一日の疲れを癒し、明日への活力を養う銭湯。時代が変わっても、銭湯の心象風景は変わらない。
街の銭湯で構成する全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)によると、2026年4月時点の銭湯(一般公衆浴場業)は全国で1,493軒。ピークだった1968年の1万7,999軒から9割減少している。
家庭風呂の普及で、銭湯の役割は大きく変わった。さらに、燃料費や水道光熱費の上昇、建物・設備の老朽化、後継者不足だけでなく、健康ランドやスパ施設などの台頭もあり、銭湯数は減少が続く。
だが、近年はこの流れを逆手にとってサウナブームやレトロブームに乗り、若年層を取り込む動きもみられる。また、インバウンド観光客向けに「日本文化体験」として銭湯の魅力を発信し、新たなファン層拡大を狙う銭湯も出てきた。
「一般公衆浴場」の銭湯は、物価統制令に基づき、入浴料金は都道府県ごとに決められている。このため、燃料費が急騰したからといって自由に値上げはできない。この構造が生き残りの足かせになっている。
2024年、25年と利益は減少
東京商工リサーチ(TSR)の企業データから、主な銭湯運営会社48社の売上高、最終利益を7期連続で分析した。
48社の2019年(1-12月期)の売上高合計は634億6,800万円、利益は16億3,400万円だった。
新型コロナが5類移行した2023年には、人流が戻るなかでサウナブームが重なり、売上高は601億4,400万円とコロナ禍前を超えた。利益も84億9,600万円と、2019年以降の7期で最高を記録した。
だが、息を吹き返したかにみえた銭湯に、今度は水道・光熱費などの物価高が襲った。2025年は売上高こそ670億6,700万円と増収だったが、利益は41億8,500万円(同28.7%減)と大きく落ち込んだ。
原油高が営業に支障きたすことも
2026年は、米国とイスラエルによるイラン攻撃で中東情勢が緊迫化し、原油価格の高騰や調達不安が銭湯に押し寄せた。
銭湯は、湯を沸かす燃料にガスや薪、重油などを使用する。燃料を単体で使用するところもあれば、複数の燃料を組み合わせて使用するところもある。重油を使用する銭湯は「全国の銭湯の約35%」(全浴連)で、3社に1社が重油を使用している。
営業時間内は常に湯を沸かし続けるため、やむを得ず時短営業や休業日を増やす銭湯もある。
利益確保へ、銭湯の取り組み
こうした厳しい環境でも、銭湯は利益確保に工夫を凝らしている。ラムネなどの昔懐かしい瓶ジュースやスポーツドリンク、アルコールなどを用意し、客単価のUPにつなげる銭湯もある。また、銭湯ファンを増やすため、オリジナルグッズを企画、販売する銭湯もあり、経営維持への涙ぐましい努力を続けている。
自治体支援で銭湯存続も
小・零細規模が多い銭湯は家族経営が大半で、後継者問題が深刻になっている。
経営相談から始まり、事業承継までをサポートする。東京都の担当者によると、「25年度は27件の経営相談があり、(家族以外に)事業承継に至ったケースもあった」という。この取り組みは26年度も継続され、後継者が負担する賃料や改修費などを補助する「公衆浴場後継者支援事業」も行っている。
銭湯は住民の入浴施設だけでなく、交流の場や地域コミュニティの拠点の役目も果たす。また、世間の喧騒と一線を画す別空間にもなっている。
こうした癒しを求める人も多いが、銭湯が減るのは仕方ない時代背景もある。それだけに、存続を実現するには行政と地域の熱量が問われている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年6月2日号掲載「取材の周辺」を再編集)

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