ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 約2カ月後の4月22日、改装中だった京都競馬場がいよいよグランドオープン。同競馬場で行なわれてきたレースには競馬史に刻まれる名勝負が多数ありますから、再開の瞬間が今から楽しみでなりません。

 そうして、通常京都で施行される重賞の他場への振り替え開催も、残すところあと2戦。今週行なわれるGII京都記念(2月12日/阪神・芝2200m)と、次週のGIII京都牝馬S(2月18日/阪神・芝1400m)だけとなりました。

 まずは京都記念。今年はかなり豪華な顔ぶれがそろいましたね。とりわけ注目されるのは、今回が初顔合わせとなる、昨年のダービー馬ドウデュース(牡4歳)と、一昨年の年度代表馬エフフォーリア(牡5歳)です。

 本来であれば競馬ファン垂涎のマッチアップですが、今回はどちらも再起を図っての始動戦ゆえ、そこまで互いを意識することはないかもしれません。

それぞれ、目標は先になりますし、「次につなげる走りをしたい」という意識のほうが強いのではないでしょうか。

 過去のレースを振り返ってみても、ジェンティルドンナ(2014年/1番人気6着)やハープスター(2015年/1番人気5着)、レイデオロ(2018年1番人気3着)、ユーバーレーベン(2022年/1番人気5着)ら、ドバイへのステップレースとして参戦してきた馬たちが何度も人気を裏切ってきました。

 そうした傾向を鑑みれば、今年も実績が抜けているからといって、それだけで過信しすぎるのは危険かもしれません。

 ドウデュースについては、やはり海外でのダメージが気になります。すでに4~5カ月経過しているとはいえ、海外遠征の2戦で見せた走りは、この馬本来の姿からは程遠いものでしたからね。

 敗因としては、体が大きく増えていたかもしれないといった憶測もあったりしますが、異国の地で状態面がホンモノではなかった可能性は十分にあります。

馬場がまったく違うと言っても、GI日本ダービー(東京・芝2400m)を2分21秒9で走った馬が、GI凱旋門賞(10月2日/フランス・芝2400m)では2分44秒4という時計で大敗(19着)を喫してしまうのですから。

 となると、そのダメージの大きさも普通のスケールではとても推し量れません。

 同馬を管理する友道康夫厩舎はかつて、同じくダービー馬のマカヒキが、今回のドウデュースとまったく同じローテーションでこのレース(2017年)に出走したことがありました。断然の1番人気に推されましたが、結果は3着。それを考えると、ドウデュースにしても絶対的な存在として見ないほうがいいかもしれません。

 一方、エフフォーリアはどうか。

同馬については、前走のGI有馬記念(12月25日/中山・芝2500m)5着という結果をどう見るかが、大きなポイントになります。

 不発に終わった昨春の2戦よりも着順を上げたことで、「復活が近づいている」という見方もできます。しかし僕はまだ、そこまでいいイメージは持っていません。

 有馬記念の返し馬では、ジョッキーが気合いを入れてガツーンと出していきましたが、あそこまでしなければ馬にスイッチが入らいないのは考えもの。やはり全盛期には遠く及ばない状態でしたし、当時もまだ"魂が抜けてしまっている"ように感じました。

 それだけに、僕は5着という結果について「よく走ったほうだな」と思っています。

「走った」というより、鞍上が何とか「走らせた」という感じでしょうか。あの姿のエフフォーリアに、これからさらによくなっていくような印象は抱けません。

 こうして見ると、実績では"2強"に及ばない面々にもつけ入る隙は大いにあると思います。僕としては、その可能性がある馬を積極的に狙っていきたい気持ちが強いです。

 その候補として考えているのは、インプレス(牡4歳)です。阪神の芝2400m戦で3勝している馬で、2勝クラス、3勝クラスの条件戦を連勝してきた上がり馬です。

 3歳春までは無名に近い存在でしたが、昨秋の走りには本格化を感じました。古馬になってから力をつけてくる馬が多くいる、佐々木晶三厩舎らしい馬だなという印象があります。

京都記念はここから始動する実績馬には鬼門の一戦。ならば、注目...の画像はこちら >>

京都記念での一発が期待されるインプレス

 連勝してきたレースを振り返れば、とりわけ前走の3勝クラス・尼崎S(11月9日/阪神・芝2400m)で繰り出した末脚には目を見張る鋭さがありました。阪神芝の中・長距離戦で上がり32秒8という時計はなかなかお目にかかれないもの。これは、オルフェーヴルやサートゥルナーリアがGII神戸新聞杯(阪神・芝2400m)で快勝した時に匹敵する数字ですから、相当インパクトがあります。

 ちなみに、改修後の阪神・芝2200m以上のレースで、上がり32秒台をマークして勝った馬は過去に5頭しかいないみたいですよ。

 僕は今回の京都記念、結構ペースが速くなると考えています。その理由は3つあって、阪神コースで行なわれた過去2年の結果が先行決着だったこと。開幕週で馬場の傷みがなく、スピードが出やすいこと。そして、逃げたい馬が多くそろっていること、です。

 そうした状況にあって、人気馬も早めに動いて前を捕まえにいくことが予想されます。そこで、伏兵という立場にあるインプレスは最後まで動かずに済みますから、満を持して自慢の末脚を炸裂させることができれば、2~3着には食い込めると踏んでいます。

 もし僕がこの馬に乗るとすれば、ドウデュースの後ろで脚をタメ、勝負どころでも決して先に動かず、ドウデュースが上がっていく進路についていくイメージ。そうすれば、自ずと道は開けるはずです。

 ということで、京都記念の「ヒモ穴馬」にはインプレスを指名したいと思います。