『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(36)

日本製鉄堺ブレイザーズ 上村琉乃介 前編

【最優先は「チームの勝利」】

「プロでやっているからには、まずは個人として試合に出るところが大事だと思うんですが......」

 日本製鉄堺ブレイザーズのオポジット、上村琉乃介(24歳)はそう言って、一拍置いた。そこからが彼の本音だった。

【男子バレー】堺ブレイザーズの上村琉乃介が貫く「チームの勝利...の画像はこちら >>

「自分は『チームの勝利に貢献したい』という思いが強いんですよ。

もちろん、試合に出て勝ちにつながるならうれしいですが、優先順位としてはチームの勝利が上。平日練習でAチームが勝つための練習相手になって、対戦相手の対策をするのも自分の役割です。

 たとえばグレベア(東京グレートベアーズ)戦の前には、(バルトシュ・)クレク選手の打つコースを研究し、"このコースに打ってくる"というのをチームで共有するとか。強いオポジットのマネすることで技術も身につきます。それで自分のスタイルが崩れたら、元も子もないんですけどね」

 彼はからりとした声で言う。自己中心的な考え方が蔓延する現代、これだけチームへの忠誠心を見せる選手も珍しい。彼にとって、「チームありき」がバレーボールの原理だ。

 2025-26シーズン、上村が残した数字は決していいとは言えない。同じポジションの、デンマーク代表のウルリック・ダール、アメリカ代表のマシュー・アンダーソンが立ちはだかって、常にベンチには入っているが、出場機会は限られた。1年目の総得点は118得点だったが、2年目は16得点にとどまった。

「今シーズンはシンプルに出場機会が減りました。昨シーズンは、リリーフサーバーでほぼ毎セット出させてもらっていたんですが、今シーズンは2枚替えで最後にサーブ打って......という感じで(スパイクの)母数も少なくなりましたね」

 上村はそう分析したが、焦ってはいなかった。

「外国籍選手は得点力、ブロック力というか、前にいるだけで威圧感が違います。監督からは、今シーズンの最初に『(オポジットだけでなく)アウトサイドヒッターにも挑戦していこう』と言われ、攻撃型のパスもできるアウトサイドヒッターになれるように、と意識してやってきました。パスの上達は1年では難しいので、『2年、3年とかけてやっていこう』と言ってもらっています」

【外国籍選手にないものを手に入れる】

 ポジション変更は簡単ではない。たとえばスパイクひとつをとっても、ライトから打つ場合はトスが利き目の左目に近く、体の左の軸を使い、ボールを呼び込んで打つ。しかし、レフトから打つ場合はその逆で、体の右の軸を使わないとパワーをボールに乗せられない。

 また、レセプション(サーブレシーブ)も大きな課題だ。

「いくらジャンプ力があっても、大きな外国籍選手とはトップに到達するまでの速さが違うので、彼らにないものを手に入れるしかないですね。レセプションは、これまでやったことがなかったこともあって最初はわからなかったんですが、自分のなかで『これでいいんじゃないかな』というのがちょっと見えてきました。今は何がダメでミスしたのかもわかるようになったので、やる前に気づいてミスをしないようになりたいですね」

 ブレイザーズはチャンピオンシップ進出に向けて戦ったが、レギュラーシーズンを7位であと一歩届かなかった。上村はベンチで戦況を見つめることが多く打数自体が少なかったものの、今シーズンのアタック決定率は50%を超えている。

「今シーズンはスパイクの調子がよくて、出場すればサイドアウトを切れるし、『ローテを回せる』という気持ちもあります。でも、自分は『機会があって出た時に活躍する』という気持ちで練習をやるだけです。

 チームメイトの堀江(友裕)さんや江藤(巧)さんに相談することは多いですよ。

ふたりとも考えてバレーをやるタイプで、食事に連れていってもらい、『あの時、ああなっていたよ』とか、アドバイスをもらっています」

【心の中に隠し持った牙】

 上村はチームメイトに感謝しながら言う。礼儀正しく、口調も柔らかく、人当たりがよい。冒頭に記したように、フォア・ザ・チームの精神がひと際強い選手だ。

しかし、上村はこうも言った。

「コートでは"違う自分"がいるかもしれません。スパイクを打つ時は相手のブロックだけでなく、レシーバーも見えるんです。『吹っ飛ばしてやる』って気持ちでやっていますよ」

 スパイカーとして、彼は牙を隠し持つ。それも本性だ。

「自分は真面目に見えますかね? 褒められたら、すぐ調子に乗るほうで。『いいぞ!』とか言われると、次はだいたいミスするんです(笑)」

 その茶目っ気も、彼の"輪郭"になっている。

(後編:"ゴミ捨て場の決戦"に感じたリアル 孤爪研磨のセリフに「春高バレーを思い出す」>>)

【プロフィール】

上村琉乃介(かみむら・りゅうのすけ)

所属:日本製鉄堺ブレイザーズ

2001年4月19日生まれ、長野県出身。186cm・オポジット。

VC長野トライデンツのジュニアチームで技術を磨き、山梨の強豪・日本航空高校では春高バレーに3回出場した。東京学芸大を経て、2024年に日本製鉄堺ブレイザーズに入団した。

編集部おすすめ