この記事をまとめると
■ホイールとハブの締結にはナット式とボルト式がある■ナット式とボルト式のメリット・デメリットを解説
■トヨタはナット式からボルト式に移行しつつある
どちらにも長所と短所がある
12月になって、スタッドレスタイヤに履き替えた、履き替える予定というドライバーも多いかもしれない。すでにスタッドレスタイヤをはめたホイールセットを用意しているユーザーが、DIYで作業するとなれば、タイヤとハブを締結しているナットを緩めてホイールを外す……というケースが多数派だろう。
一方で、欧州車や一部の国産車では、ボルトでホイールとハブを固定していることもある。

結論を言ってしまえば、締結力を上げるのに有利なのはボルト式となっている。
ただしボルト式だから締結力(締め付けトルク)を上げることができるというほど単純な話ではない。ボルト式にすると、ナット式よりも太くしやすいので、締結力を上げられるという風に理解したい。

逆にいえば、ナット式でハブから生えているスタッドボルトと同じサイズのボルトを使った場合は、材質も同等だと考えると締め付けトルクは同じくらいになるので締結力は変わらないといえる。

その場合に出てくるボルト式のメリットはコストダウンだ。ナット式の場合、一カ所の穴につきスタッドボルトとナットという2つの部品が必要になるが、ボルト式であればひとつの部品で済むというのは部品管理の面から有利になる。
ナット式のメリットとして挙げられるのはホイールの位置決めをしやすいということだ。ボルト式の場合、ホイールとハブをセンター部分ではめるようにして位置決めをしなければならず、そのためには中心部のサイズを合わせる必要がある。

一方で、ハブからスタッドボルトが生えているナット式であれば、スタッドボルトにホイールの穴を合わせれば大まかな位置を合わせやすくなる。
実際、欧州車でもラリー用のパーツとしてナット式に改造するキットが用意されていることもある。ホイールをはめやすいのはナット式というのは万国共通の認識といえるだろう。

最近のトヨタはボルト式を採用
なお、コスト面でいえばナット式は部品点数こそ多いもののメーカー内での全車共通パーツとして使われていることが多く、大量生産によるコストダウン効果は大きい。

さて、締結力の違いについてだが、公道レベルの負荷でいえば、どちらの方式が明確に優れているとはいいづらい。
ナット式であってもきちんと締め付けトルクを管理しておけばホイールが外れしまうということはあり得ない設計となっているし、ホイール締結力の違いを感じられるような走りをするユーザーもほとんどいないだろうからだ。
とはいえ、最近のトヨタがナット式からボルト式に移行しつつある点は注目したい。レクサスISではマイナーチェンジでボルト式へ変更するなど、走りにおける締結力アップのメリットは無視できないと考えているようだ。

もっとも締結力では有利になるはずのボルト式を採用した電気自動車bZ4Xが、ボルトが緩んでしまうというリコールを出したのも記憶に新しい。方式によるメリット・デメリットよりもメーカー自身がきちんと設計することのほうが重要といえる。

その意味では、各社でデータの蓄積がある“慣れた”方式のほうがユーザー的には安心感があるといえるかもしれない。
そして、タイヤ交換をDIYで行なう際にも、トルクレンチを用いてメーカーの指定値である締め付けトルクを守ることが基本中の基本といえる。そうした管理が面倒だというのであれば、ディーラーやプロショップなど信頼できるメカニックに作業を依頼することをおすすめしたい。
