ドラフトの勝ち組・負け組~2016年の答え合わせ(後編)

 ドラフト1位が必ずしも成功するとは限らず、下位指名から球界のスターが生まれることがある。2016年のドラフトは、まさにその象徴と言える年だった。

阪神1位の大山悠輔、西武3位の源田壮亮、広島4位の坂倉将吾、DeNA5位の細川成也、そして同9位の佐野恵太。10年の歳月を経て、当時の評価はどのように変わったのか。後編では野手たちの歩みをたどり、指名順位を覆した最大の成功例を探る。

【プロ野球】阪神・大山悠輔の1位指名に会場騒然 しかし、20...の画像はこちら >>

【会場をどよめかせた指名の結末】

 まず頭角を現したのが、中日2位の京田陽太(日本大)と、西武3位の源田壮亮(トヨタ自動車)だ。京田は1年目の2017年、141試合に出場し、球団新人記録となる149安打をマーク。源田も長嶋茂雄(巨人)が1958年に記録した153安打を上回る155安打を放った。セ・パ両リーグで遊撃手が揃って新人王に輝くのは、史上初の快挙だった。

 京田は2022年オフにトレードでDeNAに移籍したが、源田は西武の顔であり続けている。デビューから遊撃手としてフルイニング出場を続け、その記録は299試合に到達。2019年4月に右手首への死球で記録が途切れたものの、その後も西武の正遊撃手として活躍を続けた。

 2021年には初の盗塁王を獲得。侍ジャパンの一員として、同年の東京五輪で金メダル、2023年WBCでは1次ラウンドの韓国戦で二塁に帰塁した際に右手小指を骨折したが、志願して強行出場を続け、3大会ぶりの世界一に貢献した。

 そして阪神が単独1位で指名したのは、大型三塁手の大山悠輔(白鴎大)だった。

田中正義(創価大)や佐々木千隼(桜美林大)ら有力な投手がいるなかでのサプライズ指名に、会場がどよめいたのを覚えているファンも多いだろう。

 しかし大山は1年目から75試合に出場して7本塁打を放ち、新人王投票でも2位。2020年から3年連続で20本塁打以上をマークし、2022年には87打点を挙げた。2023年は全143試合に出場して最高出塁率(.403)を獲得し、18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献。今季は20本塁打をマークし、阪神初のリーグ連覇(2リーグ制以降)に貢献するなど、その長打力は健在だ。

【DeNAで眠っていた大砲の覚醒】

 同じ2016年ドラフト組からは、2018年にも新人王が生まれている。楽天3位の田中和基(立教大)である。球界では希少な両打ちの外野手は、プロ2年目にブレーク。105試合で打率.265、18本塁打、45打点、21盗塁の活躍で、球団史上初となる野手の新人王に輝いた。

 しかし、その後は定位置をつかみきれず、今季は一軍出場がないままシーズンを終え、その後、現役引退が発表された。通算615試合で打率.214、31本塁打、94打点、47盗塁。2024年から2年間、選手会長としてもチームを支えた。

 田中、佐々木を外した巨人が指名した吉川尚輝(中京学院大)は今季までで894試合で840安打、広島4位の坂倉将吾(日大三高)は904試合で797安打。

阪神5位の糸原健斗(JX−ENEOS)は近年こそ出場機会を減らしているものの、2018、2019年と2年連続で全143試合に出場した。

 大器の覚醒にも触れておきたい。今や中日の主軸に成長した細川成也(明秀学園日立高)は、DeNAが5位で指名した選手だった。高校時代は甲子園出場こそなかったが、通算63本塁打を放つなど、長打力には定評があった。プロ1年目の2017年10月3日に一軍デビューを果たすと、初打席でいきなり本塁打。翌日の試合でも一発を放ち、2リーグ制以降の高卒新人では史上初となる、デビューから2試合連続本塁打を記録した。

 ところが、その後は一軍に定着できず、DeNAの6年間で放った本塁打はわずか6本。2022年オフに初めて実施された現役ドラフトで中日へ移籍した。すると、2023年に140試合出場で24本塁打、2024年は全143試合に出場し打率.292、23本塁打と一気に開花した。今季はキャリアハイの25本塁打と、4年連続で20本塁打以上をマーク。来季、工藤公康新監督の下でも、中軸として期待が集まる。

【ドラフト9位から首位打者へ】

 前編の「投手編」でも触れたように、2016年ドラフトで指名された支配下87人のなかで、「ドラフトキング」は、オリックス4位の山本由伸(都城高)であることに疑いはない。

ただ、すでにメジャーで世界一に輝いた右腕を除き、現在、日本でプレーする選手に限定して選ぶなら、DeNA9位の佐野恵太(明治大)を推したい。

 佐野は広陵高(広島)では甲子園の土を踏めなかったが、明治大に進学後はベストナインを2度受賞。叔父で、元パ・リーグ首位打者・佐々木誠譲りの打撃センスを持つ佐野を、DeNAは9位で指名。これは、この年のセ・リーグの支配下ドラフトのなかでは最後の指名だった。

 それがチームの4番、そして主将を任される存在となり、2020年に打率.328、20本塁打、69打点で首位打者とベストナインに輝いた。2021年は全143試合に出場して165安打、2022年も打率.306をマークするなど3年連続で3割をクリアし、161安打で最多安打も獲得している。

 そして、毎年コンスタントに成績を残し続けている点も評価に値する。2021年から5年連続で140安打以上をマーク。2024年には国内FA権を取得しながらDeNA残留を選んだ。今季は129試合で打率.262と本調子ではなかったが、チームの顔として着実に数字を積み上げ、通算1109試合で打率.284、1106安打、113本塁打、513打点。もちろん、源田や大山の成績もすばらしいが、9位という指名順位で考えれば、佐野が残したインパクトは、それ以上に大きいだろう。

 ドラフト当日、各球団が何度も指名を重ねた末に名前を呼ばれた選手が、やがて首位打者となり、最多安打のタイトルまで獲得した。

そこにドラフトの面白さが凝縮されている。

内田勝治●文 text by Katsuharu Uchida

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