長崎で巻き起こる「ドロドロのダメ男巡り」と「ヒリつく姉妹の絆」を描いた青春ロードムービー『いろは』が5月22日から全国公開される。妹の伊呂波を演じた川島鈴遥と姉の花蓮を演じた森田想に話を聞いた。

-最初に脚本を読んだ時の印象から伺います。

川島 やっぱり防波堤のシーンが一番印象に残っていて、2人が初めて本音を話すシーンなので、大事に演じたいと思いました。姉妹で3人の男の人に会いに行くロードムービーなのですが、2人目の男の人の面白さが台本からすごくにじみ出てきて、ここから物語がどんどん面白くなっていくんだなと思ったことを覚えています。

森田 長崎を2人でドライブして、ロードムービーのような形になるけれど、その中に3人の男の人が出てくるところは想像するのが難しかったのですが、どんな旅の終わり方になるんだろうというのは、脚本を読んだ時から考えました。自分が演じるのだけれど、ちょっと不思議な感じがしました。実際、せりふも結構「…」が多かったり、最初の方は会話もあまりなかったので、姉妹としてどういうふうに演じられるのかなと思いました。

-どちらもちょっと癖のある役でしたが、役に共感したり、感情移入することはできましたか。

川島 伊呂波の持っている内に秘めるところや、ちょっとネガティブな思考などは私自身も過去にあったので、すごく共感しながらお芝居をしていました。私には姉はいませんが、一つ年上でお姉ちゃんみたいな存在のいとこがいるので、その人をお姉ちゃんと重ねながらお芝居の中での姉妹の関係性を考えていきました。

森田 今までお姉ちゃんを演じることがあまりなかったし、お友達にも妹キャラだと思われて過ごしてきたので、リアリティーを気にしたところはありました。ただ、3人の男の人が出てきて、3人とも、果たして花蓮との関係は終わっていたのか、何年続いていたのかが分からないみたいなところは共感できなかったので、せりふや、実際にその3人に会った時に、感情を動かせるかなとは思っていました。

-演じながら、共感できる部分と、ちょっと困ったなみたいな部分はありましたか。

川島 私は役というよりも、最初に(横尾初喜)監督とお話をさせていただいた時に、「キラキラ感が出過ぎる。伊呂波はもっと暗くてこもった感じを出したいから、どうにかしてそのキラキラ感を消して」と言われました。撮影に入ってからも、2日か3日ぐらいは「まだ出てるよ」と言われたので、それを消すのが結構大変でした。

森田 私はちょっと困りました。でも、ある意味、花蓮に対する3人の男性と、3人に対しての花蓮が違っていた方が面白いというか、人間らしさみたいな部分を念頭に置いていたので。ずっと一貫して感情がブレないよりは、踊らされているわけではないけれど、柔軟に変わる感じは、演じやすいというか、想像しやすい感じがしました。

-本格的な共演は今回が初めてですよね。共演した印象は。

川島 個人的にSNSもよく見ていて、自分をしっかり持ったすてきな方だなと、もともと憧れていました。初めてお会いした時もすごくかっこいい印象を受けました。初めて2人で車に乗るシーンで「敬語なんかやめて」みたいに言ってくださって、ずっと姉妹として、お姉ちゃんとしていてくださったので、そこはすごく助かったと思います。ずっと支えてもらっていました。

ありがとうございました。

森田 どちらも子役からやっているから、子役出身者同士は親近感が湧くというか、昔から頑張っているよねみたいな気持ちなので、鈴遥ちゃんのこともそういうふうに思っていました。でも、役が絡まないとも思っていたので、こんなにがっつりと姉妹役で一緒にやれたことは、すごくうれしかったです。

-本作は長崎地方が舞台でしたが、最近、地方色が強い映画が多いと思います。その辺りはどう感じますか。

川島 もし自分が旅行で行くとしても、ここは見つけられないかもって思うような場所でも撮影したので、普段見られない景色や美しい景色を見られたことはすごくよかったです。横尾さんが長崎を歩いていると、町の皆さんから話し掛けられて、町がにぎやかになっているように見えて。何か映画の存在する意味みたいなものを見いだしている気がして、とてもすてきだなと思いました。

森田 私は地方色が強い系にとてもご縁があるので、自分の過ごし方も決まっている感じで、慣れてやれる部分があります。理想は、本当にその土地に住んでいるかのような雰囲気を感じてもらうのが一番ですけど、それはなかなか難しい。でも、今回は、自分の目に入る長崎の景色や、食事もそうだし、地元の方たちとの会話から、一つずつすくい上げて、映画の中に長崎色というものを強く出していけたらいいなと思いました。完成した作品を見て、ロードムービーの良さも入っているし、人の良さも入っているということで、すごくいいと思いました。

-2人が本音をぶつけ合う防波堤のシーンがとても印象的でしたが、撮影でもあそこは一番根っこになるところでしたか。

川島 そうですね。あそこに向けて旅をしていたような感覚もあります。撮影前にも「あそこはアドリブで行きたい」と監督もおっしゃっていたので、旅をしながらどんなことを感じて、どういう言葉を発するんだろうというのを楽しみにしながらあのシーンを迎えました。

-アドリブだったんですね。

森田 そうです。ほぼアドリブ。一応台本にはせりふが書いてあるけれど、願わくば自分の中から出てくる言葉になればいいみたいな感じでした。

川島 完成した映画を見た後で台本を読み直したんですけど、結構違うことを言っていて、覚えていないぐらい熱中しながらお芝居をしていたと思います。

-完成作を見た印象を。

川島 最初は伊呂波と花蓮が、それぞれ違う方向を向いていて、ちょっととがった部分もあって、何かヒリついた姉妹って思いながら見ていたんですけど、途中から2人がすごいかわいく見えてきました。それはきっと3人の男性や旅館の姉妹と出会ったりして、人と触れ合っていく中で、顔つきや言葉や音の出し方が変わっていったからだと思います。

旅をして人が変わっていくのってこういうことなんだなと。だから人と人とのつながりをもっと大事にしたいと思いました。

森田 想像以上でした。ずっと2人でいることが多かったし、全体の流れは知っているけど、絵が想像できないという感じでした。でもそれがちゃんとつながっていて、長崎の景色もすごく丁寧に折り込まれていました。全体的に、間延びせず凝縮されていたので、空気の閉じ込め方みたいなものがすごく面白かったです。

-観客や読者の皆さんに向けて、アピールも含めて一言ずつお願いします。

川島 私自身も日々いろんなことに悩んだりしながら突き進んでいるんですけど、自分もこの映画に、「そのままでいていいんだよ」って救われたような感覚があります。なので、この映画を見て、明日の足取りが少しでも軽くなったらいいなと思います。ぜひたくさんの方に見ていただけたらと思います。

森田 日々心にたまっていることや、言うに言えない悩みがあったり、そういうモヤモヤした気持ちの時って、すごくハッピーなものはあまり見る気がしないんですけど、この映画は、そういう気持ちの時に、寄り添ってくれるような優しさがあると思います。ちょっと落ち込んだ時とかに見るといいかもしれません。

きっと心が軽くなります。ハッピーな時に見るのはあまりよくないかもしれません(笑)。

(取材・文・写真/田中雄二)

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