スカウトが見た夏の甲子園2026年の逸材~野手編

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 横浜・織田翔希、大分商・平田玲翔らインパクトを残した投手陣に比べ、今大会は野手のドラフト候補が少なかったと言わざるを得ない。そこで今回は、投手として名前が挙がった選手のなかから、野手としても評価された選手をあわせて紹介する。

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【スカウトが指名候補に挙げた3人の野手】

 今大会、打者としてナンバーワンの評価を得たのは日南学園の田中皐晴(こうせい)だ。背番号1をつけ、初戦の明徳義塾戦では先発マウンドにも立ったが、プロからの評価は野手としてのもの。183センチ、87キロの堂々たる体格を生かしたスイングで、甲子園2試合でも6打数4安打。敗戦後、本人も「野手一本で勝負したい」とプロ志望届の提出を明言した。

「今大会で一番いいバッター。右投げ左打ちの悪いところがない。打つところと目の距離がしっかり保てているよね。守備に関しては、送球は悪くないんだけど、ちょっと意識が......。いずれにしても、バッティングで稼ぐ選手になるでしょう」(パ・リーグスカウトA氏)

「今回、田中くんが一番目立ったよね。構えがいいし、ゆっくりしたタイミングでコンタクトできる。バットの軌道がよく、引っ張った打球の質がいい。このまま木製バットを持たせてもいいセンスがあるよね。力がついて打球が上がるようになったら面白い」(セ・リーグスカウトB氏)

「バッティングセンスがある。

左バッターなら甲子園のなかでは一番。速い球を苦にしないよね。対左ピッチャーでもかかと重心にならないし、パンチ力もある。あとはレベルが上がった時に、真っすぐをさばけるかどうか」(パ・リーグスカウトC氏)

 一方、守備で評価を上げたのが横浜の池田聖摩だ。投手としても150キロを投げる強肩には定評があったが、この夏は守備範囲を広げ、安定感を増したプレーでアピールした。

「春から一番成長した選手かもしれない。守備がうまくなったよね。スピードは平均的だけど、肩は強いし、フィールディングもいい。甲子園ぐらい守れれば、スケールはないけど十分プロでやっていけるでしょう。バッティングは長打ではなく、単打というタイプ。高校生の野手では、最上位で指名されるんじゃないかな」(セ・リーグスカウトD氏)

「もともと肩はよくて、スローイングはいい。"捕ったら勝ち"というタイプ。

ただ、バッティングは非力。体が一塁側に流れてしまう。走り打ちのクセがついているのか、開き気味、腰が引け気味なので、木製バットになった時に前に飛ぶのかという不安はあるね」(パ・リーグスカウトC氏)

 開幕試合で本塁打を放ち、一気にアピールしたのが仙台育英の田山纏(まとい)だ。打席では毎球のように雄叫びを上げ、豪快なフルスイングを見せた。

「正直、右投げ左打ちの外野手の需要は少ないんだけど、印象はよかった。しっかり振れるし、長距離も打てる。バッティングで勝負できる選手です。開幕試合でホームランを打ってアピールできたし、人気が出たのではないか」(セ・リーグスカウトB氏)

「スイングに力があって、ハードヒットできるのはいいところ。逆方向にタイムリーも打ったしね。ただ対応力が乏しく、足元に曲がってくるスライダーや外のストレートに苦労していて、上のレベルになった時にどう対応していけるか。守備は地肩が強いし、スローイングも安定している。もう少し足があればいんだけど......」(パ・リーグスカウトA氏)

 現時点で指名が有力視される野手は、この3人だろう。

【夏の甲子園2026】スカウトの野手評 打者ナンバーワンは日南学園・田中皐晴、守備で急成長の横浜・池田聖摩ら、指名有力の逸材は?
打者としても高い評価を得た大分商・平田玲翔 photo by Ryuki Matsuhashi

【平田玲翔、鈴木悠悟に見た野手の才能】

 さらに彼らに加え、投手編でも名前が挙がった2人が、野手としても高い評価を受けた。球団によっては、野手として育ててみたいと考えるところがあるかもしれない。

 そのひとりが、大分商の平田玲翔(れいと)だ。ホームランを狙った思いきりのいいスイングだけではない。打ってから一塁へ駆け抜ける姿、さらに三塁コーチャーの制止を振り切って本塁へ突入したベースランニング。その荒々しさに魅力を感じたスカウトは少なくなかった。

「ピッチャーとして、彼の能力を伸ばしてくれるのはアメリカかもしれない。そうなれば、ジェイコブ・ミジオロウスキー(ブルワーズ)になれるぐらいのポテンシャルはあると思います。日本で育てるなら野手。荒々しさというか、野生味が目立つのがいい。負けた試合でも、9回に自分の打順が回るまで3人いたのに、手袋をして待っていた。そういう姿勢は評価できます」(パ・リーグスカウトC氏)

 もうひとりは中京の鈴木悠悟。初戦で霞ケ浦に敗れたものの、タイムリーヒットを放った。

本人は「投手一本で勝負したい」と話していたが、スカウトの目には野手としての可能性が魅力的に映った。

「タイミングの取り方とか、コンタクト能力とか、プロに入ってからではなかなか身につかない技術をすでに持っている。現時点で足りないのはフィジカルだけ。ただ、これはこれからなんとかなる部分。下級生の時はショートもやっていたし、野球センスがある。遠投なんてすばらしいよ」(セ・リーグスカウトB氏)

「バッティングのほうがいいと思いましたね。バットの出方、軌道がいい。高校生の右打者としてはトップクラスでしょう。柔らかさもあるし、パワーがついていけば......というところ。足はそこまで速くないので、あとは守るポジションをどうするかでしょうね」(パ・リーグスカウトA氏)

【夏の甲子園2026】スカウトの野手評 打者ナンバーワンは日南学園・田中皐晴、守備で急成長の横浜・池田聖摩ら、指名有力の逸材は?
スカウトが大絶賛した有明の永田晴輝 photo by Ryuki Matsuhashi

【「西岡剛みたいだ」とスカウト大絶賛の逸材】

 じつは、現時点では大学進学が濃厚ながら、今大会でプロのスカウトから最も高い評価を受けた野手がひとりいる。有明の永田晴輝(せいき)だ。

 長崎日大戦では三盗し、その後、ゴロ・ゴーを成功させて得点。

東日本国際大昌平戦でも三盗を決めるなど、勇気とスピードを兼ね備えたその走塁を見て、思わず「西岡剛みたいだ」と漏らしたスカウトもいた。

「今大会で一番いい選手。勇気とスピードがすばらしい。ああいう選手こそ、高校からチャレンジしてほしいね」(セ・リーグスカウトD氏)

 このほか、プロ志望組では、花咲徳栄の佐伯真聡(まさと)、敦賀気比の村雲脩吾の両捕手がいる。ともに肩の強さは認められたが、「まだまだ力不足」との評価。高川学園の遊撃手・若藤芽空(わかとう・ひそか)も「足は魅力だけど、もう少しパワーがほしい」と、大学や社会人などでワンクッション置いたほうがいいとの見方だった。

 進学組では、智弁和歌山の山田凛虎(りとら)について、「以前は不器用だったが、柔らかさが出てきた。視野も広くなって、いい捕手になった。4年後、どうなるか楽しみ」との声も聞かれた。

 大会全体でもドラフト候補が少ないと言われた今夏の甲子園。なかでも野手は、投手以上に候補が限られていた。ただ、高校生の評価ほど難しいものはない。

この夏には名前が挙がらなかった選手が、大学や社会人を経て、数年後にはドラフト上位候補になっていることも珍しくない。反対に、高校時代の評価どおりには伸びない選手もいる。

 田中や池田、田山がそのままプロの扉を叩くのか。平田や鈴木は投手として進むのか、それとも野手として新たな可能性を切り拓くのか。そして、「今大会で一番いい選手」とまで評された永田は、4年後にどんな姿を見せているのか。

 甲子園でつけられた評価は、あくまで現時点での「途中経過」にすぎない。数年後のドラフトで名前を呼ばれた時、「あの夏、甲子園にいた選手か」と思い出させてくれる──。そんな選手が、このなかから何人現れるのか。それもまた、高校生を追い続けるスカウトの楽しみなのだろう。

田尻賢誉●文 text by Masataka Tajiri

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