【男子バレー】西田有志が語る新王者・大阪ブルテオンの勝因 「...の画像はこちら >>
 西田有志(26歳)は、どこか達観した口ぶりだ。質問は受けても、サービスはしない。
おざなりに答えているわけではなく、真剣だからこそ、質朴な答えになる。話そうと思えば、無量の言葉があふれるところを簡潔にしているのだ。

「吹っきれたというよりは、やるべきことがシンプルになりました」
「勝ちにこだわるべきか、いろいろ整理していました」
「勝負を分けたところは特にないです」

 それらの一徹で観念的な言葉の数々は、彼の生き方も示していた。何かをつかんだ気になっても、その瞬間に失われてしまうからこそ、彼は決して立ち止まらない。スパイクやサーブが決まれば、獲物をしとめた獣のように激しく咆哮したが、すぐに何もなかったように次のプレーと対峙した。失敗しようと、成功しようと、満足も後悔もせず、一瞬を生き続けるのだ。

 2025-26シーズン大同生命SVリーグ、西田はチャンピオンシップで大阪ブルテオンを優勝に導き、MVPに輝いた。ひとつの結実だった。

「1年前からピーキングを持ってきて、結果として勝つことができました」

 オポジットの西田は淡々と振り返っている。

 シーズン開幕前のインタビューで、筆者は西田にこんな質問をぶつけたことがあった。

――昨シーズンはレギュラーシーズン1位にもかかわらず、チャンピオンシップは準決勝で敗退になりました。レギュラーシーズンで44試合も戦っての結果に「不条理だ」という周囲の声もありましたが......。

 彼は少しの迷いもなく言いきった。

「(チャンピオンシップに向けて)準備していなかった、ということに尽きると思っています。自分たちは"結果を出すしかない"って割りきるしかなかった。ああだこうだ言っても変わるわけではなかったし、勝てばいいだけの話だったと今は思っています」

 西田はそう言って腹を括っていた。"勝てばいいだけ"という割りきった気持ちで、彼は1年をかけた捲土重来を果たしたのだ。

 今回のチャンピオンシップファイナルの3連戦で、西田の出来は尻上がりだった。第1戦から第3戦にかけてアタック決定率、サーブ効果率などいずれの数字も上昇。第3戦に至っては、アタック決定率は70%以上、サーブ効果率は33.3%と驚異的な数字を叩き出した。サントリーサンバーズ大阪のエースである髙橋藍に狙いを定めたサーブは、得体の知れない魔物でも憑依したかのような変化だった。

【キャプテンとしての役割も果たす】

〈チームを勝たせる〉

 彼はそれを言葉ではなく、行動で示した。

「(ブルテオンはしばらく王座を逃しているが)優勝が遠のいているのは......(ひとつの試合を)"勝っている"で終わっている気がします。貪欲に勝ちを求め続けるべきで、どう勝つ工夫をしたのか、そこを掘り下げることも求めていきたい。

これは僕の価値観ですが」

 西田はそう語っていたが、勝ちも負けも少しも引きずらなかった。たとえばファイナルの第1戦は相手の勢いを跳ね返せずに落とし、第2戦は劇的な逆転勝利だったが、どちらの試合後も同じ表情をしていた。

「勝ち負けはつくものですが、シンプルに"バレーは面白い"って気持ちでやっています」

 西田は悟ったように語るが、平常心でバレーを楽しんでいたのだろう。勝負をかけた第3戦、コートで暴れ回る姿は伝説の豪傑が戦場を闊歩するようだった。その一瞬に、本性が表出した。 

「バレーを生きているようなもので、24時間じゃ足りない」

 西田はそう言うが、そこまで没頭することで立つことができた境地があるのだ。

 今シーズンの西田は、キャプテンという役も見事にやり遂げている。プロフェッショナルな背中を見せることで、チームを鼓舞。オポジットで一撃を託される選手が、自分のことだけでなくチームのことも考えるのは、リスクがある。しかし、彼は重責を背負いながら、それをエネルギーに変換し、スパイカーとして奮起したのだ。

 ブルテオンのヘッドコーチであるトーマス・サムエルボもキャプテン西田に称賛の声を送っていた。

「(西田)有志はすばらしくキャプテンを務め上げました。

チームメイトとよくしゃべり、もしくはしゃべりすぎず、いいように。チームのことを気にしながら、自分のプレーにも注力。浮き沈みがあるなか、選手としても人としても成長しました」

 西田は戦い続けることによって新たなステージに入り、栄冠を手にしたと言える。

 ふと、彼とのやりとりを思い出した。

――西田選手は感情量が豊富ですが、その感情のコントロールが最大値のプレーを出すカギだと思いますか?

 彼はその問いに対し、明確な答えをしていた。

「入り込みすぎている場合、どう一歩引いて俯瞰できるか。それを意識せずできるようになるには、自分には経験がもっと必要ですね。次のステップは、そこがカギになるかなって」

 今回のチャンピオンシップで、西田はバレーを楽しみつつ、勝負を俯瞰できていた。そのおかげで劣勢も覆せた。あるいは、彼にとって劣勢は劣勢ではなく、優勢も優勢ではなかったのかもしれない。逆説的だが、バレーに夢中になることで解き放たれていた。

「僕はキャプテンという立場で、"一番努力してチームの先頭に立たないと"と思っていました。

その意図を持って、シーズンが始まる前から準備してきて......負けていたら、やってきたことも否定的に捉えられると思うので、こうして結果が出てこそ言えるのですが、やってきてよかったなと思います」

 試合後の会見で登壇した彼は、少し安堵したようにも映ったが、それもつかの間、視線は先に向かっていた。

「見据えていることは、(2028年の)ロスのオリンピックでメダルを取ること。そこに向けてパフォーマンスをすべて向上させるだけです」

 会見の最後に、西田は低い声で言った。どんな1点も、どんな1勝も、どんなタイトルも過程でしかない。それらは彼を形づくるが、どれも決定的ではないのだろう。あらゆることを飲み込んで、彼のバレー人生になるのだ。

編集部おすすめ