63円以上の切手やはがきを出すと押印してもらえる小型印が、JR北海道の周年を迎えた路線とコラボ中。根室本線など沿線52の局で、駅舎や列車などがデザインされた消印がもらえます。

この企画の意図を、局長はじめ関係者に聞きました。

郵政創業150周年を機に、同じく周年のJR路線と

 旅行貯金を知っていますか。旅先の郵便局を訪れそこで預入れなどをし、その証拠として通帳に局のゴム印を押してもらう趣味のこと。楽しみ方としては「駅スタンプ」に似ています。2021年11月現在、北海道の道東エリアでは、旅行者を郵便局に引き付けるべく、JR根室本線 白糠~釧路間開通120周年、釧路~根室間(花咲線)全通100周年、釧網本線全通90周年を記念し、郵便局の最寄り駅などがデザインされた「小型印」(記念消印)押印サービスが、沿線52の局で実施されています。

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釧路~根室間のJR花咲線(根室本線)にある別保駅(画像:写真AC)。

 ここまで広い地域の郵便局を巻き込んでの展開は珍しく、かなりインパクトがあるのではないでしょうか。そこで企画の意図を、立ち上げから携わっているイオンモール釧路昭和内郵便局局長の前川英樹さんに教えてもらいました。

 前川さんによれば、企画発案の背景には「道内の無人駅や路線が廃止されている現実」があるとし、「根室本線、釧路本線も決して他人事ではない。ちょうど郵政創業150年を迎えた2021年のタイミングで郵便と鉄道の密接な歴史を振り返り、改めてその価値を再発見すべく実現させました」と語ります。主要都市に郵便局が設置された1875(明治8)年当初、船や騎馬、人力が道東における郵便輸送の担い手でしたが、その後、鉄道網整備に伴って飛躍的に送達日数が早まり地域の発展に貢献するなど、郵便と鉄道は古くから密接に関係しています。

 また、沿線52局で網羅的に実施した理由を伺ったところ「郵便、鉄道の一番の魅力はネットワーク性です。

拠点の駅、拠点の郵便局だけではなく、限界集落といわれる地域にも、かつてはたくさんの人々の営みがあり、それを支えた鉄道と郵便の歴史を後世に伝える義務があると考えています」と答えてくれました。

コミュニティスペースの役割も持つ郵便局

「旅行者にとって郵便局は非常に親和性が高い」と語るのは、小型印のデザインに協力した釧路市立博物館学芸員の石川孝織さん。「郵便局、特に過疎地域の郵便局は、高齢者を中心とした地域コミュニティの維持、セーフティネットの役割を果たすとともに、来訪者に対し、地域へのゲートウェイとして機能している」といいます。

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釧路市内のフィッシャーマンズワーフ郵便局では、かつて根室本線の貨物線にあった浜釧路駅の小型印を押印してもらえる(蜂谷あす美所蔵)。

 旅行者として各地を訪ねても、駅が無人であったり商店が廃業していたりと、地元の方と触れ合うのが難しいなか、少なくない旅行者が地域の郵便局に立ち寄り「その土地の見どころ」や「おすすめの飲食店」を尋ねているそうです。さらに郵便局を訪ねた人たちが、地名や地域を記憶に残してくれる、あるいはSNSでの発信に対する期待も大きいとしています。

 今回の企画は2021年7月から順次始まっており、前川さんによれば「郵便局に立ち寄った沿線地域住民の方々から、当時の思い出話が集まり、語り部が誕生している」とのこと。すでに沿線地域では「次なるイベント」への期待も高まっているようです。

 ちなみに小型印は63円以上の切手やはがきのほか、手持ちのノートやイベントに合わせて各局で配布している記念台紙に所定の切手を貼れば押印してもらえます。でもせっかくなら「旅先からの便り」を出してみたいところですね。

 また、指定7郵便局の小型印および7駅の「北の大地入場券」を局で配布されている専用台紙に集めると、150名に特製缶バッジがプレゼントされるキャンペーンも始まっています。多くの郵便局は平日のみの営業で、域外から網羅的にめぐろうとするとハードルがかなり高めですが、収集家の方はぜひチャレンジしてもよいのではないでしょうか。