9月11日、福岡県北九州市。バレーボール男子・アジア選手権の準々決勝で、世界ランキング6位の日本は49位のインドをセットカウント3-0(25-17、25-15、25-19)とストレートで下した。

優勝=ロサンゼルス五輪出場権獲得の大会で、順調に駒を進めている。

 チームを率いるロラン・ティリ監督は安堵したように言った。

「いいプレーがたくさん出たことが一番の収穫で、3セットを通じ、集中してプレーすることができました。インドはいいチームだったので、プレッシャーを与え続けられたのがよかったです」

 通訳が訳す言葉に合わせて、フランス人のティリ監督は「集中」と日本語で重ねた。よく使うパワーワードで、記憶するほどなのだろう。

【男子バレー】石川祐希&髙橋藍、アジア選手権で両エースが見せ...の画像はこちら >>
 予選ラウンドの3試合、初戦のオマーン戦は1セットを落とす不覚をとるなど、3セット目にトーンダウンした。ランキング差のある独特な大会ではメンタルのコントロールが難しく、バーレーン戦、オーストラリア戦も3セット目になると一進一退の展開になった。

 キャプテンの石川祐希も、その点は危惧していた。

「予選は3試合とも入り方はよかったんですが、どの試合も 3 セット目に少し苦しむ場面もあったと思っているので、そこは修正するべきだと思っています。全員いいプレーはできているので、(あとは)気持ちとか、そういったところだけで......」

 インド戦も第1、第2セットを大差で取ったあと、第3セットは中盤までサイドアウトをお互い取り合う展開に。決して悪い内容ではなかったが、なかなか突き放せなかった。一時は12-13とリードされた。

 そこで、石川が凛とした輝きを見せる。トスを呼び、ストレートに打ち込んで13-13の同点に。そして自らのサーブで連続ブレイク。サービスエースも含めて、19?13まで一気に差を広げた。

 石川は試合のなかでコンビを適応させ、試合が進むにつれ、スパイク決定率を上げていった。その懐の深さは、風格を漂わせた。アタックだけで言えば、この試合11得点で西田有志とチーム最多タイ。指先に命を託すようなスパイクで、道標となるリーダーシップを発揮した。

【「俺がチームを勝たせる」】

 一方、予選でMVPに等しい活躍を見せた髙橋藍は、インド戦も最多得点(14得点)でマン・オブ・ザ・マッチに相当する活躍ぶりだった。今大会はここまで総得点5位、レセプション(サーブレシーブ)4位、そしてサーブはダントツ1位(17得点で2位と9本差!)と、攻守両面で奮闘し、まさに一騎当千だ。

 インド戦の圧巻は2セット目の冒頭、1-1からのサーブだった。まず、パワーサーブで相手リベロを崩し、2-1に。

次はショートサーブでつんのめらせ、さらにバックライトを狙い、4-1と連続ブレイクに成功した。相手はたまらずタイムアウトを取ったが、再びリベロを潰すパワーサーブでエース。さらにネットインの連続エース。次はクイックサーブを仕掛け、その次はリベロを狙って横の選手に手を出させ、またもエースになった。これで8-1とし、セットの行方をほぼ決した。

 インド陣営にとって、髙橋は雷か、スサノオか、龍か――人ならざる何かが憑依したような猛威だったのではないか。

「サーブでリズムを作りたいですね。アグレッシブに攻めて決まると、味方も余裕が出て、もっといいプレーが出てくるので」

 髙橋はそう言うが、サーブで崩すだけでなく、自らもエースが取れるだけに、味方を優位に立たせ、相手へのストレスになっている。その高揚が彼自身のプレーも加速させる。

 今大会の髙橋はいつも以上に野心を感じさせ、五輪出場への想いが伝わってくる。

「常に1点にこだわっています。大事な場面での1点、勢いがついてくる1点を決めきれるか。

それを取ることで、チームが勝てるように......」

 今年の代表シーズン中、髙橋は野心的な言葉を何度も繰り返しているが、その覚悟がチーム全体に伝播しているのだ。

「ティリ監督も『全員がボールをほしがるように。大事な場面で引かずに、自分たちから攻めていけるようにしよう』と言っていますが、本当にそうだなって思います。自分自身が決めきる、この勝負を終わらせる。そのマインドでやっていますね」

 今回のアジア選手権では、各選手が一種のエゴを見せつつある。そのエゴは「俺がチームを勝たせる」というリーダーシップに通じる。全員が王者の精神を持って戦っているというのか。たとえば石川、髙橋のダブルエースも「仲良しこよし」ではない、お互いが散らす火花も見える。強烈な自負心が、チームを刺激する回路を作り出したのだ。

 その結果として、エバデダン ラリーは世界的なミドルブロッカーとして開花しつつあるし、小野寺太志はブロック数1位など安定感では追随を許さない。深津英臣はセッターとして円熟期を迎えているし、オポジットは西田有志、宮浦健人、リベロは山本智大、小川智大と、やはり互いの競争がチーム力の向上に結びついている。

 ひとりひとりが王者の精神を持った集団になりつつあることが、いまの日本の強さと言えるか。

「アジア選手権は勝つことがすべて。これからは負けたら終わりなので、そこは気を緩めずに......」

 石川は念を込めるように繰り返す。

「ロスへの切符を取るだけでなく、オリンピックでメダルを獲れるように見据えていかないと」

 髙橋は湧き上がった野望を隠さない。

 12日の準決勝、日本は中国を下した韓国と対戦する。ランキングでは格下だが、相手には1日休んで戦える日程的アドバンテージがある。しかしふたりのエースが双璧をなす日本は、ロスへの航路に立ち塞がる相手を沈めるだけだ。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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