりと投資を増やしてほしいと思います。ところが、公募投信では、そういう時に、設定が入ってきません。
私が運用していたDCファンドでは、定時定額の積み立て投資が入ってきますので、リーマンショックで日経平均が大暴落し、世の中が総悲観になっている時でも、淡々と積み立てが入ってきました。


 誰でも、株は安い時に買って、高い時に売りたいと思うのでしょうが、言うのは簡単で、やるのはとても難しいことです。そうするためには、世の中総悲観になっている時に、株を買い、みんなが明るくなって強気になっている時に、株を売らなければなりません。それは、少しひねくれた人にしかできないことです。普通の素直な人は、みんなが明るくなっている時に、株を買いたくなり、暗くなっている時に、株を売りたくなるでしょう。


 普通の素直な人は、変に、いいタイミングで株を買い、いいタイミングで売ろうとしない方がいいと思います。それでは、どうするべきか? 私は、定時定額(たとえば毎月1万円)の積み立て投資をしていくべきと思います。


(4)積み立て投資のもう1つの効果、支出を収入の範囲に収める習慣が身につく

 毎月1万円の投資を行うためには、その分、支出を絞らなければなりません。収入を上回る支出を行っていると、積み立て投資はできません。


 積み立て投資をする習慣を身に付ければ、自動的に、支出が収入を下回るようにコントロールする習慣を身につけることになります。


(窪田 真之)