福田正博 フットボール原論

■ラウンド32で敗れ、またしても「決勝トーナメント1回戦の壁」を突破できなかったサッカー日本代表。そうしたなか、次期監督は誰が務めるのがいいのか。

次のW杯に向けて、福田正博氏の見解を聞いた。

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【人を大切にするマネジメント】

 森保一監督の、日本代表を率いた8年間のマネジメントは、人をものすごく大切にすることを成果につなげた印象だ。選手はもちろん、スタッフであれ、ファンであれ、メディアであれ、とても真摯に対応する。それが森保監督の最大の魅力だ。

 彼の人柄が表われているのが、コーチングスタッフの大所帯ぶりだ。サッカーの監督というのは気心の知れた少数のスタッフで仕事に臨むことが圧倒的に多い。そのほうが意思疎通を図りやすいメリットがある。しかし、森保監督の場合は対照的だ。次から次へとコーチが加わった。世界と戦うためのチームをつくりながら、その一方で後進の指導者を育てる役割も担ってきたかのようでもある。

 ただ、勝負師として見たとき、非情とも思える決断が求められる場面において、森保監督の優しさはあだとなっているような気がするのだ。

 プロ野球の故・野村克也監督は「ペナントレースと日本シリーズでは戦い方は違う」と語っていたが、サッカーにおいても似たことが言えるだろう。クラブチームでは長い時間のなかで選手を育て、チーム力を高めていける。

選手にチャンスを与え、失敗したらトレーニングで克服させ、再挑戦させることが可能だ。

 だが、W杯のような一発勝負の舞台で、その猶予はない。目の前の結果がすべてで、勝利を掴み取るためには時には選手の気持ちを汲み取っていられない場面もある。

 だからこそ、報道にあるように森保監督が次のアジアカップまで続投するのであれば、どんな結果を残すのか興味深い。前回2023年大会はベスト8でイランに敗退した。鈴木彩艶を正GKに抜擢した森保監督の選手を見る目が間違ってなかったことは、その後の彼の成長を見れば明らか。それだけに2027年1月、成長した日本代表を率いた森保監督が、一発勝負の大会でどういう結果を残すのかに注目している。

【新たな風を日本代表に吹かせるべき】

 ただ、森保監督のもとで日本がアジアカップ優勝を遂げたとしても、日本サッカー協会にはブレることなく、新監督とともに4年後に向けた船出をしてもらいたい。

 各国代表を見渡すと、フランスのディディエ・デシャン(2012年~)、クロアチアのズラトコ・ダリッチ(2017年~2026年)、ドイツのヨアヒム・レーブ(2006年~2021年)など、長期政権を担った監督がいる。ただ、タレントの宝庫のフランスを率いるデシャン監督を除けば、世代交代に苦しんで尻すぼみの成績になった印象がある。

 いまの日本代表は、「東京五輪世代」が中心になって成長してきた。東京五輪世代とは、森保監督が2017年に東京五輪代表監督に就いた時からの付き合いで、いわば阿吽の呼吸のようなものがある。

 4年後の東京五輪世代は30歳前後。

第一線でやれないことはないが、そこがメインを張るようではW杯を勝ち上がる期待は大きくなってこない。彼らの下のパリ五輪世代やその次のロス五輪世代からの突き上げでチームが活性化しなければ、日本代表の成長は小さくなってしまう。それを懸念している。

 新たな風を日本代表に吹かせ、下の世代を積極的に起用していく。何も無理やり世代交代をしろというわけではない。だが、新たな監督が志向する評価基準のなかで、新たな競争が始まれば、選手たちはマンネリ感を覚えることなく次の4年に向かっていけるのではないだろうか。

【日本のよさを引き出せる人物を】

 森保監督ではダメだというわけではないが、重荷をおろし、身軽な立場になって日本サッカーの魅力を広げる仕事に携わってもらいたい思いもある。

 日本サッカーがこの30年ほどで、これほど急成長した最大の要因は「育成への投資」だ。Jリーグの発足によって選手育成を担う指導者への投資が可能になり、子どもたちの受け皿が整備され、つねにバージョンアップをしてきた。

 これが日本サッカーの成長の土台になっているのだが、まだまだ広げていく必要がある。その時に森保監督が必要だ。彼の、誰をも受け入れるあの優しい笑みと直接触れ合える機会があれば、サッカーで夢を見る子どもたちをもっと増やせるのではないか。

 次期監督像について言えば、最優先されるべきは「日本のよさを引き出せる人物」という点だ。国籍にこだわる必要はないし、日本文化や日本人の精神性などを理解したうえで、日本代表をさらに成長させられる監督が望ましい。

 日本やJリーグに精通している必要はないが、外国人指導者がポッと日本に来て、日本文化や日本人の精神性を理解するのは難しいことを踏まえると、まずJリーグに関わり、その後に代表に関わったほうがいいのかとも思う。

 候補としては、日本人監督として異なるふたつのクラブ(川崎フロンターレ鹿島アントラーズ)で最多8タイトルを獲得した鬼木達監督(鹿島)がいる。また、鹿島監督時代の2018年にACL優勝を達成し、現在はロス五輪代表チームを率いる大岩剛監督には下の世代の引き上げが期待できる。

 いずれにしろ、「森保監督の次」となると、実績面で誰もが納得できる候補者は限られている。そのなかで誰に次のバトンを託すのかに注目している。

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