斎藤佑樹×福井優也×大石達也 早大ドラ1トリオ鼎談【後編】
斎藤佑樹、福井優也、大石達也による早大ドラ1"三羽ガラス"による特別鼎談。前編では大学入学当時の話に花が咲いたが、後編ではチームの主力となっていく上級生時代の話、そして運命のドラフトへとつながっていった。
久しぶりに再会した3人は大学時代の話に花を咲かせた
【ブルペン映えしなくても勝つ】
福井 オレは3年生になった頃には、斎藤はやっぱりすごいんだと思ったよ。だって、打たれちゃいけない場面とか、負けられない試合とか、大きな大会とか、そういう時に絶対勝つでしょ。ブルペン映えしないというか、ブルペンで投げてもそんなにすげえボールを投げてる感じじゃないのに、絶対に勝つ。ということは、すごいんだよ。
斎藤 ブルペン映え、しなかった?(笑)。
福井 でも、勝つでしょ。だから、何がすごいんだろうって斎藤にも聞きにいってるし、何かを盗んでやろうみたいな感じになってから、オレは野球がうまくなったし、勝てるようになったと思ってる。
大石 斎藤の何を盗んだの?
福井 マウンドの仕草とか、落ち着いている感じとか、周りに悟らせないところ。オレはけっこうイライラするタイプだったんで、それじゃ、ダメなんだって思ったよ。
斎藤 そういえば4年の春、早稲田の球場が人工芝になったでしょ。こけら落としのオープン戦で福井が投げた時、新しいマウンドのプレートが掘れすぎてとれちゃったこと、あったじゃん。
大石 あった、あった。
斎藤 そういう時って、みんなが福井の顔色をうかがうでしょ。
福井 プレート、何回もとれたもんね。
斎藤 でもその試合、福井、めちゃくちゃいいピッチングしたじゃん。アクシデントがあっても落ち着いて投げて結果を出す福井、成長したよなって。
福井 うん(笑)。
【福井がキレた出来事とは?】
大石 僕は3年の時だったかな......大学ジャパンに選ばれたことが大きかった。ずっと追いかけていた2人にやっと並べたかな、くらいは思ったかも。
福井 オレが落とされた時か(笑)。
大石 あの時、選考合宿では福井のほうがメチャクチャいいピッチングをしていて、僕は全然、ダメだったのに選ばれた。
2010年のドラフトで(写真左から)福井優也、大石達也、斎藤佑樹の3人が1位で指名された
斎藤 僕は?
福井 お前は選考合宿では投げてない。
大石 投げなくても選ばれた(笑)。
福井 オレは投げて、いいピッチングをしたのに落とされた。オレはあの時に悟ったよ。
斎藤 アレって......(苦笑)。
大石 あの時は福井が選ばれて、僕は落ちると思ってた。
福井 早稲田から3人は出せないとか、オレが先発で大石がリリーフだったってチーム構成のこともあっただろうし......。
大石 選ばれた時、ホント、気まずかったもん。どうしようって......。
福井 (笑)。
大石 いつも福井の部屋に入り浸ってたからさ、あの時、めちゃくちゃ、キレてたよね。
福井 悔しかったからね。
斎藤 選ばれた相手を前にキレてたの?
福井 うん。
斎藤 それもすごいね。知らなかった。
福井 投げなくても選ばれる人は我関せずだから。
斎藤 (苦笑)。
大石 1年生の時からずっと斎藤は選ばれるものだとみんなが思ってたからね。
【本当に行きたかった球団は?】
── 上級生になってからのお三方は強い早稲田を支える存在になりました。1戦目の先発が斎藤さん、2戦目が福井さん、抑えが大石さん。
福井 「サンデー福井」って呼ばれてたね。
── そして史上初となる、同一チームから3人のピッチャーが1位指名を受けたというドラフト会議を迎えます。
福井 広島が指名してくれるなんて聞いてなかったから、ビックリした。ヤクルト、ロッテが斎藤の外れ1位で来るかもとは思ってたけど。
斎藤 僕は前の年からロッテとヤクルトが1位指名を公言してくれていたからね。
福井 行きたかったのはどこ?
斎藤 関東の人間なので、関東の球団に行けたらいいな、くらいの感じだった。でもファイターズに行けて本当によかったと思ってる。
福井 大石は西武に行きたいって言ってたよね。
大石 え、言ってた?
福井 覚えてるよ。だって、オレが西武に行きたかったんだもん。
斎藤 え、なんで?
福井 個人的な理由だよ(笑)。
斎藤 なるほど、そっか(笑)。
福井 でも、オレも広島でよかった。
斎藤 あれからもう、12年か。
【應武監督のすごさ】
福井 みんな、イメージ変わらないね。大石なんかさ、相変わらず(髪に)ワックスをつけてこない感じとか(笑)。
大石 ワックス、好きじゃないよ。でも、ちょっとオイルっぽいのはつけているよ。
斎藤 そうなんだ(笑)。
大石 気持ちね。
福井 でも、相変わらずピンと跳ねてる。
大石 そういうのは気にしない。
福井 それが大石なんだよな。斎藤はいつもきっちりしてるね。ほら、今日も身なりが綺麗でしょ。
斎藤 そう?(笑)
大石 福井、丸くなったよね。
福井 えっ、太った?
大石 いや、大人になったって意味。
福井 でも、オレら、3人でよかったね。
大石 うん、そう思う。
福井 斎藤がいたからプロのスカウトが来たり、テレビで六大学の試合を放送したり......そのおかげでプロにも行けた。
大石 1人だったらプロに行けてない。斎藤がいたから注目してもらったと思う。
斎藤 そんなことないよ。
福井 ホント、斎藤が引っ張っていた。1年からずっと投げ続けて、勝って、チームの中心になって、しんどかったと思うよ。
斎藤 僕はキャプテンになって、2人に助けてもらったと思ってる。キャプテンとしてチーム全体を気にしなきゃいけない。でも絶対にプロへ行きたいからピッチャーとして集中もしたい。そういうなかで、2人がいてくれたおかげでピッチャーが引っ張るチームの形ができたよね。野手のみんなが「ピッチャー陣に任せておけばこのチームは大丈夫だ」という信頼が生まれたのかもしれない。ピッチャーとしてキャプテンを任されるのは難しかったけど、ピッチャー陣を支えるのが僕1人じゃなかったからこそ、チームはまとまったんだと思う。4年の最後、いい結果を残すことができたのは、2人がいたおかげだよ。
大石 斎藤がキャプテンナンバーの10番を背負って、福井が11番(早稲田のエースナンバー)だった。
福井 棚ぼたエース、な(笑)。
斎藤 そういうことも考えて、應武監督は僕をキャプテンにしたんじゃないかと思うよ。3人のバランスを考えて、福井が11番、大石が1番、僕が10番。
福井 たしかにオレ、11番をもらって、やる気にさせてもらえたもんね。
斎藤 ホント、應武さんってすごい監督だよね。
おわり
斎藤佑樹(さいとう・ゆうき)/1988年6月6日、群馬県生まれ。早稲田実業では2006年夏の甲子園で全国制覇し、「ハンカチ王子」として大フィーバーを巻き起こした。早稲田大でも1年春からリーグ戦に登板し、東京六大学リーグ史上6人目(当時)の「30勝、300奪三振」を達成。2010年ドラフト1位で日本ハムに入団。ルーキーイヤーから6勝をマークし、2年目は開幕投手を務めた。だが、その後はケガに悩まされ本来のピッチングができず、2021年10月に現役引退。現在は「株式会社 斎藤佑樹」の代表取締役として活躍中。
福井優也(ふくい・ゆうや)/1988年2月8日、岡山県生まれ。済美高では1年秋からエースとなり、2年春のセンバツ大会で初出場初優勝に貢献。同年夏の甲子園でもチームを準優勝に導く。2005年の高校生ドラフト4位で指名されるも拒否。1年間の浪人の末、早稲田大に入学。同期となった斎藤佑樹、大石達也とともに活躍。2010年ドラフト1位で広島から指名され入団。1年目は8勝を挙げ、2015年には自己最多の9勝をマークした。2018年オフにトレードで楽天に移籍。2022年シーズン終了後に楽天から戦力外通告を受けた。
大石達也(おおいし・たつや)/1988年10月10日、福岡県生まれ。福岡大大濠高から早稲田大に進み、1年秋から3年春まで4シーズンにわたって38回2/3イニング連続無失点を記録。2010年のドラフトでは6球団による競合の末、西武が交渉権を獲得し入団。2016、17年と好成績を挙げて飛躍が期待されたが、2018年は10試合の登板に終わり、2019年シーズンを最後に現役引退。引退後は西武の球団スタッフに就任し、2021年から二軍投手コーチとして若手を指導している。