この記事をまとめると
■トヨタ・ハリアーPHEVと三菱アウトランダーPHEVに試乗した■ハリアーPHEVには重厚感、アウトランダーPHEVにはゆったり感があり、乗り味はまったく異なる
■ハリアーPHEVはどこかハイブリッドカー的であり、アウトランダーPHEVはEV的な印象を受けた
同じPHEVでもその乗り味はまったく違った
トヨタのハリアーに、プラグインハイブリッド車(PHEV)が追加された。これにより、トヨタ車のPHEVは、プリウスPHV、RAV4 PHVとともに、3車種になった。
PHEVの先駆者といえるのが、2012年のプリウスPHVだ。

現行車での比較をすると、ハリアーPHEVのモーター走行距離は93kmで、アウトランダーPHEVは85~87km(グレードによって幅がある)である。ハイブリッド走行となってからの燃費は、ハリアーPHEVがWLTCで20.5km/L、アウトランダーPHEVはWLTCで16.2~16.6km/Lである。いずれも、ハリアーPHEVが数値で上まわるが、ハリアーPHEVの車両重量が1950kgと2トンを切っているのに対し、アウトランダーPHEVは2010~2110kgと重いので、どうしてもエネルギー消費は多くなるだろう。
ちなみに、車載のリチウムイオンバッテリー容量は、ハリアーPHEVが18.1kWhであるのに対し、アウトランダーPHEVは20kWhと多めになっている。
両車を比較試乗してみると、乗り味がまったく違うのを知る。

ハリアーPHEVは、ハイブリッド車(HV)に比べ乗り味がより高級な印象を与え、静粛性や重厚さが増すが、やや硬めの乗り心地であるところは共通だった。それに対し、アウトランダーPHEVはゆったりとした乗り心地で、運転操作に対し車体がある程度動くが、しなやかさを伝え、たとえるなら英国のレンジローバーなどを運転するような優雅さがある。

それでも、速度を上げて走った場合にはもう少ししっかりとした手ごたえを得たいと思うかもしれない。そのときには、アウトランダーPHEVは前後のモーター駆動をより積極的に制御するS-AWC(スーパー・オールホイールコントロール)を装備するので、ターマックモードを選択すると、手応えの確かな俊敏さを感じることができる。S-AWCは、ノーマルモードやターマックモード以外に、エコ/パワー/グラベル/スノー/マッドという選択肢があり、路面状況や走行状況に応じたモーター制御を行うことができる。三菱自が、パジェロやランサーなどで開発・熟成してきた4輪駆動を活かす走りを、モーター駆動でより精緻に行える機能をアウトランダーPHEVは備えているのである。

ほかにも、アウトランダーPHEVは、成り立ちが軽EVのi-MiEVを基にした設計だったことから、イノベーティブペダルと呼ぶワンペダル的なアクセル操作ができる機能を備える。これを使うことで、速度調節はもちろん、停止の直前まで回生を活かして減速するので、バッテリーへの充電をより促すことができる。
これまで「PHV」としてきたトヨタが表記を「PHEV」に変更
ハリアーPHEVも、シフトレバーのマニュアル操作によって回生を強めることはできるが、エンジンブレーキの代わりといった使い道で、減速したいと思うたびにシフト操作をしなければならない。

諸元数値での電力消費比較で、1kWhで何km走行できるかを試算すると、ハリアーPHEVはアウトランダーPHEVより優れる値だ。だが、アウトランダーPHEVでイノベーティブペダルを利用してワンペダル的運転を活用すると、ハリアーPHEVとほぼ同等の6km/kWh前後の電費がオンボードコンピュータ上に表示された。

トヨタは、これまでプリウスやRAV4でプラグインハイブリッド車を「PHV」と表現してきた。それはまさしく、プラグインハイブリッド車の頭文字をとった表記で、HVが基のクルマであることを主張してきた。
一方の三菱自は、先にも述べたようにEVのモーターやバッテリーを活用して誕生したPHEVであるため、プラグインハイブリッド・エレクトリックヴィークルの頭文字をとった「PHEV」と表記し、モーター駆動を活かした回生のさせ方やモーターによる4輪駆動制御を進化させ、現行のアウトランダーPHEVにつながっている。
今回ハリアーでは、「PHV」ではなく「PHEV」と表記を変えたが、元の仕組みがRAV4と通じているため、アウトランダーPHEVほどモーター駆動の特徴を活かし切れていない印象がある。

充電について、ハリアーPHEVは200Vの普通充電のみの対応で、それはPHEVの使い方として理にかなっているといえる。それに対して、アウトランダーPHEVは、EVが基ということもあるだろう、CHAdeMOの急速充電口を装備する。これによって、急速充電器での充電が可能になり、自宅に200Vの普通充電を設置できないマンションなどの集合住宅や、月極め駐車場を利用する人も、PHEVの特徴であるモーター走行を利用することができる。

ほかに、急速充電口を持つことで、クルマから外部への給電で、VtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)にも適応する。ただし、ハリアーPHEVも、専用のコネクターを普通充電口へ差し込むことで、家庭電化製品などへ1500Wまでの電力供給はできる。ただし、それは屋外活動や万一の災害対応のためで、日常的な自宅への給電はできない。
以上のように、PHEVとひとことで括れない性能や装備の違いが両車にはある。住宅や駐車場の環境、また出かけた先の道路環境の変化などを考慮し、自分にあったPHEVを選ぶとよいだろう。

