先週は12月19日(火)に終了した日本銀行の金融政策決定会合でマイナス金利の解除など劇的な政策転換が行われなかったこともあり、19日(火)、20日(水)の日経平均株価(225種)は2日間で916円も上昇。


 その後は米国株の利益確定に伴う下げの影響もあって伸び悩みましたが、22日(金)終値は前週末比198円(0.6%)高の3万3,169円で終了しました。


 円高が進んでいた円相場も先々週の14日(木)に1ドル=140円台後半を付けて以降、先週はわずかながら円安方向に戻し、22日(金)のニューヨーク外国為替市場の終値は142円台半ばで落ち着きました。


 22日の米国株が米物価高の沈静化を好感して上昇したことを受け、25日(月)の東京株式市場の日経平均は続伸して始まり、取引開始直後に前週末終値比245円高となりました。ただ買い一巡後は上昇幅を縮め、終値は84円高の3万3,254円でした。


 先週、中東情勢の悪化で船賃が上昇するとの思惑などで急騰した海運株は大きく値を下げました。欧州の海運大手が紅海経由の運航再開に向けて準備をしていると伝わり、船賃上昇の見方が後退しました。


 2023年1年を通して見ると、日本株は円安メリットで外需株が値上がりし、長らくデフレ経済で苦しんできた内需株もコロナ明けの個人消費の回復やインバウンド(訪日外国人)需要の躍進もあって好調に推移しました。


 その結果、日経平均の先週末22日(金)終値は、昨年末の終値2万6,094円から実に7,074円(27.1%)も上昇。


  トヨタ自動車(7203) など重厚長大な大企業の組み入れ比率が高いTOPIX(東証株価指数)は前年末比23.5%高となり、ともに2013年のアベノミクス相場以来、10年ぶりの上昇率を記録しています。


 一方、米国株も機関投資家が運用指針にするS&P500種指数の22日(金)終値は前年末の終値から23.8%上昇。


 ハイテク株が集まるナスダック総合指数は前年末比43.2%も上昇し、2022年に33.0%安となった下落幅の大半を取り返すことに成功しています。


 中でも生成AI(人工知能)向け高性能半導体が飛躍的に売れている エヌビディア(NVDA) は年後半伸び悩んだものの、前年末から株価が3.34倍に急騰。


 高金利が続いても、これだけ強い米国の巨大IT企業の株価を見せつけられると、2024年から始まる新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)でもこうした米国巨大IT企業の株を全て組み入れたS&P500やナスダック100に連動するインデックス型投資信託に「寄らば大樹の陰」の心境で投資し続けるのが賢明といえるかもしれません。


先週:日銀の緩和継続で円高進行和らぐ!米国の物価高も鈍化し日米株価は小幅高! 

 先週の日本株を大きく上昇させる引き金になったのは、19日(火)に終了した日銀の金融政策決定会合でした。


 一部にはマイナス金利の解除などサプライズな金融政策の大転換が行われるのではないかという警戒感もありました。


 しかしふたを開けてみれば、マイナス金利解除だけでなく、短期から長期までの国債利回りが描く曲線を適正な水準に保つことを目指すYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)政策の変更もなく、全くの無風と言っていい結果に。


 日銀の植田和男総裁は会合後の記者会見で金融緩和策の出口戦略について「確度の高い姿を示すことは困難」と、時期や具体策について明言せず、賃金が上がり物価も上がる好循環が実現するかどうか「なお見極めていく必要がある」と発言。


 日銀の粘り強い金融緩和策の継続決定を受け、急速な円高モードに歯止めがかかったことで先週の日本株は上昇しました。


 一方、米国では20日(水)、民間調査会社コンファレンス・ボードが発表した12月の消費者信頼感指数が大幅に好転。


 22日(金)発表の米国の11月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)は前年同月比2.6%の上昇で、伸び率は10月の2.9%から鈍化し、前月比では0.1%の下落に転じました。


 物価沈静化と景気のソフトランディング(軟着陸)期待が高まる米国市場では、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が早くも2024年3月から利下げを始めるという楽観論が台頭。


 先週のS&P500は、年末に向けた利益確定売りをこなして、22日(金)は前週末比0.75%高と8週連続で上昇しました。


 日本では、19日(火)に 日本製鉄(5401) が米国の鉄鋼会社USスチールを買収するという報道が流れましたが、日本製鉄の22日(金)終値は前週末比2.4%安とあまり材料視されませんでした。


 一方、中東イエメンの親イラン武装組織フーシ派による攻撃が相次ぎ、紅海でのタンカー運航を停止する動きが広がっていることから、世界的な船賃の高騰を見込んで海運株が急騰。


 コンテナ船市況の底打ちを期待して 川崎汽船(9107) が28.8%高となるなど大盛況でした。


 また半導体製造に使う純水製造装置メーカーの 野村マイクロ・サイエンス(6254) が12.8%高、日本で一番、株式の売買高が多い半導体検査装置メーカーの レーザーテック(6920) も9.6%高で、ともに上場来高値を更新しました。


今週:年末年始の急速な円高に注意!2024年は景気敏感株や新興成長株が強い?

 今週は25日(月)がクリスマス休暇で米国をはじめ多くの株式市場が休場。


 それ以降に大きな経済指標の発表もないため、株式市場は穏やかで、小動きの展開になる可能性が高そうです。


 ただし、売買高が減少する年末年始には、時に急速な円高や株安が進行することもあるので注意は必要です。


 25日(月)には経団連(日本経済団体連合会)の審議会で日銀の植田総裁の講演が予定されています。


 もし、2024年に向けた、具体的な金融緩和策の出口戦略や時期についての発言が飛び出すと、小康状態だった円高トレンドが復活して日本株の足を引っ張るかもしれません。


 2023年の株式相場も最終週に突入しましたが、多くの投資家は来年2024年には2023年以上の株高が続くだろうと期待を寄せているようです。


 特に米国の物価沈静化を受けて、米国の中央銀行にあたるFRBが2024年のいつごろから利下げを始めるかに大きな関心が集まっています。


 米国景気がソフトランディングするようなら、慌てて利下げを行う必要もないため、2024年後半からの開始になるかもしれません。


 2024年前半早々にFRBが慌てて利下げに走る必要性が生じるのは、景気後退や金融危機など米国経済が非常事態に直面して株価が急落したときでしょう。


 欧米の中央銀行が利下げ方向に動く可能性が高そうな2024年の日本では、日銀がその流れに逆行してまで、マイナス金利解除など積極的な金融引き締めに動けるかどうかに注目が集まるでしょう。


 ただ、すでに10年以上も異次元の金融緩和策が続いているのは、日本がいまだにデフレを完全脱却できず、給料も上がらない時代が今も続いている証拠です。


 そうなると、2023年の日本株上昇に貢献したメガバンクや地方銀行、保険など金融関連株、小売、流通、外食、アパレルといった内需株の多くも、インバウンド需要の恩恵を受ける百貨店、旅行、ホテル業などを除いて再び株価が低迷する恐れもあります。


 できれば2024年に賃金と物価の好循環が続き、日銀が世界的な利下げトレンドに逆行した金利正常化の動きに入っていけることが、日本株にとってベストのシナリオかもしれません。


 気になる円相場に関しても、米国の金利低下による日米金利差縮小で2024年も円高トレンドが続くものの、米国経済が深刻な景気後退に陥らない限り、円高のスピードは緩やかなものになりそうです。


 一時的に1ドル=130円台に突入する場面もありそうですが、120円台前半に達するような急速な円高が進まない限り、株価の急落は一時的なものに終わるでしょう。


 先週の業種別ランキングの上位には化学、機械など景気敏感株がランクイン。


 今年2023年は中国経済の不振や原材料高に苦しんだ景気敏感株ですが、来年2024年は製造業の景気回復に世界的な期待が集まっていることもあり、円高が緩やかなスピードなら見直し買いに期待できそうです。


 また米国の利下げが本当に実施されるようなら、株価が割高で金利が下がるとますます買われやすくなる半導体株などハイテク株に加えて、新興市場のIT系の中小型成長株も2024年は力強く上昇するかもしれません。


 2024年11月5日(火)には米国の大統領選挙も控え、7月の共和党全国大会でトランプ前大統領が共和党の指名候補に選ばれたりすると、株式市場にも少なからず波乱が起きるでしょう。


 しかし、米国大統領選の予備選挙や党員集会が集中する2024年3月5日(火)の「スーパーチューズデー」前後までは、日米ともに株価の上昇に期待が持てる可能性が高そうです。


(トウシル編集チーム)