近年、低迷が続く中日。ピッチャー陣はベテラン陣が奮闘するも、髙橋宏斗、金丸夢斗ら期待の投手たちは負けが先行するなど、苦しい戦いが続いている。

チームが上位にいくためには何が必要なのか。かつて中日のエースとして活躍し、引退後は投手コーチも務めた今中慎二氏に聞いた。

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【情報を鵜呑みにしてはいけない】

――先発の柱として期待された髙橋投手が3勝7敗(9月8日時点。以下同)、金丸投手が5勝10敗と、結果が出ていない要因はどこにありますか?

今中慎二(以下:今中) まだまだ伸びしろがあるのに、結果オーライで済ませてきている部分が多いから向上しないんです。ある程度、現状に満足してしまっているんじゃないかと。宏斗は立浪和義監督の最終年(2024年)に、開幕先発ローテーションから外れて二軍でスタートしましたが、そこから1カ月くらい調整して一軍に上がったら結果を出しました(シーズン12勝4敗)。今年も二軍に落とされて戻ってきてからはちょっと頑張っていますが、それまでは全然ダメでしたね。

――メンタルの部分の問題もありそうですか?

今中 それも多少はあると思いますが、周りがいい評価をして持ち上げすぎているんじゃないですか。「打線の援護がない」などと言われたりもしますし。金丸もそうです。当然2人ともいいものを持っていて、まだまだよくなるのに、「もっとよくしよう」といった向上心が足りない気がします。

 キャンプ、シーズンを含めて個々に任せすぎなんじゃないかなと。まだまだ一本立ちしていない選手たちなのですが、一本立ちしたかのような扱いを受けていると、自己満足してしまう可能性がある。

結局は、球が速くて変化球もいいのになぜ勝てないんだろう、というところに行きつくのですが。

――髙橋投手は、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手と自主トレを共にするなど「師弟関係」にあります。そこでの学びを生かしきれていないのでしょうか。

今中 WBCにも出ましたし、山本のほかにもメジャーに行ったメンバーから多くの情報が入ってきているでしょう。ただ、その話を聞きすぎている部分もあるのではないかと。山本は日本で何年もトップの成績を残し、日本を代表するピッチャーになったから言えることがある。宏斗はまだまだその領域には行っていません。これから日本で実績を作って階段を上がっていかなければいけないピッチャーが、実績を作ったピッチャーの話を鵜呑みにしていたら伸びませんよ。

 宏斗に限らず、今の若い選手にはそういうところが多い気がします。「こうしたらいい」「ああしたらいい」という情報が多すぎて、その中身をちゃんと見ていないんじゃないですかね。結論を聞くより先にやることがあるはずです。

【土台作りの大切さ】

――どうすれば改善するでしょうか。

今中 基本ですが、要は練習にしっかり取り組まなければいけないということです。

試合だけに備えてやっていても向上しません。土台を作ってからやらなければいけないのに、それをすっ飛ばして技術や結果のよし悪しでやっていると、スランプに陥った時に抜け出せなくなります。

 たとえば、ベテランの涌井秀章などはブルペンでもしっかり投げ込んでいますし、走り込みもしています。若いピッチャーは、涌井のように球数を多く投げられません。投げずに何を覚えているのかな、と思いますけどね。僕らの現役時代の頃のように、馬車馬のように走れとは言いませんが、やっぱり土台を作ってからフォームを固めないといけません。

――今中さんも現役時代、走り込みがフォームを固める上で土台になったんですか?

今中 そうですね。走り込みや下半身強化は、投げることよりもうるさく言われましたから。それが筋トレで済むのであればそれでいいと思いますが、筋トレでは瞬発力は強化できても、持久力がつきません。走り込み(などの有酸素運動)も必要だと思います。

 若いピッチャーが早いイニングでへばってしまうことが多いのは、持久力がないから。自分も走るのは嫌いだったので、投げ込むことによって下半身を強化していましたが、今はどっちもやらない投手が多いですよね。

投げ込まない、走らないとなったら何をやるのかと。筋トレだけでは、フォームがちょっとズレた時に修正できなくなります。

――今はボールの回転数や回転軸、リリースアングルなど、さまざまな計測データがあります。

今中 ある程度の領域までいけたピッチャーであればいいのですが、そうではないピッチャーもデータに走る傾向がありますよね。もちろんデータを取り入れるのは悪いことではないのですが、「それを生かすためにどうするの?」という部分が抜けているんです。頭ばかりで考えていると長くは続きません。

 近年は、シーズンを通して投げきれるピッチャーが少ないですよね。長く活躍したいのならば、やっぱり土台をしっかり作らないと。基本をおろそかにして、いきなりテクニックに走るような風潮は受け入れがたいですね。

【ぬるま湯につかっている選手に火を付けるには】

――中日はチーム全体で、選手層の薄さも課題かと思います。

今中 競争させながら戦わないと、いつまでも上に行けません。ピッチャーはリリーフに吉田聖弥が入ったくらいで、昨年とほとんど同じ顔ぶれ。

二軍の選手も伸び悩んでいます。一軍が困っている時に、そこを補うような選手を呼べるような状況を作っておかなければいけませんが、いつも同じメンバーの入れ替えに終始してしまっています。
 
 野手陣も同じです。実績がなくてもある程度状態のいい選手を使えば、レギュラー陣も「なんとか頑張ろう」となると思いますが、今は競い合う状況にはなっていませんね。ピッチャーにしろ野手にしろ、やはり競争がなければ選手層は厚くなりません。

――もう少し、実績ではなく調子を重視した起用をしてもよさそうですね。

今中 今季は調子が上がらない岡林勇希も、最多安打やベストナインのタイトルを何回か獲っていますが、まだ24歳です。先ほどお話しした向上心の話に戻りますが、もっと上を目指してほしい。ぬるま湯につかっている選手のお尻に火をつけてあげないと、そのまま終わってしまいかねません。
 
 宏斗もそうです。もっと体を強くして、一年間投げられるだけのスタミナを作ってもいいんじゃないかと。自分の欠点、長所はどこなんだということを把握して向上していってほしいです。

答えだけを見てもダメ。答えを出すための式を理解しないといけない。真っすぐで157、158キロを出しただけで満足していないか、と思います。

――指導者側は、それをどのように気づかせていくべきでしょうか。

今中 言葉ではなく、競争させるという行動で示してあげることが必要だと思います。言葉だとパワハラと言われてしまいがちな世の中ですしね。今は、かなり気を遣いながら選手と接しないといけないから大変ですが、レギュラーでも調子が悪ければ外すといったことをやれば、選手たちもちょっと考えるんじゃないかと思いますよ。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日、大阪府生まれ。左投左打。1988年のドラフト1位で、大産大高大東校舎(現・大阪桐蔭高)から中日ドラゴンズに入団。2年目に二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多勝(17勝)、最多奪三振(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを獲得した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。

2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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