上田まりえインタビュー(前編)

 数あるプロ野球OBのYouTubeチャンネルの中でトップとなる、登録者57.6万人(11月21日時点)を誇る『上原浩治の雑談魂』。同チャンネルをアシスタントとして支えるのは、元日本テレビのアナウンサーで、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターも務めていた上田まりえさん。

現在はタレントとして活躍する上田さんに、アシスタントに就任した経緯や、チャンネルの人気の理由、アシスタントとして意識していることなどを聞いた。

上田まりえ「降板を相談したこともあります」。YouTube『...の画像はこちら >>

YouTube『上原浩治の雑談魂』のアシスタントを務める上田まりえさん

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――上田さんが雑談魂のアシスタントになったきっかけを教えてください。

上田まりえ(以下:上田) 上原さんが所属する事務所の方と面識があったこともあり、「今度、雑談魂でゲストを呼ぼうと思っているんですが、いかがですか?」と声をかけていただいて。チャンネル初のゲストとして出演(2020年3月)したのがきっかけです。

 収録中、上原さんに「アシスタントになったらええんちゃう?」と言っていただいたんですが、最初は冗談だと思っていました。でも、収録が終わった後に、スタッフさんからも「次の収録はいつにしますか?」とスケジュールを確認されて(笑)。
そこからはトントン拍子で話が進んでいきました。

――上原さんとは、それ以前にもお会いしたことがあったんですか?

上田 初めてお会いしたのは、上原さんが現役を引退された直後でした。私が当時MCを担当していた『ワースポ×MLB』にゲストとして出演していただいたんです。その前からずっとお会いしてみたかった方でしたが、目の前にするとオーラがすごすぎて驚きましたね。背が高く、スラッとしていてモデルみたいですし、白いセットアップの着こなしが素敵で、話しかけることを躊躇してしまうぐらいドキドキしました。

――上原さんのオーラに圧倒されたんですね。


上田 でも、後日に開催された上原さんの現役引退の"お疲れさま会"に参加させていただいた時には、また違う姿を見ることができました。お酒を飲みながら、フランクにいろいろな話をしてくださって、普通にお話ができたことがうれしかったです。CMみたいに、本当にビールを美味しそうに飲んでいたのも印象的でした(笑)。

――プロ野球OBのチャンネルは多いですが、他のチャンネルと違う強みはどんなところですか?

上田 台本はありますが、あくまでそれは目安で、チャンネルのタイトル通り"雑談"を大事にしています。出たとこ勝負ですし、事前に決めているテーマから話が逸れてしまうこともありますが、その話のほうが面白ければ無理に戻すことはしません。スタッフさんたちも臨機応変に対応してくれますし、生まれた流れを大事にしています。



 また、ゲストひとりあたり4、5本くらいの動画を公開するのですが、各回のサムネイルで使われるようなワードを引き出すことを意識しています。話したことがサムネイルや動画の概要欄に反映されていると、私も「アシスタントとして仕事ができたのかな」という気持ちになります。

――収録を重ねる中で、新たに上原さんの魅力を発見することはありましたか?

上田 裏表が一切ないところです。素晴らしい経歴をお持ちなのにまったく飾るところがなく、さまざまなことを話してくれます。もし私が気取ってしまったり、決まった流れを作ってしまったりすると、せっかくの雰囲気を壊すことにつながってしまうので気をつけています。雑談魂のアシスタントになってから、収録の際には常に"丸裸"になっているような感覚があります。


――上田さんは野球ファン歴が長いとのことですが、いつ頃から野球好きになったんですか?

上田 野球は中学生の頃からずっと好きで、「野球と結婚して"野球まりえ"になりたい」と真剣に思っています。叶わない恋だとは、わかっていますが(笑)。ゲストはプロの第一線で活躍されていた方ばかりですし、野球のことをもっと勉強しなくてはいけないと思っています。

 私はプレーした経験がないですし、野球の細かい戦術や技術など、わからない部分もあります。上原さんやゲストのみなさんから教えていただいていることも多いので、視聴者のみなさんに「全然野球を知らないんだな」と思わせてしまうことも、きっとあるはず。真摯に向き合い、上原さんやゲストのみなさんから教わりながら、競技への理解と野球への愛を一層深めていきたいです。

――勉強はどんなことに取り組んでいるんですか?

上田 高校時代にスコアブックを書けるように勉強して、公認野球規則を読み込むなど、基本的なルールを理解することから始めました。自宅には野球関連の書籍・雑誌が500冊以上あります。「選手の気持ちを少しでも感じてみたい」と思い、大学時代にはバッティングセンターに週3回通って130kmの球を打つ練習をしたり、投球練習をしたりと、自分なりにできることをやってみました。

 また、大学院に通って修士号を取得しました(2019年に早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科修士課程1年制を修了)。『ワースポ×MLB』のキャスターをするなかで、選手や解説者のみなさんから話を引き出すためには、何かしら自分なりのフィールドを持っていなければならないと強く感じたからです。この時の学びは、雑談魂の現場でも活きています。



――ゲストに話を聞くうえで意識していることは?

上田 視聴者のみなさんが聞きたいと思うことを想像して質問することを心がけています。その際、ゲストの経歴はもちろん、ひとつひとつのプレーに対するリスペクトを忘れてはいけないとも思っています。フライを捕るだけでもすごく難しいことなんですよね。昔、ある町内会の早朝ソフトボール大会に混ぜてもらったことがあるのですが、その時に初めてフライを捕ることができたんです。私の人生においてフライを捕球できたのはその1回だけなんですが、すごく感動して......。その感覚を忘れたくないんです。

 ごく一部のことですが、球場などで「なんで今のボールが捕れないんだ!」といった心ないヤジが飛ぶこともあります。もちろんプロとしてミスをしないことは大前提として求められると思いますが、簡単そうに見えるプレーでもかなり難しいことをしていることを忘れたくないですし、批判や批評は絶対にしたくありません。そういったリスペクトを常に持つことが、野球と真摯に向き合うことにつながると思っています。

――野球界全体をリスペクトする思いが強いんですね。

上田 私は野球のおかげで自分の世界が広がったと思っているので、恩返しをしたいという気持ちがすごく強いんです。雑談魂を通して、少しでもその恩返しができたらうれしいなと思っています。

――チャンネルの動画には視聴者からのさまざまなコメントが寄せられていますが、目を通すことはありますか?

上田 上原さんも私も、基本的にコメントは全部読んでいます。参考になるコメントもたくさんいただきますし、雑談魂のファンの皆さんは温かくて熱い方ばかりで、本当にありがたいです。街中でも、仕事の現場でも、「いつも雑談魂を観ています!」と声をかけてもらう機会が増えました。あらためて、上原さんの影響力の大きさを感じています。

 正直なことを言うと「私は雑談魂にはいなくてもいい存在」であると思っています。実は、過去に一度、降板を決意し、その意志をスタッフに伝えたことがあります。ファンのみなさんが見たいのは、上原さんとゲストのかけあいや空気感。私もいちファンとして、2人だけで並んでいる姿が見たいと思いますもん。私がいることで邪魔になっているのではないか。チャンネルの価値を下げてしまうのではないか。そう思い悩みました。

 その時、スタッフのみなさんが引き留めてくださったのですが、必要としてもらえることを心からうれしいと思いましたし、このような素敵な現場に出会えたことに心から感謝しました。今でも「いなくてもいい存在」であると思っていることに変わりはありません。だからこそ、どのようにすればチャンネルに貢献できるのかということを考えながら、収録に臨んでいます。上原さんやスタッフさんたち、そして、視聴者のみなさんと作っていく雑談魂だからこそ、「もっと頑張りたい」という気持ちになるんです。

(後編:上原浩治やゲストの魅力を引き出すために。「野球に対する好きという気持ちが試されます」>>)

【プロフィール】
上田まりえ

1986年9月29日生まれ、鳥取県出身。2009年、専修大学文学部を卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末に退社してタレントに転身し、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターをはじめ幅広い分野で活躍。2019年に早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科修士課程1年制を修了。2020年3月にYouTubeチャンネル『上原浩治の雑談魂』のゲストに呼ばれたことをきっかけに、同チャンネルのアシスタントを務めることになった。

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