鈴木優のLAリポート Vol.2

 2025年シーズン、ロサンゼルス・ドジャースは球団新記録の開幕8連勝という最高のスタートダッシュを切りました。「調子がいい」というよりも、「強すぎる」と感じるほどの圧倒的な戦いぶりです。

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【適材適所の補強と大物たちの人間性】

 もちろん、大谷翔平選手、ムーキー・ベッツ選手、フレディ・フリーマン選手の「MVPトリオ」を筆頭に、ピッチャー陣も山本由伸投手など実力者が揃っています。しかし、それだけでは語りきれない強さを、今のドジャースには感じます。

 昨年もドジャースは強かったですが、シーズン中盤にはケガ人が続出し、苦しい時期がありました。今年もすでに投手陣に故障者が相次いでいますが、まだまだ余裕を感じさせます。むしろ、ワールドシリーズを制覇した昨年以上に、チーム力が増している印象です。

 オフには元サイ・ヤング賞のブレイク・スネル投手(現在は故障者リスト入り)、大谷選手の宿敵だったタナー・スコット投手をライバルであるサンディエゴ・パドレスから獲得。ほかにもテキサス・レンジャーズのカービー・イエーツ投手、サンフランシスコ・ジャイアンツのマイケル・コンフォルト外野手を加えるなど、不安要素を着実に埋める万全の補強を行ないました。

 さらに、今は故障者リストに入っている、昨年クローザーを務めたマイケル・コペック投手やエバン・フィリップス投手、先発陣でもクレイトン・カーショー投手、トニー・ゴンソリン投手、ボビー・ミラー投手たちの復帰が待たれています。

 開幕からベッツ選手やキケ・ヘルナンデス選手、フリーマン選手らに多少のコンディション不良が出ているものの、層の厚さでしっかりカバー。適度に休養を与えながら回すことで、ケガのリスクも減らせており、理想的な運営ができています。

 そしてドジャースの強さは、選手たちの技術だけでなく、"人間力"にもあると感じています。昨年、大谷選手や山本投手がすぐチームに溶け込んだように、個よりもチームワークを第一に考える選手が多い印象を受けます。

【MLB】開幕8連勝のドジャースの強さとは? メジャー記録のシーズン116勝を超えるか
黙々と試合前の練習に励むムーキー・ベッツ photo by Suzuki Yu
 たとえば昨年、ベッツ選手がセカンドからショート、そしてライトと守備位置を変えても、柔軟に対応できたのは「チームのために」という思いがあったからだと思います。

 これだけのスター選手が集まれば、個人のエゴが出ても不思議ではありません。実際、スター選手が揃っても勝てないチームはありますdが、ドジャースのフロント陣は実力だけでなく、人間性まで考えてチーム編成をしています。だから"個"ではなく、"和"を大切にする選手が集まり、このような理想的なチームができあがったのだと思います。

【バイプレーヤーたちの存在感】

 もうひとつは、「MVPトリオ」以外の選手の存在感です。ドジャース打線といえば、大谷選手、ベッツ選手、フリーマン選手の3人に注目が集まっていますが、じつは打点や得点が彼らに偏っているわけではありません。

 テオスカー・フェルナンデス選手、トニー・エドマン選手、マックス・マンシー選手、ウィル・スミス選手といった選手たちは、いつでもホームランやタイムリーを打てる強打者です。試合を決定づける一打は「MVPトリオ」が担うことが多いですが、同点打や試合の流れを変える重要な局面で、彼らはしっかり役割を果たしています。

 どこからでもチャンスをつくれるこの打線は、相手にとっては脅威です。試合終盤にリードしている展開であっても、油断できません。気がつけば点差が縮まっている......そんな場面を何度も見てきました。

 層の厚さ、選手たちの人間性、MVPトリオ以外の存在感──この3つが、ここまでドジャースの試合を見てきて感じる点です。長いシーズン、このままずっとこの調子で行くとは思えませんが、昨年のワールドシリーズを制したドジャースよりも強くなっていると思います。

 メジャーのシーズン最多勝利は、1906年のシカゴ・カブス、2001年のシアトル・マリナーズが記録した116勝ですが、今年のドジャースは120勝以上するのではないかと思っています。そんなところにも注目して、これからの試合を見てほしいです。

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