熊本県西部にある天草諸島。ここにはプロペラ旅客機1機のみで運用されていることから、「日本一小さな航空会社」として知られている天草エアラインが拠点としている天草空港があります。
天草空港は全長1000メートルの滑走路が1本しかない小さな空港です。天草エアラインはここを拠点に地域の交通ライフラインとして機能しています。
2026年3月には、“空の日”に「天草空港 空の日フェスタ」が開催。ここで開催された空港イベントは、羽田空港や関西空港のような大空港と比較すると小さいものでしたが、逆に天草空港らしい特徴も感じられる内容となっていました。
本イベントでは、空港に隣接する広場が会場となり、そこに天草エアラインなどの企業・団体がブースを構えたほか、地元の飲食・特産品の販売も行われており、空港イベントというよりも、フェスタの名前のとおり地域のお祭り的な内容となっていました。
一方で、空港での開催ということで、空に関するイベントも実施されました。
天草エアライン機を利用したマーシャリング体験、空港滑走路を歩くランウェイウォーク、陸上自衛隊目達原駐屯地から飛来したAH-64「アパッチ・ロングボウ」攻撃ヘリコプターの機体見学会、管制タワーの見学会がそれぞれ行われました。空港施設内ということで保安上の理由から事前申込者のみ参加可能でしたが、航空機や空港施設を間近で見ることができるこれらイベントは、早々に募集枠が埋まるほど盛況だったようです。
こうした空の日イベントが行われるのは全国の空港では珍しくありませんが、ココで見られたのは、天草エアライン機が、この地域そのものに溶け込んだ存在であるということです。
愛称で呼ばれる旅客機天草エアラインの機体は、欧州ATR社のターボプロップ旅客機「ATR 42-600」です。この機体にはイルカをモチーフにした塗装がされ、「みぞか号」の愛称で親しまれています。航空会社の社員はもちろんのこと、地元民やイベント取材に来た地元メディアの人々も、旅客機のことをATR 42-600という型番ではなく、「みぞか」の愛称で呼んでおり、正式な型番で呼ぶ人の方が少数派と思えるような印象がありました。
「みぞか号」が天草空港のマスコット的な存在になっているのは間違いないようです。
一方で、そんな「みぞか号」は本イベントでも主役となるべき存在だと思いますが、今回のイベントでは空港での機体展示はありませんでした。じつは、天草エアラインの保有機はこの「みぞか号」1機だけであり、展示機を用意するということは、航空会社そのものの運休を意味します。
「みぞか号」を用いて天草エアラインは1日10便を運行しており、主要路線の天草空港~福岡空港線以外にも、熊本空港や大阪の伊丹空港にも便があります。各空港の滞在時間は30分程度と非常に短く、文字通りに飛び回るような高密度な運行スケジュールとなっています。
「みぞか号」を使ったマーシャリング体験も、福岡発天草着のAMX102便の着陸に合わせて行なわれていました。
地元や推し活に支えられた航空会社空港開催ながらも飛行機を見る機会の少ないイベントでしたが、会場には地元の家族連れなどが訪れていました。その理由は空港イベント自体の求心力というよりも、この空港が日頃から地元の交通インフラとして利用されているためだといえるでしょう。
天草エアラインの年間利用者数は約6万人で、このうち天草空港発着ベースでは約4万人。この内約30パーセントが島内(天草市、苓北町、上天草市)利用者となっています。
天草地域は正式には天草諸島と呼び、現在では道路が開通して車で移動することができますが、地理的に簡単に往き来できる場所ではありません。熊本市内から天草市内までは有料道路を使って2時間程度もかかり、南部の牛深方面では4時間も掛かります。
仕事、医療、行政手続きなどで、地元の方々が天草エアラインを利用する機会は多く、会社側も「天草住民割引運賃」という地元割制度を用意しており、天草エアラインは地元経済と生活のための重要なライフラインともいえる存在なのです。
天草空港には大空港のような派手さはありませんでしたが、その小ささゆえに航空会社、地域、利用者の距離が驚くほど近く、イベント会場で親しまれていた「みぞか号」という愛称は、この航空機が単なる交通手段ではないことを象徴しているといえるかもしれません。

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