JR九州唯一の自社設計新幹線「800系」

 JR九州が唯一、自社で設計した新幹線が800系です。2004(平成16)年の九州新幹線新八代~鹿児島中央間の開業に合わせて製造されました。

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 当時、東海道・山陽新幹線の主力は700系で、JR九州は当初「700系をマイナーチェンジした車両」の導入を検討していました。しかし、当時のJR九州の石原進社長が「九州の顔となる車両なのだから、オリジナルの顔にすべき」として、方針が変わります。

 車両デザインを担当した工業デザイナーの水戸岡鋭治氏は、日立製作所で700系デザイン時に不採用となった前頭部デザインを見せてもらい、それをアレンジすることで丸みを帯びた前頭部としてまとめました。

 水戸岡氏によると「初代新幹線0系の系譜を受け継いだ」としつつ、ヘッドライトは縦配置とします。メンテナンスなどの理由で反対されるも、水戸岡氏は「ヘッドライトの交換頻度」を根拠に反論し、独特の前頭部が誕生しました。

 なお2009~2010(平成21~22)年にかけて増備された800系1000・2000番台はヘッドライトに立体的なふくらみが付けられ、金魚の出目金のような印象になっています。

 走行システムとしては700系とほぼ同じですが、パンタグラフはカバーなし。九州新幹線内の急勾配に対応するため全車両が電動車であり、起動加速度も2.5km/h/s(0番台)~2.61km/h/s(1000・2000番台)と、700系の2.0km/h/s(0番台)より向上しています。最高速度は260km/hで、山陽新幹線には乗り入れません。

 余談ですが、800系の1000・2000番台はN700系の登場後に製造されており、台湾新幹線向けの700T型を除けば、「700系の走行システム」を採用した車両としては、最後に製造された700系の系譜に連なる車両ともいえます。

 デザインコンセプトは「日本・九州のアイデンティティ」で、今までの新幹線よりも明るい白を採用した車体に、JR九州のコーポレートカラーである赤をまといます。屋根上も赤系の古代漆色で、日の丸のような配色で「日本の和」を表現しています。

 内装も九州にこだわったデザインで、デッキ仕切り壁は、鹿児島産の楠を加工したもの。側窓のブラインドは木製のすだれで、鹿児島産の山桜が使われています。洗面台の仕切りもカーテンではなくのれんで、八代産のイグサを編んだものです。

進化した内装と検測の役割も担う800系

 座席は普通車のみのモノクラス編成です。2+2列配置の座席で、アルミフレームに難燃処理をしたプライウッド(合板)を背面や肘掛けに採用しています。クッション部分には西陣織が採用され、1・4号車は深いモスグリーンの「緑青(ろくしょう)」と座席背面の木製部分は「桜色」。2・6号車は濃い藍色の「瑠璃(るり)」と座席背面の木製部分は「柿渋色」。3・5号車は赤錆色「古代漆(こだいうるし)」と座席背面の木製部分は「楠色」といったように、こだわり抜いた内装です。

 なお、乗車時間が短いという判断で、座席はインアームテーブルのみで背面テーブルはありません。座席の座り心地は、クッション性はかなり優れていますが、背もたれがやや直線的で背中のおさまりは標準的です。肘掛けが細めな点は、好みが分かれるかもしれません。

 なお、客室内は白、デッキは黒を基調とし、強いコントラストが印象的な車両です。

 2009~2010(平成21~22)年にかけて増備された800系1000・2000番台は、さらに凝った内装が展開されています。座席は座面を35mm深くし、着席時の背もたれ角度を7度から8度に変更しています。荷棚下面と窓枠下テーブルも木製となりました。

 最大の特徴はデッキ壁面で、2~5号車の壁には金箔が張られています。圧倒的なインパクトといえます。

 座席も1号車が「赤の唐草模様の西陣織」、2号車が「ワインレッドの革張り」、3号車が「カーマインのツイード」、4号車が「アイビー柄のゴブラン織」、5号車が「オレンジ系のツイード」、6号車が「赤のアイビー柄の西陣織」と、号車ごとに異なる素材や模様が採用され凝った仕上がりです。

 また、座席高さを4cm低くし、天井にも車内案内表示器を設置することで、情報の視認性を高めています。なお、1000番台は軌道検測装置、2000番台は電力、信号、通信検測装置を備えており、従来の新幹線の計測車「ドクターイエロー」のような車両を製造せず、営業車両で検測を行っています。

 800系は現在、各駅停車型の「つばめ」と、速達型の「さくら」で運行されています。全車が普通車でグリーン車が存在しないことから、容易に見分けることが可能です。

 原型となった700系の引退が始まる中、800系も近く置き換えが始まると考えられます。西九州新幹線も含めて、N700系列が投入されている現状では、JR九州オリジナルの顔を持つ新幹線は、この800系が唯一の存在となるでしょう。

事故などなく、最後まで走り続けてほしいものです。

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