今季のJリーグでは、夏の移籍が活発な動きを見せている。なかには、主力級の選手が"玉突き"で移籍するケースも見られ、例年以上に移籍市場が活況を呈している印象だ。

 とはいえ、夏の移籍と言えば、最近ではJクラブからヨーロッパをはじめとする海外クラブへ移籍する、海外移籍がもっぱらだ。必然、Jリーグ全体で見れば、戦力ダウンを余儀なくされるクラブがどうしても多くなる。

 ヨーロッパのシーズンに合わせて移籍市場が動く以上、仕方のないこととはいえ、Jクラブにしてみれば、シーズン途中に主力選手を失うことの難しさはあるだろう。

 そんな抗いがたい流れが加速するなか、今夏の移籍によって"収支"をプラスにできたクラブはあるのだろうか。今夏の移籍動向を整理し、プラス収支、すなわち、戦力アップが期待されるJ1の5クラブを挙げてみたい。

夏の移籍で戦力アップが見込める5クラブ 海外へ移籍した主力の...の画像はこちら >>
湘南ベルマーレ
 今夏、FW町野修斗(→ホルシュタイン・キール/ドイツ)が海外移籍を決断。
チーム最多の9ゴールを挙げていた、エースストライカーの離脱は確かに痛い。

 しかし、J1で実績のあるDFキム・ミンテ(鹿島アントラーズ→)、1年ぶりの湘南復帰となったMF田中聡(コルトレイク/ベルギー→)の加入でセンターラインを強化。さらには、FWディサロ燦シルヴァーノ(清水エスパルス→)も、中盤でさばきながら前線に絡んでいくスタイルが湘南の戦い方に思いのほかハマっている。

 事実、3人の新戦力がそろって先発出場した最近2試合は1勝1分け。まだまだ残留争いは続くだろうが、明るい兆しが見え始めている。効果的な補強が、失ったものの大きさを感じさせない。

サンフレッチェ広島
 クラブ生え抜きで背番号10を託されていたMF森島司(→名古屋グランパス)の離脱がショッキングなニュースとなったことは間違いない。だがその一方で、FW加藤陸次樹(セレッソ大阪→)、MFマルコス・ジュニオール(横浜F・マリノス→)という実力者を手にすることもできた。

 労をいとわず、前線で攻守にハードワークできる加藤は、広島のスタイルにフィットするはず。また、マルコス・ジュニオールは、選手層の厚い横浜FMでこそ控えに回ることが多かったが、2列目でコンスタントに出場機会を得られれば、森島に劣らない技術とアイデアを発揮してくれるに違いない。

 トータルの収支としては、うまくまとめることができたのではないだろうか。

FC東京
 MF安部柊斗(→モレンべーク/ベルギー)の海外移籍は痛手だが、FC東京の中盤には小泉慶、塚川孝輝らがいて、比較的層は厚い。

それを考えれば、懸案だった右サイドバックに白井康介(京都サンガ→)を獲得できたことは大きいだろう。

 縦に攻め上がる思い切りのよさだけでなく、中盤での組み立てに加われる器用さも併せ持つ白井は、ピーター・クラモフスキー監督が目指すスタイルとの相性はいいはず。実際、白井が移籍加入後、即先発フル出場した2試合では、チームも2連勝と好調だ。

 同じく今夏加入したMF原川力(C大阪→)にしても、今後、中盤のポジション争いに加わってくる可能性は十分にある。決してビッグネームを獲得したわけではないが、うまくピンポイント補強に成功した印象だ。

川崎フロンターレ
 正直、話題先行の感もあるが、今夏最大のサプライズとも言うべき移籍補強を行なったのは、FWバフェティンビ・ゴミス(ガラタサライ/トルコ→)を獲得した川崎だ。

 かつてはリヨン(フランス)などでゴールを量産し、フランス代表にも選ばれていたゴミスだが、近いところで強烈なインパクトを残したのは、2019年AFCチャンピオンズリーグ決勝だろう。優勝したアル・ヒラル(サウジアラビア)のエースストライカーとして、浦和レッズを寄せつけなかったパワーと技術は、明らかにアジアレベルを超越していた。

 しかし、そんなゴミスもすでに38歳。昨季はトルコリーグで23試合出場8ゴールの記録を残しているが、今年1月の試合を最後にゴールはなく、控えに回る試合も多くなっていた。

 はたして、元フランス代表はどんなプレーを見せてくれるのだろうか。

◆浦和レッズ
 川崎のゴミス獲得同様、話題先行の感がなくはないが、復活が楽しみな選手を獲得したのが、浦和である。

 MF中島翔哉(アンタルヤスポル/トルコ→)は、2017年にFC東京でプレーして以来のJリーグ復帰。UEFAチャンピオンズリーグ常連のポルト(ポルトガル)へ移籍するなど、一時は順調にステップアップしていたものの、最近は思うような活躍ができずにいた。

 同じく、FW安部裕葵(バルセロナ・アトレティック/スペイン→)も、2019年に鹿島でプレーして以来のJリーグ復帰。バルセロナに移籍し、Bチームでプレーするも、大きなケガも重なって2021年以降はほとんど試合に出場できない状況が続いていた。

 ともに、かつては日本代表の未来を背負うと期待された逸材である。今季の即戦力としては未知な部分もあり、来季以降も含めて楽しみにするのが、妥当な評価かもしれない。