この記事をまとめると
■スマートは昨年「Smart #1」という新しいBEVを発表した■中国のジーリーとメルセデス・ベンツグループの合弁事業によって誕生したクルマだ
■現在までに約1700台ほど売り上げている
いつの間にかBEVのメーカーとして再出発していた!
「あれ? これが、あのSmart(スマート)なのか!?」
2022年4月に欧州で公開された、「Smart #1」の画像や映像を見てビックリした人がいるかもしれない。
全長4270mmで足もとは19インチホイールを履く、スタイリッシュなコンパクトSUV。室内は近未来を予感させるような大胆な造形だ。
充電に対しては、欧州では最大200kWの急速充電、また交流での普通充電では22kWに対応する。
同年8月には、長年に渡りSmartがパートナーシップを築いてきたドイツのチューニングメーカー・ブラバスとのコラボレーションを発表。さらに同月、マレーシアの国営自動車メーカーであるプロトンとの間で、マレーシアとタイでのSmart 販売網の構築で連携すると発表している。

10月には、中国で初版500台の販売をはじめ、11月には月間1629台を売り上げた。
こうした一連の動きを見ていると、「これが、あのSmartなのか?」と不思議に思うのは当然だろう。
その背景にあるのは、メルセデス・ベンツグループと中国の地場メーカー「ジーリー」との関係だ。2019年にSmartは両2社の合弁事業となっている。ジーリーといえば、スウェーデンのボルボの親会社であり、その影響もありボルボは完全なEVメーカーへと転身することが明らかになっている。ジーリーとしては、メルセデス・ベンツグループも含めて、欧州と中国でのEV量産体制を強化していく狙いがある。

個性的なクルマをラインアップし、日本でも大きな話題になった
そもそも、Smartはどういう会社だったのか?
筆者は2000年代、ドイツのSmart本拠地を訪ね、ブランドの起源について関係者に詳しく聞いたことがある。それによると、1970年代初頭に、ダイムラーの社内プロジェクトとして、超小型なモビリティのデザインや発想が始まったと言う。
80年代になると、そうしたアイディアを具現化したデザインプロトタイプが世に出るが、当時としてはまだまだ商品性には乏しく、日の目を浴びることはなかった。それが90年代に入り、スイスの時計メーカー・スウォッチとの共同プロジェクトとしてSmartが世に出ると、日本を含めて大きなブームとなる。

だが、「for two」から多モデル化する戦略では、ターゲットユーザーがしっかりと絞れなかったことなどが原因で、混迷期を迎えることになる。
その後、フランスのルノーと主要部品を共通化することで、BMW MINIのようなブランドイメージを狙うが、それでも販売台数は限定的だった。そうしたなか、欧州グリーンディール政策や、中国での新エネルギー政策によるEVシフトを契機に、新生Smartへと大きく舵を切ったのだ。
現在のところ、Smart#1について日本での発売の可能性について明らかになっていない。