武田一浩が語る村上宗隆とホワイトソックスの快進撃 前編

 メジャー1年目ながら、30本塁打の大台が目前に迫っているシカゴ・ホワイトソックスの村上宗隆。打率は.215(現地時間9月1日時点、以下同)と苦しんでいるものの、持ち前の長打力を発揮し、メジャーでも存在感を示している。

 15年の現役生活で4球団を渡り歩き、最多勝やセーブ王などのタイトルを獲得。第1回WBCでは投手コーチを務めた武田一浩氏に、ここまでの村上を振り返ってもらった。

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【35本くらい打てれば文句なしの100点】

――現状の成績(103試合出場、打率.215、29本塁打、59打点、OPS. 847)をどう評価しますか?

武田一浩(以下:武田) 予想外でした。今年から村上と岡本和真(トロント・ブルージェイズ)がメジャーでプレーしていますが、ストレートに振り負けないのは岡本のほうだと思っていたんです。村上は日本にいる時にストレートをけっこうファウルにしていたので。

 特に昨年は脇腹を故障していたので、そういう傾向が顕著に出ていたと思います。ただ、いざ海を渡ってみると、予想していたよりもしっかり対応しています。「体が万全になれば対応できるんだな」と思いましたし、スイングはもともと速いですからね。

――ここまでの村上選手に点数をつけるなら?

武田 100点をつけてもいいくらいです。もうすぐ30本に到達するわけですから。残り30試合を切っていますが、35本くらい打てれば文句なしの100点じゃないですか。四球率(17.9%)も高いですしね。

それと、ホワイトソックスがア・リーグ中地区首位を走っていることもあって、よりいっそう注目されるのでしょう。

――空振り率(41.9%)や三振率(約33.6%)はメジャー全体でも高いですね。

武田 日本にいた時は、ケースに応じてヒット狙いのバッティングも見られましたが、今は力負けしないように振っています。追い込まれるまではブンブン振りますし、必然的に空振りは増えるでしょう。(メジャーの投手の)ボールが少し動くというのも要因のひとつだとは思います。

でも、あまり気にしないほうがいいと思います。大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)も空振りは多いですし、メジャーのバッターは追い込まれるまでは振っていきますから。

【打率が下がっている理由】

――ただ、ここ最近は調子を落としている印象です。

武田 見ている限り、ケガ(5月末に右太もも裏を肉離れ)をする前のほうがよかったように感じます。昨年の今永昇太(シカゴ・カブス)もそうだったのですが、足を故障すると尾を引くというか、調子を取り戻すまでにけっこう時間がかかることもあるので。やっぱり、力が入る部分ですからね。仕方がないといえばそうなのですが、次の故障につながらなければ問題ないと思います。

 打率が前半戦よりよくないので、そこはどうなんだろうという感じはしますが、本人やチームがそこを望んでいなければいいんじゃないかと。

やっぱり求められているのは、ホームランでしょうからね。

――強振していくスタイルを変える必要はない?

武田 当てにいってしまったら、彼の魅力がなくなりますからね。それと、今のホワイトソックスに必要なのはホームランなどで点を取ることですし、そのほうが大事なんじゃないかと思います。

 当てにいって凡打を打っていると、状態がもっと悪くなってしまうと思いますから、やはり振っていったほうがいいですよ。あれだけ振られるとピッチャーも嫌です。当てにくるバッターはそんなに怖くないですが、振るバッターはいつか当たる可能性があるので、ピッチャーとしては投げづらくなるんです。

――相手にも研究されてきているでしょうか。

武田 400打席以上立っていますし、相手チームにもある程度データが蓄積されています。それに基づいてミーティングをしているでしょう。日本でもそうなのですが、データが揃ってくるとバッターは一時的に打てなくなるので。そういうものを上回っていかないといけません。

 まぁでも、途中離脱がなければ、現時点で40本くらい打っていた可能性もあったと思います。

ケガは調子がいい時にしてしまうものですが、ケガがなければシーズンを通して40本を期待できるバッターということはアピールできたでしょう。チームにそれだけホームランを打てるバッターがいると、周りの選手も打ち始めたりしていい影響を及ぼすことがあります。実際に、村上が離脱している時も、勢いに乗ったほかの選手たちが活躍してチームは勝っていましたからね。

【今後の契約を含めて「ここからが大事」】

――村上選手は1年目ながらリーダーシップを発揮し、チームの雰囲気を大きく変えた存在としても注目されていますね。

武田 入ったばかりのチームで、日本人選手がすぐにリーダーシップをとるというのは、そう簡単にできることではありません。チームにはベテランの選手もいるわけですしね。いい意味でのふてぶてしさもありますが、それくらいじゃないとやっていけませんよ。日本での実績があるのはチームメイトも当然知っていてリスペクトもしているでしょうし、早い段階からチームに溶け込んでいますよね。

 シーズン序盤からホームランを多く打っていたので、「魔法をかけるような選手がきた」という雰囲気になっていったと思います。若い選手が多いということもあって、村上もチームも乗っていくことができたのでしょう。

――守備面はいかがでしょうか?

武田 ファーストでしか出場していませんが、サードも練習はしているでしょうね。26歳と若く、まだまだうまくなる可能性がある年齢ですし、今後はサードもできればチームとしては一番いい。

メジャーとは勝手が違うとはいえ、日本時代はサードを守っていたわけですし。

――シーズン終盤ですが、最終的にどのくらいの数字を期待しますか?

武田 ホームランは35本をクリアできればいいですよね。それくらい打てれば来年は40本も視界に入ってきます。打率は.250くらい打てればいいのですが......そこは来年の課題でしょう。メジャー1年目はどの日本人選手も苦労していますし、いきなりホームランも打率もいい数字を残すことは難しいものです。

 ただ、1年間やればある程度慣れてきますし、来年は打率が上がり、ホームランも増える可能性はあると思います。打率に関しては、メジャーでは化け物みたいな選手がよく出てきます。なかなか難しいと思いますが、ホームランや打点のタイトルは狙ってほしいですね。

――長期契約に向けた動きも報じられていますね。

武田 新人で30本打てば、早めに話はするでしょうね。ホワイトソックスがどのくらいの契約を考えているかはわかりませんが、ほかのチームともっと大きい契約を結べる可能性もあるんじゃないですか。残り試合は少なくなってきましたが、ここからが大事な時期。

村上に対するチームの期待は大きいと思いますし、なんとか復調してほしいですね。

(後編:武田一浩から見たホワイトソックスは「伸びしろがある」 3年連続100敗以上から躍進もまだ「強い」とは言えない>>)

【プロフィール】

武田一浩(たけだ・かずひろ)

1965年6月22日、東京都生まれ。明大中野高を経て明治大に進み、六大学通算20勝8敗という成績で、1987年にドラフト1位で日本ハムに入団。1991年に18セーブを挙げて最優秀救援投手に輝く。その後、先発に転向して1993年には10勝をマーク。1995年オフにトレードでダイエーに移籍。1998年に13勝で最多勝のタイトルを獲得した。同オフにFA宣言をして中日に移籍し、1999年のリーグ優勝に貢献。2002年には巨人に移り、史上3人目となる全球団からの勝利を達成した。同年限りで現役を引退。2006年の第1回WBCで投手コーチを務めた。そのほか、プロ野球、メジャーリーグ中継で解説を務めるなど幅広く活躍している。

現役時代の通算成績は341試合、89勝99敗31セーブ、1008奪三振、防御率3.92。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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