ショッピングモールなどの出口で「左折のみ」の表示があるにもかかわらず、右折を強行しようとするドライバーもいます。どのような心理が働いているのでしょうか。
都市部のショッピングモール駐車場の出口などで、公道に出る際、「左折のみ」と表示しているケースは少なくありません。右折で公道に出ると危険度が増すことに加え、渋滞が起きやすいことから「左折のみ」になっているわけですが、しかし、こんな場面で「意地でも右折する!」とばかりに道を塞いでしまうクルマも。結果的に、駐車場の後続車たちは大行列。場合によってはすぐ目の前の公道を塞いでしまうこともあります。この「絶対右折するマン」たちは果たしてどんな運転心理を抱いているのでしょうか。
駐車場の出口でたびたび見る「俺は絶対右折する!」の運転者の心理に迫ります(画像:写真AC)
その心理状態を探る前に、まず大前提として「左折のみ」「右折禁止」といった駐車場の表示、実は道路交通法で定められた標識ではないため、仮に従わなかったとしても道路交通法違反にはならない――交通心理士で近畿大学物理工学部准教授の島崎 敢先生はこう解説します。
「コンビニのレジ待ち列などもそうですが、ああいった表示は店や運営側がそう促しているだけで、法律に明記されていたり罰則があったりするわけではありません。ただし、これを拡大解釈して『だから何をやっても良いのだ』というのは不適切です。仮に法的ルールに抵触しなかったとしても、『左折のみ』『右折禁止』といったルールは人々が社会生活を円滑かつトラブルなく営むために設けられているものです。人間は社会の中で生きていて一人では生きられないので、円滑な社会生活のためにも配慮は必要なのではないでしょうか」(島崎先生)
一方、こういった場合、杓子定規的に解釈するのも良くないとも島崎先生は言います。
「このようなトピックでは、広い視野で『交通の安全と円滑』のようなルールの本来の目的を意識することも大切です。
こういった大前提の話の上で、「絶対右折するマン」の運転心理についても聞きました。島崎先生は「あくまでも一つの解釈・推測である」としながらも、こんな運転心理があるのではないかと言います。
「右折を強行するドライバーの心理は、いくつかの可能性が考えられます。まず、『そもそも表示に気付いていない可能性』。そして、『目的地が右方向にある場合、左折して迂回するのは時間も燃料も余計にかかるため、それを避けたいという意識が働いていること』。特に権利意識、コスト意識の強い人の場合、この傾向が強まるのかもしれません。また、これは極論ですが、『遠回りしないほうがCO2排出が減り、地球環境には良い』という理屈も成り立つため、『環境を考えれば迂回するより近道を目指すほうが良いだろう』と主張する人がいないとも限りません」(島崎先生)
これら島崎先生が挙げたうち、筆者は「目的地が右方向にあるのだから、早くそこに行きたい」「それを実行するためには周囲の迷惑は二の次だ」といった心理が最も多いのではないかとも思いました。
「絶対右折するマン」に遭遇した際の気の持ちようと、モヤモヤ解消術とは?いずれにしても、こういったクルマと遭遇し、渋滞などに巻き込まれると、なんともモヤモヤした気持ちを抱くのも正直なところです。島崎先生はこういった際の対策についても話してくれました。

「左折のみ」「右折禁止」は厳密には道路交通法で決められていることではない?(画像:写真AC)
「こういったクルマのせいで渋滞などに巻き込まれた場合、残念ながら『待つしかない』というのが現実的な選択となります。確かに前のクルマの行為は適切とは言えないかもしれませんが、だからといってクラクションを鳴らすなどの行為は、さらなるトラブルを引き起こす可能性があるので絶対にやめたほうが良いです」(島崎先生)
島崎先生が言う対策術はまさに正論です。
島崎先生は、そんな場合の頭の切り替え方も最後に教えてくれました。
「動物行動学の面白い実験例があるので、参考にしてみてください。エサの周りに、コの字型の柵を設置します。柵の開いていない側に動物を置くと、犬くらいの知能を持つ動物はエサの場所まで行くのに、一度エサから離れる行動を取って迂回してエサに辿りつくことができるそうです。一方、鶏などの知能が低い動物は、目の前のエサに固執し、『遠回りする』『迂回する』という選択肢を取ることが難しいとされています。頑固に右折にこだわるドライバーを見たとき『この人は目の前の目的地しか見えていない鶏並み人なのかもしれない』と思えば、イライラせずに済むかもしれませんね(笑)」(島崎先生)