F-35B空母で「バイラクタル」も運用

 イタリア海軍のジュゼッペ・ベルッティ・ベルゴット参謀総長が2026年3月25日、トルコのバイカル社が開発する艦載型UAS(無人航空機システム)「バイラクタルTB3」を導入し、同海軍の空母「カブール」で運用する方針を明らかにしました。

【翼が摩訶不思議!?】これがF-35Bと一緒に運用される「無人機」です

「カブール」はイギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母などと同様、最新の第6世代戦闘機であるF-35Bの運用能力を備えています。

かたやバイラクタルTB3は、ウクライナ戦争で有用性を実証した「バイラクタルTB2」の艦載機型で、長距離偵察から攻撃までこなす優れたUASですが、ガソリンエンジンで飛行するレシプロ機なので、滞空性能などはともかく、速度や運動性能ではF-35Bには遠く及びません。

 早晩アメリカ海兵隊などから退役するAV-8B「ハリアーII」を除けば、F-35Bは現時点において世界で唯一、カタパルトを持たない艦艇から運用できるSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)戦闘機です。性能でも基地やカタパルトを備えた空母で運用される戦闘機に引けを取らないF-35Bを保有しているにもかかわらず、イタリア海軍はなぜバイラクタルTB3の導入を決めたのでしょうか。筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は、その理由は3つあると思います。

 ひとつ目の理由は、イタリアのF-35Bの保有数です。

 イタリアは当初、62機以上のF-35Bの導入を計画していましたが、イタリアの財政状況やF-35の価格高騰により、発注数は段階的に削減され、2026年4月の時点では空軍と海軍あわせて30機程度の導入が見込まれています。

「カブール」には最大12機のF-35Bが搭載できます。同艦がドッグ入りなどで活動できない場合、臨時にF-35Bを運用する空母としての役割を果たす強襲揚陸艦「トリエステ」も、「カブール」よりやや少ない程度のF-35Bの運用が可能です。

 イタリアの空軍と海軍は頻繁に共同訓練を行っており、イタリア空軍のF-35Bは有事の際には海軍艦艇からの運用能力を獲得するものと思われますが、修理などで飛べない機体が生じることを考えれば、30機程度という機数はやや心もとないと言えます。

 前にも述べたようにバイラクタルTB3は速度性能や運動性ではF-35Bに到底及ばないものの、「ISTAR」(情報収集・監視・偵察・攻撃目標補足)を行う航空機に求められる長時間の滞空性能などではF-35Bを上回っており、組み合わせて運用すれば、F-35Bの能力をさらに引き出せると考えられます。

F-35Bにはない能力を補完できる!

 二つ目の理由はF-35Bで運用可能な兵装にあります。

 F-35Bのウェポンベイ(胴体内兵器倉)には、航空自衛隊も導入した長射程対艦ミサイル「JSM」を搭載することができません。

このため現時点ではF-35Bに搭載可能な長射程兵器はありません。

 JSM(最大射程280km以上)には及びませんが、バイラクタルTB3は最大射程55kmの超音速空対地ミサイル「UAV-122」の発射試験にも成功しており、イタリア海軍が望むのであれば、同海軍は艦上機から運用する長射程攻撃兵器を手にすることができると考えられます。

 3つ目の理由はイタリアの経済産業政策にあります。

 イタリアの防衛大手企業のレオナルドは2025年3月に、バイラクタルTB3を開発したトルコのバイカルとUASを開発・製造する合弁会社を設立しています。

 前に述べたベルゴット参謀総長は、バイラクタルTB3の導入がレオナルドを通じて行われると述べており、バイカルのハルク・バイラクタル最高経営責任者(CEO)も、イタリアに納入されるバイラクタルTB3はイタリア北部のロンキ・デイ・レジオナーリに所在する施設で製造されるだろうと述べています。

 この話の真偽のほどは定かではありませんが、レオナルドの強みの一つであるレーダーや航法システムなどが、バイラクタルTB3に統合されることになる可能性もあるようです。どのような形でレオナルドが関与するにせよ、イタリアの国内雇用や産業振興にとってプラスとなることは確かだと思います。

英海軍も追随 海自の動向は?

 クイーン・エリザベス級空母でF-35Bを運用しているイギリス海軍は、現在同級空母で早期警戒(AEW)の任にあたっているマーリンMk.2ヘリコプターのAEW型を2029年いっぱいで退役させて、AEW機能を持つ固定翼機型UASで更新する計画を進めています。

「F-35と“無人機”どっさり空母」誕生へ…なぜ共存? 性能...の画像はこちら >>

「DSEI Japan 2025」で展示されたSTOLキットとソノブイポッドを装着した「シーガーディアン」の大型模型(竹内 修撮影)

 日本の防衛装備庁は2025年1月15日、「艦上運用可能な早期警戒機の検討」を行う事業者の一般競争入札を行っていますが、仮に海上自衛隊が艦上運用可能な早期警戒機を導入することになった場合、AEW機能を持つ固定翼機型UASも有力な候補となるはずです。

 またアメリカのUASメーカーであるGA-ASI(ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ)は、海上自衛隊が導入を決定した固定翼機型UAS「シーガーディアン」用に、短距離離着陸(STOL)性能を高めるキットと、潜水艦を捜索する「ソノブイ」を投下するポッドの開発を進めています。

 海上自衛隊に、F-35Bを艦上運用するための改修を行っているいずも型護衛艦で固定翼機型UASを運用する構想があるのかはわかりませんが、同志国であり、F-35Bを運用するイタリア、イギリス両海軍の動向や、海上自衛隊の作戦柔軟性を向上させる技術の開発が進んでいることを鑑みれば、海上自衛隊もいずも型で固定翼機型UASを運用することを、検討すべきだと筆者は思います。

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