無知かルール無視か 外国人労働者の交通トラブル

 廃材などを過剰に積んだトラックを目にすることがあります。運転席を見ると、外国人労働者であることも多いです。

埼玉県などでは、在日クルド人と結びつけられた「クルドトラック」「クルドカー」の過積載をはじめとする交通ルール違反なども問題視されています。

【木材だけじゃない】かなり怖めな「めちゃ積みトラック」(写真)

 こういった問題の実例と、国や自治体が対策すべきことについて、元大型トラックドライバーの交通心理士で、近畿大学・生物理工学部の島崎 敢教授に聞きました。

「外国の方の中にもきちんとルールを守って真面目に仕事をしている人はいますし、逆に日本人の中にもルールを守っていない人はいます。これは属性で見る話ではなく、個別の行為で見るべきことです。いけないことをしていれば、それは何人であってもダメだというのが、法治国家のあるべき姿だと思います」。これを大前提としながらも、現状、外国人労働者による交通トラブルの原因について島崎教授は次のように話します。

「一般論で言えるのは、やはり日本における交通ルールへの理解不足があるだろうということです。国によって法律は異なりますし、それがどの程度厳格に守られているかも違います。異なる文化で育ち、異なる環境で免許を取得した人が、自分の過去の経験に引きずられるのは人間として当然のことです。それを放置して良いかというとそうではなく、しっかりルールは守ってもらわなければなりません」

こう話し、「ルールを意図的に守らない背景には、いくつかのパターンがあるように思います」と解説します。

3つのパターンで考える

「第一に、そもそもルールを知らないというケースが挙げられます。これが原因であれば、ルールを教えてあげれば守られるようになります。

 第二に、ルールを守ると経済的に損をするという判断が働いている場合です。違反のリスク――取り締まりや罰則――と天秤にかけても、破った方が合理的だと判断されてしまうのであれば、取り締まりの強化が有効です。

 第三に、『みんなが守っていないから自分も守らない』という心理です。日本人ドライバーの多くがルールを守っている以上、周囲を見れば守るべきだとわかるはずではあります。ただし、自分たちが日本社会の仲間ではないという意識が強ければ、『日本人がどうしているか』が行動の基準になりにくい可能性はあります。そうだとすれば、地域社会から孤立させないことも重要になってくるかもしれません」(島崎教授)

ナンバープレートをよく見てみると

 さらに、報道でよく見る「外国人労働者が交通トラブルを起こすクルマ」のナンバープレートにも注目すべき、と島崎教授はいいます。

「倒れるんじゃないか」ってくらい積んだトラック、なぜ? 無く...の画像はこちら >>

箱ダンプの上部に長い部材を積んではみ出させている(画像:写真AC)

「交通トラブルを起こしたり、ルール違反をしたりする外国人労働者のトラックの多くが白ナンバー(自家用)で走っているという点です。

 誤解のないように言っておくと、白ナンバーのトラック自体は何も悪いものではありません。自社の荷物を自社の車両で運ぶ場合は白ナンバーで合法であり、建設業者のダンプや産廃収集運搬業者のトラックなど、白ナンバーで適正に運行されている車両は世の中にたくさんあります。

 ただ、緑ナンバー(事業用)と白ナンバーでは、事業者に課せられる管理体制に大きな差があります。緑ナンバーの事業者は貨物自動車運送事業法の規制を受け、国家資格を持つ運行管理者の配置、出発前・帰着後の対面点呼、乗務記録の管理、3か月ごとの車両点検整備など、厳格な安全管理が義務づけられています。違反があれば国土交通省の監査や行政処分の対象にもなります。

 これに対して白ナンバーの事業者は、こうした管理義務の多くが課されていないか、求められる水準が低く、安全運転管理者の選任義務はありますが、運行管理者ほど厳格な制度ではありません。つまり、ドライバーへの教育や安全管理が事業者の自主性に委ねられやすい構造があるわけです。

もちろん、道路交通法上の過積載やはみ出し積載の禁止規定はナンバーの色に関係なく適用されますから、白ナンバーだから過積載が許されるということは一切ありません。

 しかし、管理体制が緩くなりがちな構造の中で、結果としてルール違反が見過ごされやすい環境が生まれている面はあるのではないかと思います」(島崎教授)

 こういった様々な要因が絡み合い、外国人労働者の交通トラブルや交通ルール違反を生み出している中で、すべき対策について島崎教授はこう解説します。

「すぐにできる対策として、まず取り締まりをしっかり行うことが基本です。また、ルールの理解を促す取り組みも大事です。

 しかし、これらと同時に、ネガティブな規制だけでなく、ポジティブな方向にも目を向けるべきだと思います。真面目にやっている業者がきちんと評価され、社会に受け入れられるような仕組みがあるべきだとも思います。

 大事なのは、ルールを守って真面目に働く人は国籍を問わず働きやすく、ルールを破る人は国籍を問わず働きにくい――そういう社会にしていくことではないでしょうか。それが、安全を守りながら社会を維持していくための正しいあり方だと思います」(島崎教授)

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