日銀は6月決定会合で1.0%への利上げを決定する見込みですが、あわせて現在実施中の国債買い入れ減額計画の中間評価を行い、2027年4月以降の買い入れ方針を公表します。現在の計画では2027年3月に月額2兆円程度まで買入額が縮小しますが、その後どうするのか。

長期金利を上昇させず、財政従属とも言われないアイデアを考えました。


日銀6月会合、利上げに加えて国債買い入れ方針の発表にも注目!...の画像はこちら >>

日銀は6月金融政策決定会合(MPM)で国債買い入れ減額計画の中間評価を実施

 日本銀行は6月15~16日に開催する金融政策決定会合(MPM)で1.0%への利上げを決定すると見込まれますが、あわせて現在実施中の国債買い入れ減額計画に対する中間評価を行い、2027年4月以降の国債買い入れ方針を公表する予定です。


 日銀は現在、異次元緩和で膨張したバランスシートを圧縮すべく、国債買い入れ減額に取り組んでいます。減額に当たっては、市場が混乱しないよう「国債買い入れ減額計画の中間評価」で影響を点検しながら、先行きの減額計画を明らかにしたうえで実施しています。


 一昨年から始めたこの措置によって、月額6兆円を超えていた国債買入額は、今年1~3月に月額2.7兆円まで縮小し(図表1)、さらに来年1~3月にかけて、月額2兆円程度まで縮小していく見通しです。


<図表1 日本銀行の国債買入額>
日銀6月会合、利上げに加えて国債買い入れ方針の発表にも注目!(愛宕伸康)
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 これを受けて、ピーク時は600兆円近かった(2023年11月:597.5兆円)日銀の長期国債保有残高は、2026年3月末現在、約530兆円まで縮小しています(図表2)。


<図表2 日本銀行の長期国債保有残高>
日銀6月会合、利上げに加えて国債買い入れ方針の発表にも注目!(愛宕伸康)
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 6月MPMでは、現在進行中の国債買い入れ減額計画の評価を行うだけでなく、2027年4月以降の国債買い入れ方針も新たに公表される予定です。このところ長期金利が上昇傾向を強めていることもあり、市場は日銀がどのような方針を打ち出すのかに注目しています。


2027年4月以降の国債買入額は月額2兆円程度で横這いか

 というのも、国債買入額を2兆円からさらに減額するとなれば、国債市場の需給悪化が懸念され、長期金利がますます上昇するリスクがある一方、高市政権の財政拡大路線が意識されるなかで国債買い入れの縮小を停止すれば、政権に配慮したのではないかと受け止められ、やはり長期金利が上昇するリスクがあります。


 日銀は難しいアナウンスが求められているわけですが、財政拡大との関連はひとまず脇に置くとして、筆者は2兆円程度で横這いとするのが妥当ではないかと考えています。


 図表3は、昨年6月11日のレポート(「日銀は国債買い入れの減額ペースを緩めるか~長期金利との付き合い方」)で紹介したグラフをアップデートしたものですが、簡単に説明すると、前期末の日銀の長期国債保有残高に、月額2兆円を前提とする国債買入額を足し、日銀の保有長期国債の平均残存期間から割り出した償還額を差し引くことによって算出した、長期国債保有残高の先行きになります。


<図表3 日本銀行の長期国債保有残高の先行き>
日銀6月会合、利上げに加えて国債買い入れ方針の発表にも注目!(愛宕伸康)
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

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日銀は国債買い入れの減額ペースを緩めるか~長期金利との付き合い方


 日銀の長期国債保有残高の2025年の実績を昨年6月時点の推計と比べると、ほぼオントラックであり、先行きの姿も結果的にほとんど変わりませんでした。


 すなわち、月額2兆円の国債買い入れを続けていった場合、日銀の長期国債保有残高が300兆円を割り込むのが2032年、200兆円を割り込むのが2040年と、かなり時間はかかりますが、最終的に160兆円台に収斂することになります。


 そもそもどういった水準まで国債保有残高を落としたいのか、その水準や考え方を日銀が全く示していないもとで市場が不安定化するのを避けるためには、このくらいの穏当な縮小ペースが妥当ではないかと考えています。


 いずれにせよ、前述したとおり、2027年4月以降の国債買入額を月額2兆円程度で横這いにするとしても、アナウンスの仕方次第で長期金利が上昇するリスクがあるわけですから、日銀としては打ち出し方に何らかの工夫が必要かもしれません。


市場に余計な思惑を生じさせないアイデア~アンケートのすすめ~

 というわけで、以下のようなアイデアを考えてみました。参考にしたのは、海外中銀のやりかたです。


 海外中銀では、バランスシートの資産側にある国債の保有残高をどういった水準にするかではなく、先に負債側にある準備預金の最適な水準を金融政策に与えられた使命に照らして決定し、その反対側でどういう資産をどのくらい保有するか検討しています。


 準備預金の最適な水準とは何かというと、「中央銀行が金融政策できちんと短期金利を誘導目標にコントロールでき、そして短期金利を不安定化させない程度に潤沢な準備預金の最小値」と整理することができます。


 その水準のことを中央銀行の世界ではAmple(十分な)水準と呼んだりしますが、要するに、物価安定という使命を実現するために短期金利が目標水準に誘導でき、かつ金融システムを不安定化させないために十分な準備預金の量のことです。


 これを準備預金の需要曲線を推計することによって算出するケースもありますが、推計によって特定の値に絞るのが困難なことから、例えば米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行(BOE)では、推計だけでなく、望ましい準備預金水準を直接民間銀行から聴取することによってAmple水準を探るということをやっています。


 このやり方の最大の利点は、中央銀行のバランスシートの規模を中央銀行法と紐づけて決めることができ、かつ財政従属を疑われるような恣意性が排除できることです。


 資産側にある国債をどれだけ保有するのか、資産側だけで決めようとすると、当然、中央銀行としてどれだけ長期国債を持つのが適切なのか、長期金利への影響をどこまで配慮すべきかなど、かなり難しい問題に突き当たることになります。


 そこで、6月MPMで実施する中間評価では、とりあえず2027年4月以降も暫定的に国債買入額を月額2兆円程度にするとしたうえで、取引先金融機関に対して望ましい準備預金水準を聴取するアンケート調査を開始すると宣言してはどうでしょうか。


 その結果を踏まえてAmpleな準備預金を特定し、その見合いで資産側の長期国債保有額を決めると説明すれば、物価安定と金融システムの安定という日銀に与えられた使命との整合性が確保でき、財政従属だという批判からも逃れることができます。


日銀の長期国債保有額と当座預金の関係~逆ざやの発生はむしろ健全の証~

 ここで、準備預金(当座預金)と長期国債保有額との関係について、簡単に補足しておきましょう。


 上で、バランスシートの負債側にある準備預金(当座預金)を決めて、その見合いで資産側にある長期国債の額を決めれば良いと述べましたが、両者には密接な関係があります。


 例えば、日銀が国債買い入れを行う場合、金融調節オペを通じて金融機関から長期国債を購入するわけですが、その代金は購入した相手の金融機関が日銀に設けている口座(当座預金)に振り込まれます。


 金融機関がその代金を当座予期から引き出して別の用途に使えば、日銀の長期国債保有残高と当座預金は乖離しますが、両者は概ね同じような動きをしていることが、図表4から確認できます。


<図表4 日銀の長期国債保有残高と当座預金、国債利息と利払い>
日銀6月会合、利上げに加えて国債買い入れ方針の発表にも注目!(愛宕伸康)
(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 国債買い入れの額が先に決まっている場合は、その結果として当座預金が決まってきますが、先に当座預金の目標額を決めたとしても、量的緩和と同じように、当座預金が目標額になるよう国債買い入れを行えば良いということになります。


 ちなみに、5月27日に日本銀行の第141回事業年度(2025年度)の決算が発表されましたので、図表4の直近値はそれを使っていますが、2026年3月末の長期国債保有残高は530.9兆円、当座預金は459.7兆円となっています。


 また、その保有している長期国債から得られる2025年度の「国債利息」は2.51兆円、当座預金に課された付利(政策金利と同じ)によって発生する「補完当座預金制度利息」が2.71兆円ですので、最近の利上げに伴って2025年度は利払いが利息収入を上回る逆ザヤが発生したことになります。


 利上げ局面では、利上げによって利払いは即座に膨らむ一方で、国債利息は保有する長期国債の入れ替えがゆっくり進むことから急には拡大しません。このため、逆ザヤが発生するわけですが、これは欧米中銀でも当たり前のように起きている現象です。それによって中央銀行の収益は痛みますが、独立して金融政策を運営している健全な中央銀行の証と見ることができます。


(愛宕 伸康)

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