米イラン第2回和平協議は開催されず、停戦期限も延長されました。これに対しドル円はドル高となりましたが、大きな動きにはならず市場はイラン情勢をめぐる材料に対し反応が鈍くなってきたようです。

来週に控えた日銀・FOMCを前に身動きが取れない中、日銀やFRBの不安材料に対して警戒が必要です。


第2回和平協議延期も市場の反応は鈍化。来週の日銀会合・FOM...の画像はこちら >>

和平協議は開催されず、停戦期限も延長。先行き不透明感で市場は様子見へ

 21日、市場が期待していた米国とイランの第2回和平協議は、停戦期限目前(22日米国東部時間午後8時・日本時間23日午前9時)に開催されないことになり、停戦期限も延長されることになりました。


 この結果を受けて、米株は下落し、原油は上昇し、ドル円はドル高となりましたが、パニック的な動きにはなりませんでした。期限が延長されたことから第2回和平協議への期待が市場にはまだ残っていることもありますが、加えて、イラン情勢を巡る材料に対する反応が鈍くなってきたようです。


 先週16日のイスラエルとレバノン両政府の10日間の一時停戦合意(停戦は米東部時間16日午後5時・日本時間17日午前6時に発効)を受けて、17日、イラン外相が「レバノン停戦合意を受けて、ホルムズ海峡は停戦期間中、完全に開放される」とXに投稿し、トランプ米大統領も「ホルムズ海峡は完全に開放される」と表明したことで、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物価格が80ドル台に急落し、米10年債利回りが4.22%台まで低下したため、ドル円は157円台半ばまで円高に行きました。


 しかし、喜びもつかの間、米国による海上封鎖が続いていることからイラン側はホルムズ海峡を再び封鎖したため、期待されていた第2回和平協議の開催が危ぶまれていたのですが、結局、開催されず、停戦期限も延長されました。


 21日、トランプ大統領はSNSで「パキスタンからの要請を受け、停戦を延長する」と投稿しました。トランプ大統領は「イラン政府が大きく分裂しているという事実を踏まえ、イランが考えをまとめるまでの間、攻撃を保留するよう求められた」とした上で、「協議が終了するまで停戦を延長する」と述べました。


 このトランプ大統領の投稿に対して、イラン側は「停戦延長を要請していない」と伝えています。


 トランプ大統領は、これまでは「延長はしない」と停戦延長に否定的な考えを示しつつ、ディールに到達しない場合は延長してきましたが、今回は停戦の期限を明言しませんでした。5月中旬には米中首脳会談を控えていることから、それまでにイラン情勢を解決したいという思惑が強くなってきたのか、これまでの方針を転換したようです。


 また、SNSに投稿したようにイラン国内が分裂しており、イラン指導部も対立しているもようであるため、待ちの姿勢を取った方が米国に有利な条件で進展すると踏んでいるのかもしれません。


 イラン革命防衛隊などの保守強硬派は、米国によるホルムズ海峡の封鎖が継続されている限り、強硬な交渉姿勢を主張していますが、ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相などの穏健派は米国との交渉や合意に前向きの見方となっているようです。


 5月中旬の米中首脳会談までに第2回和平協議が開催され、終戦合意という楽観的シナリオに向かうのか注目です。最悪の場合は、協議が開催されず(開催されても決裂)、ホルムズ海峡や周辺国に戦火が拡大し、エネルギー価格が上昇して世界経済がエネルギー供給不安に陥って急減速するシナリオです。


 来週の日本銀行金融政策決定会合(4月27~28日)や米連邦公開市場委員会(FOMC:4月28~29日)を前に身動きの取れない状況がまだしばらく続きそうです。


揺れるFRB。タカ派化懸念と次期議長人事に警戒

 21日、ドル円が159円台の円安になったのは和平協議開催への不透明感によるものですが、日本経済新聞が「日銀、4月利上げ見送りへ 中東情勢見極め6月に是非判断」と報じたことも円売り材料となったようです。


 さすがに今のイラン情勢では、日銀も動けないだろうと市場もあまり驚いていないようですが、日銀会合では、イラン紛争終結後のシナリオをどのように描いているのか注目したいと思います。


 同じように米連邦準備制度理事会(FRB)もタカ派に傾きつつある動きが出てきています。17日、ウォラー理事は講演で「中東情勢の混乱が長期化すれば、政策金利を維持せざるを得ない」として追加利下げに否定的な考えを示しました。


 また、原油高によるインフレ再燃の可能性が残っているとして、「市場はリスクを過小評価」していると警告しました。これまで利下げに前向きなハト派と目されてきたウォラー理事ですが、中東情勢を受けてスタンスを変えたようです。


 パウエル議長も利下げに慎重な姿勢を示していることもあり、ハト派のウォラー理事の発言によって市場にはFRBのタカ派化に対する警戒感が広がりつつあります。米株市場はイラン攻撃前の水準に回復するなど楽観的な動きをしていましたが、FOMCで中東情勢を背景としたインフレ再燃リスクを予想以上に発信した場合、株式市場の楽観的な見方にも影響するかもしれません。


 日銀の慎重姿勢が続き、FRBがタカ派化すると、ドル円にとっては再び160円をうかがう展開になるかもしれません。もちろん、和平協議が開催され、終戦に向かい、ホルムズ海峡もスムーズな航行が可能になれば、インフレへの警戒心は日銀もFRBも後退することが予想されます。


 FRBにとっては次期FRB議長という不安材料もあります。21日、次期議長候補の指名公聴会が開かれました。


 公聴会で「誰かの操り人形になるか」との質問に対して、ウォーシュ次期FRB議長は「全くない。トランプ氏の指名は光栄だが、承認されれば独立した立場で行動する。トランプ氏から特定の金利水準の約束を求められたことはないし、仮に求められても決して応じない。そもそも要求は一度もない」とFRBの独立性を強調しました。しかし、全体的には同氏はタカ派と捉えられたようです。


 承認されれば、6月の金融政策から議長となりますが、反対意見もあり、パウエル議長の任期5月15日までに承認されない可能性もあります。


 パウエル議長は進退については、「捜査が透明性をもって完全に終わるまで理事会を離れることはしない」と述べ、5月に議長の任期終了後も理事として残る意向を表明し、また、後任に指名されたウォーシュ氏の承認が遅れた場合には議長代行として残ると明言しています。


 FRBに対する不安材料はタカ派化だけでなく、新議長の就任時期や金融政策などにも留意しておく必要があります。


(ハッサク)

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