一般的に、車体が小さいクルマほど小回りが利くと思われがちですが、クルマにはそれぞれ「最小回転半径」なる数値が存在。車体の大きさの割に最小回転半径が比較的大きい、あるいは小さいクルマもありますが、この数値はどう認識すればよいのでしょうか。
小回りが利くクルマとは、どのようなものでしょうか。車体が小さいほど有利と思うかもしれませんが、クルマのカタログなどには、この目安となる数値が記載されています。
ハンドルをいっぱいに切って旋回した際、外側にある前輪の中心が描く円の半径を「最小回転半径」という。写真はイメージ(画像:Miroslav Beneda/123RF)。
それは「最小回転半径」と呼ばれる数値で、ハンドルをいっぱいに切った状態で旋回したときに、外側にある前輪の中心が描く円の半径をいいます。
例を挙げれば、日産「マーチ」は4.4m、トヨタ「プリウス」は5.1m(一部グレード除く)、ホンダ「ステップワゴン」は5.4mと、小さいクルマほど最小回転半径も小さくなる傾向です。しかし、「プリウス」よりも250mm以上短い(幅は40mm大きい)フォルクスワーゲン「ゴルフ」が5.2mだったり、SUVはほかのタイプと比較すると、全長や全幅の割に最小回転半径が大きい傾向だったりします。
この数値は、実際の運転でどう認識すればよいのでしょうか。たとえば、最小回転半径が5mの車種は、「自車から5m先にある壁に当たらず曲がり切れる」などと考えてよいのでしょうか。クルマの「曲がる」機能を担うステアリングや足回りのパーツを製造するNTN(大阪市西区)に聞きました。
――最小回転半径が5.0mならば、自車から5m先に壁があるとして、それに当たらず曲がり切れると考えてよいのでしょうか?
はい。ただ実際にはもっと短い距離で曲がれます。
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ちなみに、この状況はクルマが90度曲がった場合を想定したものですが、Uターンつまり180度旋回した場合は、直径で考える必要があります。つまり、最小回転半径が5.0mであれば10m、6.0mであれば12mです。
タイヤの切れ角「5度アップ」 最小回転半径はどう変わる?最小回転半径が小さくなると、取り回しはどう変わってくるのでしょうか。再びNTNに聞きました。
――最小回転半径が小さくなると、取り回しはどう変わってくるのでしょうか?
車両の形や設計によって、変化が大きい場合もあるので一概には言えません。しかしながらひとつの目安を挙げるとすると、「Eセグメントのクルマで最小回転半径が0.4m小さくなると、Cセグメントと同等の取り回しになる」と考えてよいでしょう。Eセグメントの車種にはたとえばメルセデス・ベンツのEクラスやレクサス「GS」クラス、Cセグメントの車種にはトヨタ「カローラ」シリーズなどがあります。
――そもそも最小回転半径はどう決まるのでしょうか?
ホイールベース(前後タイヤの間隔)、トレッド(左右タイヤの間隔)、タイヤの切れ角から割り出されますが、タイヤの切れ角に様々な要素が影響します。たとえばSUVなど、タイヤの外径が大きいクルマは、タイヤが車体に干渉するなどしてあまり切れなくなるので、最小回転半径の数値も大きくなる傾向です。
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一般的なクルマは、ハンドルを回すと前輪が左右に動いて曲がることができますが、NTNによると、まっすぐ走行している状態でも、曲がっている状態でも等しくエンジンからの動力を伝える必要があるといいます。

世界最高の最大作動角55度を実現したNTNの等速ジョイント「CFJ-W」。最小回転半径の縮小が期待されている(画像:NTN)。
その角度は、大きくなるほど様々な力が発生してしまうため、これまでは50度が最大だったそうですが、NTNは2018年5月に、従来品と同じ大きさで世界最高の55度を実現する等速ジョイントを新たに開発しました。これにより最小回転半径は「たとえば5.7mであれば、5.25mくらいまで小さくなります」とのこと。SUVなどへの採用が期待されるといいます。
【図】知ってますか? 最小回転半径の考え方

円の中心は常に後輪の車軸の延長線上にある。最小回転半径5.0mのクルマは、「自車から前方の壁までの距離が5m」あれば余裕をもって曲がれる(乗りものニュース編集部作成)。